2014年8月18日
Index
ロシア(ソ連)
(1)は邦訳時期に関わらず、戦前の作品(1945年までの作品)を示す。
(2)以降では、それぞれの作家について最初の邦訳の早かった順に並べている。
(1)戦前の作品
- アントン・チェーホフ(Антон Павлович Чехов, 1860-1904, 日本語版Wikipedia)
- 『狩場の悲劇』 ※邦訳は主なもののみ示す
- 原卓也訳、『世界推理小説大系』第5巻、東都書房、1963年
- 松下裕訳、『チェーホフ全集』第2巻、ちくま文庫、1994年3月
- 「安全マッチ」 ※邦訳は主なもののみ示す
- 「或る犯罪の話」(宇野利泰訳、『宝石』1955年4月号)
- 「安全マッチ」(宇野利泰訳、江戸川乱歩編『世界短編傑作集』第1巻、創元推理文庫、1960年)
- 「安全マッチ」(松下裕訳、『チェーホフ全集』第2巻、ちくま文庫、1994年3月)
- ほかにもチェーホフの作品にはミステリと呼べる作品があるようである
ロシアの文豪の作品では、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』や『罪と罰』がミステリとして語られることがある。『カラマーゾフの兄弟』は2012年版『東西ミステリーベスト100』で198位。
- ウェルシーニン(ウエルシーニン)(Вершининか? 詳細未詳)
- 「衂られた爆弾」(『新青年』1922年2月増刊)
- 『怪奇探偵 死の爆弾』(天岡虎雄訳、博文館《探偵傑作叢書》第9編、1922年9月)
- 「死の爆弾」(pp.1-188) ※「衂られた爆弾」と同一作品かどうかは未確認
- 「死毒」(pp.189-258)
- 「地下室の謎」(pp.259-284)
- 「大破滅」(森下雨村訳、春陽堂『探偵小説全集』第19巻、1930年)
『死の爆弾』の訳者の天岡虎雄については、中西裕『ホームズ翻訳への道 延原謙評伝』(日本古書通信社、2009年2月)に記述があるらしい(未確認)。
『死の爆弾』巻末の《探偵傑作叢書》の広告では、『死の爆弾』の著者名は「エム・ウエルシーニン」、訳者名は「梅田秋夫」となっている。
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国枝史郎のウェルシーニンへの言及(クリックで展開) |
国枝史郎のウェルシーニンへの言及
- 国枝史郎「マイクロフォン―雑感―」(『新青年』1925年12月号 / 青空文庫)
- ウェルシーニンの「死の爆弾」を、喝采謳歌しないような、探偵小説家はヤクザである。さすがに前田河広一郎氏は、ウェルシーニンを認めていた。
- 国枝史郎「マイクロフォン」(『新青年』1926年2月号 / 青空文庫)
- しかし小酒井不木氏とか松本泰氏、江戸川乱歩氏、横溝正史氏、アーサー、リーヴ、チェスタトン、ビーストン、ウェルシーニンというような、代表的作家の人物批評は、是又大いに必要である。
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- マリエッタ・シャギニャン(Мариэтта Сергеевна Шагинян, 1888-1982, 日本語版Wikipedia) ※邦訳書はすべて「ジム・ドル」名義
- 『革命探偵小説 メス・メンド』(広尾猛[本名・大竹博吉]訳、世界社、1928年 ※5分冊) ※全体の5割強ほどの翻訳
- 『メス・メンド 第1巻 職工長ミック』(広尾猛訳、同人社希望閣、1929年) ※完訳
- 『メス・メンド 第1巻 職工長ミックの巻』(広尾猛訳、内外社、1931年) ※完訳増補版
- 『続メス・メンド 鉄工ローリーの巻』(広尾猛訳、内外社、1931年)
- アレクセイ・トルストイ(Алексей Николаевич Толстой, 1883-1945, 日本語版Wikipedia)
- 『技師ガーリン』(広尾猛訳、内外社《ソヴエト・ロシア探偵小説集》1、1930年12月)
SFファングループ「
THATTA」のサイトで読めるオンライン・ファンジン『THATTA ONLINE』の271号(2010年11月号)(→
リンク)に掲載されたフヂモト・ナオキ氏の「ウィアード・インヴェンション~戦前期海外SF流入小史~038」で
『メス・メンド』が扱われている。邦訳刊行時にこの作品がどのように評価されたのかを、当時の新聞記事などを引用して丁寧に紹介している。
アレクセイ・トルストイの
『技師ガーリン』は《ソヴエト・ロシア探偵小説集》の第1巻。「近代デジタルライブラリー」で読める(
リンク)。『新青年』1937年新春増刊号のアンケート企画で、海野十三が
『技師ガーリン』を海外長編探偵小説の第4位に挙げている(参照:「
本棚の中の骸骨」>「
〈新青年〉海外探偵小説十傑」)。
《ソヴエト・ロシア探偵小説集》では続巻としてレオニード・ボリソフ(Леонид Борисов, 1897-1972)の1927年の作品
『記憶を喪った男』(Ход конем)が予定されていたが、これは刊行されなかったようである。
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邦訳が未刊に終わった『記憶を喪った男』のあらすじ(クリックで展開) |
邦訳が未刊に終わった『記憶を喪った男』のあらすじ
飯田規和「ソ連の探偵小説」(『EQMM』1965年4月号 / ほぼ同じものがユリアン・セミョーノフ『ペトロフカ、38』[ハヤカワ・ミステリ、1965年3月]の巻末にも収録)ではこの作品は以下のように紹介されている。(飯田氏はタイトルを『桂馬の一手』としている)
- レニングラードのある街で起こった犯罪の究明をテーマにしている。ある日突然一人の女性が殺された。最初に、嫌疑は、殺された女性の知人で、彼女を憎んでいた精神異常の男にかけられる。しかし、その精神異常者の周辺を洗っているうちに、もっと有力な別の手がかりに行き当たり、結局、大きな暗黒勢力を背景にした真の下手人を探し出すまでの物語である。この小説は話の組立てのうまさ、事件の調査が進行するにつれて、殺人事件の関係者をまるで写真の現像のように次第にはっきりと次々に浮びあがらせる手法の見事さなどによって、二〇年代のソ連の複雑な社会を知るにはもってこいの作品である。
深見弾氏は「ロシヤ・ソビエトSFはこんなに訳されている(戦前)」(ナウカ株式会社『窓』1978年3月号)で《ソヴエト・ロシア探偵小説集》について以下のように書いている。
- 内外社のソヴエト・ロシヤ探偵小説の企画は第二弾としてレオニード・ボリソフの『記憶を喪った男』を準備していた。どうやらこれは不発に終ったらしい。調べた限りでは、出版された形跡がない。しかし、未刊だったと判定もできないでいる。ご存知のかたがあればお教えいただきたい。
同エッセイでは、『記憶を喪った男』のあらすじが広告文から引用されている。それを以下に孫引きする。「(中略)」は深見氏による省略箇所である。
――チエカとアフラナの力くらべ――
アフラナは旧帝政ロシヤの特務機関だ。いまは白色欧洲の諸都市に巣喰つている、反ソヴエト戦線の犬だ。(中略)本編の主人公ガルキン。大戦で隻脚と共に記憶も喪って、精神病院に永く入院していたが、十三年ぶりに記憶が時々ボンヤリとよみがへつてくる。事件の発端はこの殺人狂の病院脱走から始まる。
絶世の美人マルタ・シヤトノフスカ、変装に巧みな秘密だらけの怪人フリトフ、精神病学の泰斗ソトニコフチエカの刑事部長トベルゲ、淫売上りの白色将官夫人ドリヤ等々が、ガルキンを中心に渦を巻く。怪奇な筋のラビリスが、白赤の二大闘争の遺族を通じて、読者を徹夜にまで誘惑するその間に現在ソヴエト・ロシヤの世情人態を微細に写して余るところがない。
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- ウラジーミル・ナボコフ(Владимир Владимирович Набоков, 1899-1977, 日本語版Wikipedia)
- 『絶望』(貝澤哉訳、光文社古典新訳文庫、2013年10月) ※訳書は最新のもののみ示す
ナボコフの作品ではほかに、
『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』(富士川義之訳、講談社文芸文庫、1999年7月)や
『青白い炎』(富士川義之訳、岩波文庫、2014年6月)がミステリの一種として言及されることがある。『青白い炎』はステファーノ・ターニ『やぶれさる探偵 推理小説のポストモダン』(高山宏訳、東京図書、1990年)で「メタフィクショナルな反‐探偵小説」として論じられている。(なお、『絶望』はナボコフがロシア語で書いた作品、『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』と『青白い炎』は英語で書いた作品)
短編集『ナボコフの一ダース』(中西秀男訳、サンリオSF文庫、1979年9月 / ちくま文庫、1991年4月)は紹介文に「SF、童話、ポルノ、探偵小説などさまざまな様式をとって繰り広げられるナボコフの反宇宙的世界」、「本書は“文体の魔術師”ナボコフが、SF、ポルノ小説、童話、探偵小説などの体裁をとりながら、彼独自の世界を見事に結実させた短編集である」(
筑摩書房 書籍紹介ページ)とあるが、収録作のどの短編が「探偵小説」的作品なのかは未確認。なお収録作は、『ナボコフ全短篇』(作品社、2011年8月)(短編68編収録)でも読める。
(2)1950年代~に邦訳された作家
- ロマン・キム(Роман Николаевич Ким, 1899-1967, ロシア語版Wikipedia)
- 『切腹した参謀達は生きている』(高木秀人訳、五月書房、1952年1月) ※一部がカットされている
- 『切腹した参謀たちは生きている』(長谷川蟻訳、晩聲社、1976年12月) ※完訳
- S・アレフィエフ(С. Арефьев, 生没年未詳)
- 「試射場の秘密」(『星雲』[※日本初の商業SF誌]創刊号、1954年 、著者名表記「S・アレフィヨーフ」) 原題:Тайна полигона か?
- 「万年筆殺人事件」(袋一平訳、『政界往来』1955年8月号) 原題:Глубокий снег
- 「赤い小箱」(袋一平訳、『探偵倶楽部』1957年1月号) 原題:Красная шкатулка
- レフ・サモイロフ=ヴィリン(Лев Самойлов-Вирин, 生没年未詳)
- 「夜の雷雨」(袋一平訳、『探偵倶楽部』1955年10月号および11月号) 原題:Майор милиции
- (上記と同じ作品)「雷雨」(住田伸二訳、『小説読本』1956年8月号)
- アナトーリィ・ベズーグロフ(Анатолий Алексеевич Безуглов, 1928- , ロシア語版Wikipedia)
- 「にせのサイン ――弁護士の日記より――」(袋一平訳、『宝石』1956年2月号、pp.72-82)
- 「予審判事の捜査記録」(深見弾訳、『ミステリマガジン』1991年12月号、pp.53-77)
- レフ・シェイニン(Лев Романович Шейнин, 1906-1967, ロシア語版Wikipedia)
- 「婦人探偵の推理眼 =うっとうしい事件=」(袋一平訳、『探偵倶楽部』1957年11月号)
- 「ミスター・グローバーの恋」(ノーボスチ通信社編『りんご漬け 現代ソビエト短編集』ソビエト社会主義共和国連邦大使館公報課、1963年) ※現物未見。ミステリかどうか不明
- 「狩猟ナイフ」(永井淳訳、『ミステリマガジン』1965年11月号)
- (上記と同じ作品)「狩猟ナイフ」(稲垣晴美訳、『ミステリマガジン』1972年1月号) ※永井淳訳の方を勧める
- 「セメンチューク事件」(深見弾訳、『ミステリマガジン』1978年3月号)
(3)1960年代~に邦訳された作家
- ユリアン・セミョーノフ(Юлиан Семёнович Семёнов, 1931-1993, 日本語版Wikipedia)
- 『ペトロフカ、38』(飯田規和訳、早川書房 ハヤカワ・ミステリ883、1965年3月 / 早川書房『世界ミステリ全集』第12巻、1972年)
- 長編抄訳『会長用の爆弾』(ソ連大使館広報部刊行『今日のソ連邦』1973年第1号(1月1日)~第7号(4月1日)、全7回連載)
- 『春の十七の瞬間(とき)』(伏見威蕃訳、角川文庫、1991年6月)
- 「一九三七年の夏」(ジェローム・チャーリン編『ニュー・ミステリ : ジャンルを越えた世界の作家42人』[早川書房、1995年10月]に収録) ※非ミステリ
- イリヤ・ワルシャフスキー(Илья Иосифович Варшавский, 1908-1974, 日本語版Wikipedia)
- 「シャーロック・ホームズ秘話」(イリヤ・ワルシャフスキー『夕陽の国ドノマーガ』[草柳種雄訳、大光社、1967年]に収録) ※ミステリのパロディ
- 「ドブレ警部の最後の事件」(井桁貞義訳、『季刊ソヴェート文学』1974年夏季号[通巻48号]、pp.210-234) ※ミステリのパロディ
(4)1970年代~に邦訳された作家
- アレクセイ・コロビツィン(Алексей Павлович Коробицин, 1910-1966, 日本語版Wikipedia)
- 『逃亡 ――犯罪なき犯罪』(香川二郎[本名・末包丈夫]訳、1970年12月、法律文化社)
- ワイネル兄弟(Братья Вайнеры, 日本語版Wikipedia)
- アルカージイ・ワイネル (Аркадий Александрович Вайнер, 1931-2005, ロシア語版Wikipedia)
- ゲオルギー・ワイネル (Георгий Александрович Вайнер, 1938-2009, ロシア語版Wikipedia)
- 長編抄訳『ミノトール訪問』(泉清訳、『季刊ソヴェート文学』1974年夏季号[通巻48号]、pp.22-160)
- レオニード・スローヴィン(Леонид Семёнович Словин, 1930-2013, 日本語版Wikipedia)
- 「目撃者のない事件」(酒枝英志訳、『季刊ソヴェート文学』1974年夏季号[通巻48号]、pp.162-208)
- ストルガツキー兄弟(Братья Стругацкие, 日本語版Wikipedia)
- アルカジイ・ストルガツキー (Аркадий Натанович Стругацкий, 1925-1991, ロシア語版Wikipedia)
- ボリス・ストルガツキー (Борис Натанович Стругацкий, 1933-2012, ロシア語版Wikipedia)
- 『幽霊殺人』(深見弾訳、早川書房 ハヤカワ・SF・シリーズ、1974年8月) - 原題の直訳は『ホテル「死滅したアルピニストの許で」』
- ア・アヴデェーエフ(Алексей Иванович Авдеев, 1910-????)
ワイネル兄弟、レオニード・スローヴィン、イリヤ・ワルシャフスキーの作品を収録した『季刊ソヴェート文学』1974年夏季号(通巻48号)は「特集:ソ連の推理小説」。ほかにイリーナ・ボガートコ(岡野肇訳)「ソヴェートの推理小説 ――最近年間の作品の概観――」(pp.236-244)が掲載されている。
ストルガツキー兄弟ではほかに、マクシム・カンメラー(登場人物名)三部作(『収容所惑星』、『蟻塚の中のかぶと虫』、『波が風を消す』)のうちの第2作『蟻塚の中のかぶと虫』(深見弾訳、早川書房 海外SFノヴェルズ、1982年4月 / ハヤカワ文庫SF、1990年1月)は行方不明の人物を秘密調査員のマクシムが捜索するというストーリーで、「ソ連SFの雄が贈る会心のSFミステリ」として邦訳紹介されている。
(5)1980年代~に邦訳された作家
- トーポリ & ニェズナンスキイ
- エドワード・トーポリ (Эдуард Владимирович Тополь, 1938- , ロシア語版Wikipedia)
- フリードリヒ・ニェズナンスキイ (Фридрих Евсеевич Незнанский, 1932-2013, ロシア語版Wikipedia)
- 『赤の広場 : ブレジネフ最後の賭け』(原卓也訳、中央公論社、1983年4月) - 週刊文春ミステリーベスト10、第3位
- 『消えたクレムリン記者 : 赤い麻薬組織の罠』(原卓也訳、中央公論社、1983年7月)
- エドワード・トーポリ(エドゥアルド・トーポリ)
- 『ソ連潜水艦U137 : 人工地震エンマ作戦』(江川卓訳、中央公論社、1984年3月)
- 『赤いパイプライン』(江川卓訳、新潮文庫、1988年6月)
- 『暗黒のクーデター』(川合渙一訳、新潮文庫、1992年2月)
- 『公爵夫人ターニャの指輪』(吉浦澄子訳、新潮文庫、1993年4月) - 妻のエミリアとの共著
- フリードリヒ・ニェズナンスキイ
- 『赤い狼 : KGB"T"機関の陰謀』(工藤精一郎訳、中央公論社、1985年6月 / 中公文庫、1989年11月)
- 『「ファウスト」作戦 : 書記長暗殺計画』(原卓也訳、中央公論社、1987年9月)
ニェズナンスキイの『犯罪の大地 : ソ連捜査検事の手記』(工藤精一郎訳、中央公論社、1984年7月 / 中公文庫、1986年12月)はそのタイトル通り捜査手記。小説ではない。
(6)1990年代以降に邦訳された作家
- イリーナ・ムラヴョーワ(Ирина Лазаревна Муравьёва, 1952- , ロシア語版Wikipedia)
- 「土壇場」(菅沼裕乃訳、サラ・パレツキー編『ウーマンズ・ケース』上巻、ハヤカワ・ミステリ文庫、1998年2月)
- アレクサンドラ・マリーニナ(Александра Маринина, 1957- , 日本語版Wikipedia)
- モスクワ市警殺人課分析専門官アナスタシヤ
- 1 『盗まれた夢』(吉岡ゆき訳、作品社、1999年10月)
- 2 『孤独な殺人者』(吉岡ゆき訳、作品社、2000年8月)
- 3 『死刑執行人』(吉岡ゆき訳、作品社、2002年3月)
- モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ・シリーズ
- 1 『アウェイゲーム』(貝澤哉訳、光文社文庫、2003年4月)
- 2 『無限の殺意』(佐々洋子訳、光文社文庫、2003年10月)
- 3 『死とほんのすこしの愛』(佐々洋子訳、光文社文庫、2004年4月)
- 作品社版と光文社文庫版でシリーズ名が異なっているが、同じシリーズ。本国での刊行順は2『アウェイゲーム』→3『盗まれた夢』→4『孤独な殺人者』→5『無限の殺意』→7『死とほんのすこしの愛』→12『死刑執行人』。
- ほかに、シリーズ第1作『事の次第』の一部分が光文社『ジャーロ』の企画「世界のミステリーを読む」で翻訳掲載されている(鴻英良、2001年冬号、通巻2号)。
- ボリス・アクーニン(Борис Акунин, 1956- , 日本語版Wikipedia)
- 『堕ちた天使 : アザゼル』(沼野恭子訳、作品社、2001年4月) - 2002年フランス・ミステリ批評家賞受賞、2003年英国推理作家協会(CWA)最優秀長編賞ノミネート
- 『リヴァイアサン号殺人事件 : ファンドーリンの捜査ファイル』(沼野恭子訳、岩波書店、2007年2月) - 『本格ミステリ・ベスト10』8位、早川書房『ミステリが読みたい!』9位
- 『アキレス将軍暗殺事件 : ファンドーリンの捜査ファイル』(沼野恭子、毛利公美訳、岩波書店、2007年2月)
- 3冊ともファンドーリン・シリーズ。本国での刊行順は上記の順と同じ。
ボリス・アクーニンはファンドーリン・シリーズにより、2004年のフィンランド・ミステリ協会外国推理作家賞を受賞している。
2005年、ポーランドのミステリ賞である大口径名誉賞をボリス・アクーニンとアレクサンドラ・マリーニナが受賞している。国内外の傑出したミステリ作家に贈られる賞。
(7)少年少女向けミステリ
- アナトーリー・ルイバコフ(アナトーリー・ルィバコフ)(Анатолий Наумович Рыбаков, 1911-1998, ロシア語版Wikipedia)
- 「根つけ綺譚」(吉上昭三訳、勁草書房『新しいソビエトの文学』第3巻、1968年)
この作品はチェコでは『日本根つけの謎』(Záhada japonské spony)というタイトルで刊行されていてミステリとして扱われているようである。
「根つけ綺譚」は少年クローシを主人公とする3部作の第2作。第1作は1964年刊行の講談社『少年少女新世界文学全集』第25巻(ソビエト現代編3)に「クローシの冒険」(福井研介訳)というタイトルで収録されており、1984年には理論社から『おとなへの第一歩』(中込光子訳)というタイトルでも出ている。第3作の邦訳はない。
- アナトーリ・アレクシン(Анатолий Алексин, 1924- , ロシア語版Wikipedia)
- 『ナターシャ、ぼくを見て! アリク少年の探偵物語』(佐伯靖子訳、新読書社、1988年12月) Тайна старой дачи (1968)
チェコ
- カレル・チャペック(Karel Čapek, 1890-1938, 日本語版Wikipedia)
- Povídky z jedné kapsy (1929) 24編収録
- 『ひとつのポケットから出た話』(栗栖継訳、至誠堂 現代人叢書第9巻、1960年[著者名表記 カレル・チャペク] / 晶文社 文学のおくりもの15、1976年 / 晶文社 文学のおくりものベスト版、1997年8月)
- 『ひとつのポケットからでた話』(栗栖茜[※栗栖継の息子]訳、海山社、2011年2月)
- Povídky z druhé kapsy (1929) 24編収録
- 『ポケットから出てきたミステリー』(田才益夫訳、晶文社、2001年11月)
- 『もうひとつのポケットからでた話』(栗栖茜訳、海山社、2011年2月)
- エゴン・ホストヴスキー(Egon Hostovský, 1908-1973)
- 『スパイ』(岡田真吉訳、角川書店、1958年)
- 改題文庫化『秘密諜報員 : アルフォンスを捜せ』(角川文庫、1966年)
- ヨゼフ・シュクヴォレツキー(Josef Škvorecký, 1924-2012)
- 『ノックス師に捧げる10の犯罪』(宮脇孝雄・宮脇裕子訳、出版:The Mysterious Press、発売:早川書房、1991年5月)
- パヴェル・ヘイツマン(Pavel Hejcman, 1927- )
- 『鋼鉄の罠』(田才益夫訳、発行:有楽出版社、発売:実業之日本社、1996年3月)
- パヴェル・コホウト(Pavel Kohout, 1928- , 日本語版Wikipedia)
- 『プラハの深い夜』(田才益夫訳、早川書房、2000年10月)
- ヴァーツラフ・ジェザーチ(Václav Řezáč, 1901-1956)
- 『かじ屋横丁事件』(井出弘子訳、岩波書店 岩波少年文庫2075、1974年)(児童文学)
また、ラジスラフ・フクス(
Ladislav Fuks, 1923-1994)の1967年の作品、
『火葬人』(阿部賢一訳、松籟社《東欧の想像力》第9巻、2012年12月)はポーランドの評論家が選出したミステリのオールタイムベスト100の1冊に選ばれており、ミステリの一種と見られているようである。
ポーランド
- ブルーノ・ヤセンスキー(Bruno Jasieński, 1901-1938)
- 『人間は皮膚を変える』
- 『人間は皮膚を変へる』(黒田辰男訳、白揚社、1937年、著者名表記「ブルーノ・ヤセンスキイ」)
- 『人間は皮膚を変える 上』(黒田辰男訳、青木書店 ヤセンスキー選集、1957年)
- 『人間は皮膚を変える 中』(黒田辰男訳、青木書店 ヤセンスキー選集、1957年) ※下巻は刊行されていない
『人間は皮膚を変える』は、江戸川乱歩と文通したソ連の推理作家ロマン・キムが手紙の中で、1930年代の探偵小説の傑作としてタイトルを挙げているスパイ小説。
ヤセンスキー作品の邦訳事情については、SFファングループ「
THATTA」のオンライン・ファンジン『THATTA ONLINE』
241号(2008年5月号)に掲載されたフヂモト・ナオキ氏の「ウィアード・インヴェンション~戦前期海外SF流入小史~008」が詳しいが、それによれば、1937年の邦訳『人間は皮膚を変へる』は第一部のみの翻訳であり、全訳ではないそうだ。戦後も1957年にヤセンスキー選集で『人間は皮膚を変える 上』、『人間は皮膚を変える 中』が刊行されたが、この選集の出版は中絶しており、下巻は刊行されていない。
探偵雑誌では、『探偵倶楽部』1955年6月号(6巻6号)にヤセンスキーの「人造運命の支配者」が掲載されている(南沢十七訳、著者名表記「E・ヤーシンスキイ」)。
- イェジィ・エディゲイ(Jerzy Edigey, 1912-1983, 日本語版Wikipedia)
- 『顔に傷のある男』(深見弾訳、ハヤカワ・ミステリ1292、1977年)
- 『ペンション殺人事件』(深見弾訳、ハヤカワ・ミステリ1312、1978年)
- スタニスワフ・レム(Stanisław Lem, 1921-2006, 日本語版Wikipedia)
- 『枯草熱』(こそうねつ) - 1979年フランス推理小説大賞
- 吉上昭三、沼野充義訳、サンリオSF文庫、1979年9月
- 沼野充義、吉上昭三訳、スタニスワフ・レムコレクション『天の声 / 枯草熱』、国書刊行会、2005年10月
- レムの作品では、『捜査』(深見弾訳、ハヤカワ文庫SF、1978年8月)もそのタイトル通り推理小説仕立ての作品である。
ブルガリア
- アンドレイ・グリャシキ(Андрей Гуляшки, 1914-1995, 日本語版Wikipedia)
- 「ザホフ対07」(袋一平訳、『ミステリマガジン』1967年2月号)
- (上記と同じ作品)『007は三度死ぬ』(深見弾訳、創元推理文庫、1985年)
ウクライナ
- アンドレイ・クルコフ(Андрій Курков, 1961- , 日本語版Wikipedia) ※ウクライナ語ではなくロシア語で書く作家
- 『ペンギンの憂鬱』(沼野恭子訳、新潮社 新潮クレスト・ブックス、2004年9月)
クルコフはウクライナのロシア語作家で、
『ペンギンの憂鬱』は1996年の作品。日本では新潮クレスト・ブックスで刊行されたが、アメリカでは『Death and the Penguin』というタイトルでミステリ叢書《
Melville International Crime》の1冊として刊行されている。法月綸太郎氏によるレビューは評論集『盤面の敵はどこへ行ったか』で読める。
関連事項
光文社『ジャーロ』の創刊号(2000年秋号)から第11号(2003年春号)まで続いた企画「世界のミステリーを読む」で、ポーランドのアンジェイ・スタシュク「コシュチェイニと夜の闇」(ケン・オカモト・カミンスキ訳、2001年秋号、通巻5号)、スロヴァキアのドゥシャン・ミタナ「冬景色を横切って」(ケン・オカモト・カミンスキ訳、2002年冬号、通巻6号)が訳載されているが、どちらもミステリには分類しづらい作品。
関連ページ
最終更新:2014年08月19日 19:15