77話 顔も知らない友達ごっこで
はるばる歩き歩き、ようやく巴とKBTITこと拓也はゲーム会場中央部の市街地へと辿り着く。
ここに来るまでに実に様々な事が有ったと二人は回顧する。
具体的に言うと、「獣人の苦しむ顔が見たい」などという理由で巴に危害を加えようとした一人の少年を一から調教したり、
その少年が少し目を話した隙に殺されてしまったり、
背中から触手の生えた青い大きな犬に襲われたが返り討ちにして殺したり、
兎の女性ソフィアと出会って行動するようになった後、レジャー施設で会った銀鏖院水晶に看板を落とされたり、
工場にて水晶と再び遭遇しソフィアを喪ったもののこれを返り討ちにして殺したり、
図書館にて惨状を目撃したり、と、本当に色々有ったのだ。
「さぁ~次はどんな出会いがあるのかな~アッハ」
「殺し合いに乗ってる奴とは出会いたくねぇな……あーくっそ、まだイテェ」
鼻を押さえ痛がるKBTIT。
工場にて水晶に消化器で殴打され、鼻血は止まったものの痛みは残っていた。
「鼻折れてるんじゃねぇかこれ……」
「あんま触んない方が良いよ~周りに気を付ける事も忘れないでね」
「分かってる分かってる」
辺りを警戒しつつ、巴とKBTITは市街地の通りを歩く。
◆◆◆
先刻に狼獣人少年と猫獣人少女から逃亡してから、
油谷眞人は平穏無事な時間を過ごしていた。
要するに誰とも遭遇していなかった。
(別に戦うのが好きって訳じゃねぇけど)
好戦的と言う訳では無かったが、少し退屈だと眞人は思い始める。
「ん……」
しかしその退屈が解消される時が唐突にやってくる。
微かに足音と話し声が聞こえ、眞人は足を止めた。
前方の曲がり角の方から、その足音と話し声は聞こえるようなので、すぐ近くに停めてあった白い大型ワゴンの陰に眞人は隠れ、
スモークのフィルムが貼られた車の窓ガラス越しに様子を窺い始めた。
そして曲がり角から二人の参加者が現れる。
片方は犬か狼の獣人の少女で自分の学校とは違う学校の女生徒制服に身を包み、
もう一人はゴーグルかサングラスを掛けた色黒の人間の男。
スモークフィルムのせいで余計に色黒さに拍車が掛かっているように見えた。
二人は辺りを警戒しながら、眞人が隠れる車が有る通り方向へと曲がった。
一瞬獣人少女が自分の方を見たような気がしたがすぐに別方向を向いたので恐らく気のせいだろうと眞人は思う。
(二人共、銃持ってんな)
獣人少女も色黒男も、銃を所持している事が分かる。
対して自分が持っている武器は近接武器の剣とメリケンサック。
さあどうする。眞人は考える。
もうどんな相手でも逃げはしないと決めたのだから、逃げるのは無しだ。
(よし、後ろから一気にぶった斬ってやる)
眞人は自分の方向に背を向ける二人に向かって、車の陰から飛び出し、一気に駆け出した。
結論から言うと、やはり無理だった。当たり前だよなぁ?
「気付かないと思ってたの? そんなんじゃ甘いよ」
獣人少女が眞人を嘲笑いながら散弾銃を突き付ける。
色黒の男の方も同じように銃を眞人に向けていた。
やはり甘かったか、と、眞人は歯噛みする。
◆◆◆
背後から自分達を襲おうとした学ラン姿の長身の少年を尋問する巴とKBTIT。
「名前は?」
「……」
「なーまーえーはー?」
「ゆ、油谷眞人……」
巴の威圧を受け顔を顰めながら、少年は自分の名前を述べる。
「油谷眞人……あ、思い出した。貴方、私と同じ殺し合いに居たっしょ」
「あ?」
「私、
原小宮巴。ほらー、ジャンケンの時、油谷君の前にやったんじゃん私」
「……ああ、そういや」
「何だ、知り合いか? 巴」
「知り合いって言うか……前に同じ殺し合いに居たってだけだけど。仲間だった訳じゃないよ」
少年の名前を聞いて、巴は少年、油谷眞人が、以前同じ殺し合いに参加させられていた人物だと言う事を思い出す。
一方の眞人も、巴に説明を受けて思い出したようだった。
しかし、お互いに、終盤のイベントまで全く面識は無く、再会を喜ぶなどといった事は全く無かった。
散弾銃の銃口をちらつかせ、巴は眞人に質問を続ける。
「まあそれは良いとしてぇ、ねえ? やっぱ乗ってるの殺し合い? 乗ってるの?」
「……ああ、乗ってる」
巴の質問に正直に答える眞人。
「お前乗ってやがるのかオオン? どうする巴」
「んーそうだねー……タクヤさん、油谷君結構体格良いよね?」
「あ? ……そうだなぁ、ハンサムなマスクと、均整の取れた身体(嫉妬)」
「……おいおい、何だよ、言っとくけどなオッサン、俺はそんな趣味は」
「オッ↑サン↓だとふざけんじゃねぇよオラァ! お兄さんだろォ!?」
「まあまあタクヤさん……大丈夫大丈夫、安心してそういうアレじゃないからさー。
油谷君、体格良いし、強そうだし、仲間にしたらさぞ役に立つだろうと思って」
「あぁ?」
「取引しよーよ油谷君」
唐突に取引を持ち掛ける巴に困惑する眞人。
仲間にしたら、と言っていたのでそれに関する事であろうと言うのは想像出来た。
そしてその想像はやはり的中していた。
「殺し合いなんてやめてさ、私達と一緒に殺し合いに反抗しよーよ」
殺し合いの放棄、そしてそれへの反抗及び自分達と行動を共にする事を、巴は眞人に提言した。
しかしこれだけでは取引とは言えない、まだ何か有るだろうと眞人は思う。
案の定「拒否したらサヨウナラね」などと、散弾銃の銃口を眞人の眼前にちらつかせながら巴が言った。
つまり命を保障する代わりに、殺し合いをやめ自分達と一緒に殺し合いへ抗えと言う事、これが巴が眞人に出した取引である。
◆◆◆
「……成程な、取引か……もしそれ断ったりしたら?」
「その時は勿論、貴方には死んでもらいます」
「……」
実質的に飲み込む以外の選択肢の無い「取引」とは「取引」と呼べるのかと眞人は巴に疑問を投げ掛けたかったが、
そんな事をした所で状況は何も好転しないだろう事も分かっていた。
言いなりになるのは癪では有ったが、今の状況を自分の勝利へと持っていく方法も見付からず。
「分かった……分かったよ」
渋々と、眞人は「取引」と言う名の「降伏勧告」を受け入れた。
「さーて新しい仲間も出来た事だし次行ってみよー次」
「……つったって、どうすんだよ」
「街歩きながら仲間探しって所だな。
俺のクラスメイトも同時進行で……つっても今何人無事なのか分からねぇけど」
「そだねーあーでもその前に放送どっかで聞かなきゃ」
(要するに、殺し合い反抗するつっても、有効な手立てなんてねーって事じゃねーか)
かなり大雑把な行動指針を聞かされ呆れる眞人。
殺し合いに反抗する意志が有るのは分かるが具体的な展望はとてもでは無いがこの二人には期待出来ないと感じた。
しかし今更逃げ出そうとすれば恐らく命を狙われるだろう。
言うなれば、この二人と出会ってしまった事が自分の不運なのかと眞人は悔やんだ。
「ほら油谷、モタモタしてないで来いホイ! クォーイ!」
「……」
KBTITに急かされ、絶望とまでは行かないが暗い表情を浮かべながら、眞人は巴とKBTITと共に行く。
【昼/D-4、E-4境界線付近】
【原小宮巴@オリキャラ/
俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ウィンチェスターM1912(2/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:KBTIT(拓也)、油谷君と行動。
2:市街地で仲間集め。
3:油谷君が妙な真似をしたらすぐに殺すつもり。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
※金子翼の外見のみ記憶しました。
※金子翼が図書館に居た事は知りません。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]鼻を負傷(鼻血有)、ゴーグルにヒビ、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:巴、油谷と行動。工場を出て南の市街地へ向かう。
2:クラスメイト、殺し合いに乗っていない参加者を探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
※金子翼の外見のみ記憶しました。
※金子翼が図書館に居た事は知りません。
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:指針変更、しばらくは巴とKBTITの言う通りにする。
1:いつか隙を見て二人から逃げたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※土井津仁、春巻龍、ノーチラス、君塚沙也の容姿のみ記憶しました。
※巴とKBTITの言う事を取り敢えずは聞きますが、殺し合いを完全に放棄した訳ではありません。
最終更新:2015年03月04日 23:23