37話 a Vision
油谷眞人は典型的なエリート志向の両親の元で育った。
幼い頃からしっかり勉強をしろ、良い成績を取って良い学校に行けと両親に言われ、
成績が悪いと容赦無く叱責された。
小学生の頃は大人しく両親に従っていた眞人だったが、
思春期を迎え次第に両親に反発するようになり、また、溜まったストレスを発散するかのように、
中学の時には度々暴力沙汰を起こし、素行が目に見えて悪くなっていった。
そして高校受験、一応は有名進学校を受験するも、不合格。
受験の頃にはろくに勉強もしなくなっていたのである意味当然の結果。
眞人自身もどうせ受かりはしないと諦めていたので別段ショックも受けなかった。
滑り止めで受けた普通の高校は合格しそこには学生寮があったので、
両親の元から離れたいと思っていた眞人は学生寮に移り住み、バイトをしながら高校に通っていた。
F-5、南部集落南端部。
油谷眞人はデザートイーグルを片手に集落を歩いていた。
(禁止エリアになる前にこの辺から離れねぇとな……)
先の放送で、現在いるF-5エリアが禁止エリアになると発表された。
午前7時までにF-5から避難しなければ首輪が作動して死ぬ事になる。
(いくら何でもそんな間抜けな死に方は嫌だからよ……)
南へ抜けるためにとある曲がり角を曲がった時。
「ん?」
「あっ……!?」
紫髪の、ほぼ全裸の少女と遭遇した。
しかし良く見ると悪魔のような翼や尻尾を持っているので、人間では無いようだった。
隠される事無く晒されている豊満な乳房やその部分に眞人は少し面食らう。
紫髪のサキュバス少女、
ヴェロニカは放送を聞いた後、F-5エリアから避難するべく歩いていた。
その時、中高生ぐらいの少年と遭遇し、突然の事だったので少し驚いた。
しかし程無く気を取り直した。
(あ、人間の男の人……しかも好み)
良く見れば少年はヴェロニカの眼鏡に適う容貌で、彼女はこの少年と交わりたい欲望に駆られる。
数時間前、同行者を目の前で殺害されてから、死の恐怖に怯える傍ら、
死ぬまでに一回ぐらいは気持ち良い事をしたいと思っていた。
無論、殺し合いから脱出するためにも行動する気ではいたが欲望の方が勝っていた。
そして気付いた時にはヴェロニカは少年に色目を使おうとしていた。
相手が殺し合いに乗っているのかどうかも分からない、
禁止エリア発生時刻が迫っていると言う危険な状況にも関わらず。
「あ、あのぉ……」
しかし。
少年は艶を効かせたヴェロニカの声とポーズには反応せず、銃口をヴェロニカの胸元に向けた。
「悪いけど構ってる暇無いんだよな……ついでだから、これの威力試させてくれよ」
少年がそう言った直後ぐらいに。
ドォン!!!
爆発音のような音が辺りに響き、ヴェロニカの乳房の間に風穴が空いた。
彼女の背後に、血と肉片が飛散し地面を彩る。
衝撃でヴェロニカの身体も後ろに吹き飛ばされ、地面に倒れた。
その時はまだ微かに彼女の息はあったものの、数秒後に完全に死に絶える。
「ハッ……ハハ、すげぇや、こいつは。すげぇ威力だ」
デザートイーグルの.50A.E弾の威力を認識し、その威力に惚れ込みやや興奮した様子で笑みを浮かべる眞人。
両手には反動を受け止めた際の痺れがあり、それが更に眞人にデザートイーグルの威力を確かめさせた。
「……」
殺害したサキュバス少女の所持品を漁り始める眞人。
しかし武器になりそうな物は何も入っていない。
「何も持ってないか……まあ良いか、おっと、禁止エリアになっちまうからさっさと行くか」
禁止エリア発動の時刻が迫っている事を思い出した眞人は、
F-5エリアから避難するため移動を再開した。
【ヴェロニカ 死亡】
【残り35人】
【朝/F-5/南部集落南端部】
【油谷眞人】
[状態]健康
[装備]デザートイーグル(6/7)
[持物]基本支給品一式、デザートイーグルの弾倉(1)
[思考]1:生き残るために殺し合いに乗る。
2:F-5エリアから避難する。
[備考]※特に無し。
最終更新:2014年02月03日 01:01