サブリミナルローテーション

64話 サブリミナルローテーション

市街地を歩いていたノーチラスと沙也。
ふと、沙也がノーチラスに話を振る。

「ねぇノーチラスってさ」
「うん」
「超能力使えるんだよね」
「ああ、衣服を分解出来る奴がな」
「ちょっとやってみてよ、私に」

余りに唐突かつ無茶なお願い、ノーチラスは無論速攻で拒否する。

「お前全裸になるだろうが……」
「良いよ! 来いよ!」
「良い訳無いだろ! いい加減にしろ!」

いやらしい笑みを浮かべながら無理を言う沙也に、本当に淫乱だと呆れるノーチラス。
言う通りにして全裸にしても恐らくと言うか間違い無く沙也は怒る事も恥じらう事も無いだろうが、
だからと言ってやる気にはならない。流石にその位の分別はノーチラスだって持っていたし、沙也の身の安全も考えていた。

「服が無いと防御力が無くなるだろ……大怪我する確率が高くなるぞ」
「あー、それもそうか……して欲しいけどな~……じゃあ今はやめておくわ。
無くなっても良い服とか手に入れたらやって貰いたいなぁ」
「おう考えといてやるよ」

ノーチラスと沙也の問答には一応の決着は着いたようだ。

警察署にて触手の怪物に襲われ、逃げてきた二人。
市街地へやって来てからしばらく危機らしい危機は訪れていなかったせいか、二人は少々緊張感が薄れていた。
それ故に人目に付き易い市街地の歩道で、下らない話を始めてしまった。

そんな二人を、曲がり角から少しだけ顔を出して様子見する少年。
殺し合いに乗り索敵中だった油谷眞人である。
顔を引っ込めて、恐らく自分と同年代と思われる狼と猫の少年少女への対応を練る。
先刻殺害しようとした男は余りの情けないみっともない様に呆れて追い返してしまったが、あの二人はどうなのだろうか。

(何か話してたみてぇだけど、こんな殺し合いん中で呑気にお喋りとはなー、さてどうすっかな)

あの二人を襲うか否か眞人は思案する。
こちらは一人、向こうは二人、数の上では不利では有るがどうやら周囲への警戒は怠っている様子。
強行突破すれば一気に仕留められる気もするが、確実では無い。
見た所、猫の方は日本刀だからまだ良いとして、狼の方はライフルと思しき物を持っているのでもし反撃されれば非常にまずい。

(……やめるか)

考えた末、眞人は安全策を取り、二人は無視して行く事にした。
踵を返して立ち去ろうとした、が。

グシャッ

「あっ」

うっかり、落ちていたアルミ缶を踏んづけてしまう。
静かな市街に、アルミ缶が潰れる音は良く響いた。
恐らくあの二人に気付かれるであろう位に。

(やべ、気付かれたか?)

その場で静止して耳を澄ませる眞人。

眞人の危惧通り、ノーチラスと沙也は今の缶が潰れた音をしっかり耳にしていた。
ただでさえ静かで些細な物音でも目立つ上、獣人である彼らは普通の人間より聴力に優れ、聞き逃さなかった。

「何か聞こえたよね?」
「聞こえたな、そこの曲がり角の方から」

(やべえ、バッチリ気付かれてやがるな)

油断していたのは自分もだったと眞人は反省する。

「どうする? 見に行ってみる?」
「ちょっと待て、声を掛けてみよう……」

曲がり角の向こうに居るであろう物音の主に向かってノーチラスは思い切って声を掛けてみる。

「誰か居るのか?」
「……」

眞人は応じない。
ここで接触してしまうと色々と面倒である。
このまま走って逃げてしまおう、そう考えた眞人は走り出した。
駆け出す音が聞こえそれが遠ざかって行くのを認めたノーチラスと沙也は、物音と足音の主を追い掛ける。
しかしすぐに路地裏に逃げ込まれ、後ろ姿を見る位しか出来なかった。
その上得られた外見の情報も、黒い服、どうやら人間で男、程度の事。

「逃げちゃったね……誰だろ、って言うか、何で逃げたんだろ」
「うーん」

男が逃げた理由としては二つ、ノーチラスは思い付いた。

「怯えてたのか、俺らを殺そうと隙を窺ってたけど気付かれてまずいと思って逃げたのか、どっちか」
「乗ってたのかな」
「確かめようが無いから何ともな。どっちでも無いかもしれないし、何にしても余り友好的では無さそうだったな。
……下手したら俺ら襲われてたかもしれない……」
「ちょっと、油断してたかなー私達」

しばらく襲われる事も誰とも会う事も無く、平和だったせいか、警戒を怠っていた感は否めないと、二人は省みる。
自分達がいつ命を狙われるか分からない過酷なゲームをさせられていると言う事実をきちんと踏まえなければならない。

「とは言っても、お前は淫らな事はやめるつもりは全く無いんだろ?」
「そうだよ」
「……お前らしくて良いと思うよ、うん」

もっとも、沙也に関しては根本の部分、つまり淫乱な部分は何ら変化は無いので、
そんな反省も意味が有るのかどうか疑問符が付くのだが。

一方、二人から逃れ、裏路地へ逃げ込んだ眞人。

「追っては来てねぇみてぇだな」

振り向き、あの二人が追ってきている様子は無い事を確認し、一先ず安心する眞人。
しかし程無くして、あの二人から逃げてきた形になったのが無様だ、と眞人は悔やみ始める。
安全策を取り二人を回避し逃げる判断を下したのは他ならぬ自分、それは分かっている。
だが、思えば以前の殺し合いでは、自分は一度も相対した者から逃げなかった筈だ。
即興のトラップを思い付いて二人一緒に殺害した事も有ったし(事後確認だが)、
犬獣人の中年男と犬の二人組を襲い、中年男の方を殺害してもう一人の犬の方も圧倒した。
それらの時の自分の武装は、鉄製の丸棒。今持ってる古びた剣とそうは変わらない。

そうだ、数の上での不利など、武装の上の不利など関係無かったのだ。
何故自分はそれを忘れていたのか。

「やっぱ俺の性には合わねぇや」

最早、どのような相手でも避けたり逃げたりはすまい。
自分より強かろうと、武器が優れていようと、数で勝っていようと立ち向かって行ってやろう。
眞人はそう決心する。

それを彼の覚悟の良さと取るか、ただの現実が見えない愚か者と取るかは人それぞれであろうが。


【午前/E-4市街地】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラスと行動。
        2:しばらくは市街地を回る。
        3:ノーチラスの超能力を体験してみたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。
    ※いつ頃からかノーチラスを呼び捨てにしています。

【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(0/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也と行動。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
        3:しばらくは市街地を回る。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※君塚沙也がリピーターであり事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。


【午前/E-4市街地裏路地】
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:生き残る為に殺し合いに乗る。
        1:他参加者の捜索。
        2:どんな相手でも逃げたりしない。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※土井津仁、春巻龍、ノーチラス、君塚沙也の容姿のみ記憶しました。


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最終更新:2015年02月14日 21:35