2010年6月5日作成
日本の推理小説(を含む広義のエンターテインメント小説)の独訳本のリスト。
Amazon.deで適当に日本の作家名を検索し、そこから「この商品を買った人はこの商品も買っています」をたどっていくことでリストを作っている。そのため、ドイツで刊行された日本のミステリを網羅する完全なリストではない。
また、まず作家で選んで、それぞれの作家について翻訳状況を書いているので、なかにはミステリではない作品も含まれる。
Amazon.co.jp内に作成したリスト(ドイツ語版の表紙をざっと一覧できます)
2012年2月11日追記
雑誌『ミステリーズ!』のドイツミステリ特集号が刊行されたのを機に、今まで中途半端な形で公開していたリストを整理した。また、ページ最下部にドイツミステリ関連文献の一覧を付した。
Index
※ISBNをクリックするとAmazon.deの該当ページが開くようになっています。
あ行
赤川次郎 (Jiro Akagawa)
(
ドイツ語版Wikipedia)
Japanischer Alltag. Kurzgeschichten: Japanisch-Deutsch
- 1 - Wie Lügen anfangen (嘘の発端)
- 2 - Falsch verbunden! (まちがい電話)
- 3 - Der Unlust-Index 79 (不快指数79)
- 4 - Die Braut ist erst achtzehn (十八歳の花嫁)
- 5 - Das Erfrischungstuch war zu heiß (熱すぎたおしぼり)
- 6 - Ich zeige dir mal, wie man richtig Urlaub macht (正しい休日の過し方教えます)
- 7 - Ausgerechnet unsere Tochter - Ein Schulaufsatz (わが子の作文)
- 8 - Das Gerücht (うわさ)
見開きの左ページに日本語の原文、右ページにそのドイツ語訳文を配置した、日本語学習者向けの日独対訳本。赤川次郎のショートショート集『散歩道』(27編収録)から8編を収録。赤川次郎作品は、英訳は『三姉妹探偵団』と短編集『真夜中のための組曲』、フランス語訳は『マリオネットの罠』と『ひまつぶしの殺人』がある。
江戸川乱歩 (Edogawa Rampo)
- Zwei Versehrte (二癈人)
- Zwillinge (双生児)
- Der psychologische Test (心理試験)
- Das Rote Zimmer (赤い部屋)
- Der Sesselmann (人間椅子)
- Spiegelhölle (鏡地獄)
- Die Raupe (芋虫)
- Auf der Klippe (断崖)
乱歩がジェームズ・B・ハリスと協力して作成した英訳本『Japanese Tales of Mystery & Imagination』(1956年)には9短編が収録されているが、ドイツ語版短編集はそのうち「押絵と旅する男」を除いた8編の収録となっている。
英訳やフランス語訳はそれぞれ数冊ずつ出ているが、ドイツでの単行本はこの1冊のみのようである。
大沢在昌 (Arimasa Osawa)
Der Hai von Shinjuku / 『新宿鮫』(1990)
ISBN 3980902226 (2005年2月)
Der Hai von Shinjuku: Rache auf chinesisch. / 『毒猿 新宿鮫II』(1991) - ドイツ語タイトルの直訳は『新宿鮫 中国人の復讐』
ISBN 3980902234 (2007年11月)
大沢作品の英訳はドイツ語訳と同じでこの2作のみ。フランス語訳はない。
奥田英朗 (Hideo Okuda)
精神科医・伊良部シリーズの全作品(短編集3冊)が翻訳されている。このシリーズは英訳は『イン・ザ・プール』のみ。奥田作品の英訳はほかに『ララピポ』がある。奥田作品のフランス語訳はない。
小野不由美 (Fuyumi Ono)
『十二国記』が4冊翻訳出版されている(
第1巻)。(『十二国記』は英訳もフランス語訳もある)
か行
桐野夏生 (Natsuo Kirino)
英訳:『OUT』、『グロテスク』、『リアルワールド』
フランス語訳:『OUT』、『グロテスク』、『リアルワールド』、『柔らかな頬』
イタリア語訳:『OUT』、『グロテスク』、『リアルワールド』、『柔らかな頬』、『東京島』
『OUT』は2004年にアメリカ探偵作家クラブ(MWA)・エドガー賞最優秀長編賞の候補になったこともあり、世界中で翻訳されている。英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語以外に、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語(ブラジルで出版)、ロシア語、ポーランド語、スロベニア語、アイスランド語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語、ヘブライ語、ハンガリー語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語などにも翻訳されている。
栗本薫 (Kaoru Kurimoto)
さ行
桜庭一樹 (Kazuki Sakuraba)
英訳は第2巻まで。フランス語訳はない(フランスでは天乃咲哉による漫画版『GOSICK』が第4巻まで出版されている)。
桜庭作品のドイツ語訳はほかに、漫画版『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(
上巻、
下巻)がある。漫画版『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』は英訳なし。フランス語訳あり。
鈴木光司 (Koji Suzuki)
英訳:『リング』、『らせん』、『ループ』、『バースデイ』、『仄暗い水の底から』、『楽園』、『神々のプロムナード』、『エッジ』
フランス語訳:『リング』、『らせん』、『ループ』、『バースデイ』、『仄暗い水の底から』
イタリア語訳:『リング』、『らせん』、『ループ』、『仄暗い水の底から』
『リング』は日本のエンターテインメント小説として世界で成功した作品である。ほかにスペイン語、ルーマニア語、ポーランド語、ブルガリア語、リトアニア語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、トルコ語などに翻訳されている。タイでは現在、日本の推理小説が韓国や台湾、中国につぐペースで翻訳されているが、タイで日本のエンターテインメント小説(ミステリ含む)の翻訳ブームが起こったのは『リング』の翻訳出版がきっかけだったという。
た行
高橋克彦 (Katsuhiko Takahashi)
江戸川乱歩賞受賞作。文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(JLPP)で選定・翻訳された。
高見広春 (Koushun Takami)
ドイツ語のほか、英語、フランス語、イタリア語、ノルウェー語、中国語、韓国語などに翻訳されている。
戸川昌子 (Masako Togawa)
英訳:『火の接吻』、『大いなる幻影』、『猟人日記』、『深い失速』
フランス語訳:『火の接吻』
イタリア語訳:『火の接吻』、『大いなる幻影』、『猟人日記』
スペイン語訳:『火の接吻』、『大いなる幻影』、『猟人日記』
『猟人日記』はほかにオランダ語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語などにも翻訳されている。
1987年に国際推理作家協会の第1回理事会が開かれた際、戸川昌子は協会からの指名で日本代表の理事となっている。その時期、戸川昌子は欧米でそれなりの知名度があったようだ。
な行
夏樹静子 (Shizuko Natsuki)
『Wの悲劇』のドイツ語タイトルは英題と同じく『富士山の殺人』となっている。
『第三の女』は1987年に英訳、1988年にイタリア語訳が出ており、1989年にはフランス語訳が刊行された。このフランス語訳は同年、フランス冒険小説大賞を受賞している。
長編の英訳は6作品、フランス語訳は5作品、イタリア語訳は2作品。
夏樹静子は1981年5月、スウェーデン・ストックホルムで開催された第3回世界推理作家会議に日本推理作家協会代表として参加し、日本の推理小説事情に関して講演を行っている。1988年5月にアメリカ合衆国・ニューヨークで開催された第4回世界推理作家会議にも参加している。
西尾維新 (Nisioisin)
Death Note: Another Note / 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』(2006)
ISBN 3867193711 (2008年5月)
この作品は英訳もある。西尾作品で英訳があるのはほかに『クビキリサイクル』、『クビシメロマンチスト』、『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』。
『DEATH NOTE アナザーノート』は密室殺人を扱った作品で、不可能犯罪へのこだわりで知られるアメリカの本格ミステリ作家ハル・ホワイトも読んでいるらしい(
参照)。
西村京太郎 (Kyotaro Nishimura)
Das klatschende Äffchen /『南神威島(みなみかむいとう)』 - ドイツ語タイトルは「手を拍く猿」
ISBN 3936018839 (2012年2月)
表紙写真は「
こちら」で見られる。おそらく西村京太郎の初のドイツ語単行本。「手を拍く猿」と「南神威島」が収録されているようなので、短編集『南神威島』(収録作:「南神威島」、「幻想の夏」、「手を拍く猿」、「カードの城」、「刑事」)の翻訳だろう。
西村京太郎作品の英訳は『ミステリー列車が消えた』のみ。イタリア語訳も同じく『ミステリー列車が消えた』のみ。フランス語訳は『ミステリー列車が消えた』を含め4作品ほどが刊行されている。
は行
東野圭吾 (Keigo Higashino)
ほかに、東野圭吾原案・間瀬元朗作画の『HEADS』全4巻が翻訳出版されている(
第1巻)。
東野圭吾の作品の欧米諸言語への翻訳は2000年刊行のイタリア語版『白馬山荘殺人事件』が最初で、次がドイツ語版『レイクサイド』である。
『容疑者Xの献身』は英語、フランス語、スペイン語、カタルーニャ語(スペイン東部で話されている言語)、ロシア語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語などに翻訳されている。ドイツ語訳はそれらよりもやや遅れて、2012年11月の刊行である。なお『容疑者Xの献身』のドイツ語への翻訳は国際交流基金より助成金を受けている(参照:
国際交流基金 > 文化芸術交流 > 映像・出版 > 出版分野の支援 > 助成事業一覧 平成24(2012)年度 出版・翻訳)
関連記事
ま行
松本清張 (Seicho Matsumoto)
「天城越え」は短編なのでドイツ語版『天城越え』はもちろん短編集だろうが、収録作は分からない。
桐野夏生『OUT』がエドガー賞の候補になるまで、世界で(特に欧米で)最も有名な日本のミステリ作家といえば松本清張だっただろう。松本清張の作品は欧米主要言語は言うに及ばず、チェコ語、ブルガリア語、クロアチア語、ギリシャ語、フィンランド語、エストニア語、さらにはグルジア語やアルメニア語などにも翻訳されている。
水上勉 (Tsutomu Mizukami)
『雁の寺』は英訳やフランス語訳もある。
宮部みゆき (Miyuki Miyabe)
英訳:『火車』、『クロスファイア』、『R.P.G.』、『魔術はささやく』、『龍は眠る』 ファンタジー作品『ブレイブ・ストーリー』、『英雄の書』
フランス語訳:『火車』、『クロスファイア』、『R.P.G.』、『淋しい狩人』 ファンタジー作品『ブレイブ・ストーリー』
イタリア語訳:『火車』
2011年になってやっと初のドイツ語単行本が出た。『火車』はスペイン語訳やギリシャ語訳もある。
や行
結城昌治 (Shoji Yuki)
河出書房新社の叢書《メルヘンの森》(全6巻)の1冊として刊行された絵本。
漫画の翻訳のみ
石田衣良 (Ira Ishida)
漫画版『池袋ウエストゲートパーク』が刊行されている(
第1巻)。
乙一 (Otsuichi)
山田風太郎 (Futaro Yamada)
漫画版『柳生忍法帖』(
第1巻)および『バジリスク』(
第1巻)が刊行されている。
アンソロジー・その他
- Japanische Kriminalgeschichten (エラリー・クイーン編、Ullstein、1983年)
- 『Ellery Queen's Japanese Golden Dozen』(1978年)のドイツ語版。
- 収録作:石沢英太郎「噂を集め過ぎた男」、松本清張「奇妙な被告」、三好徹「死者の便り」、森村誠一「魔少年」、夏樹静子「断崖からの声」(Schrei von der Klippe)、西村京太郎「優しい脅迫者」、佐野洋「証拠なし」、笹沢左保「海からの招待状」、草野唯雄「復顔」、戸川昌子「黄色い吸血鬼」(Der Vampir)、土屋隆夫「加えて、消した」、筒井康隆「如菩薩団」
- Die drei Metamorphosen der Tsuruko (Iudicium、2002年)
- 泡坂妻夫「鶴の三変」が表題作となっている日本小説のアンソロジー。全15編収録。
- ほかの収録作は山村美紗「高齢の使用人」、森岡浩之「普通の子ども」、星新一「うるさい上役」、高村薫「棕櫚とトカゲ」、山口洋子「花烏賊のころ」、内田春菊「夜の足音」、田辺聖子「三日月」、皆川博子「川」、黒井千次「家の中の扉」、阿刀田高「愛のすみか」、山田正紀「死蝋」、内海隆一郎「帰郷」、北野勇作「ペットを飼うヒト」、大槻ケンジ「のの子の復讐ジグジグ」
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最終更新:2012年02月12日 00:00