37話 連死
分校にて、内藤行光は放送を聞いた。
死者が17人も出ている事にショックを受け運営への怒りを顕にする。
絶対に殺し合いを潰さなければと決意を新たにした。
「しかし17人……多いな。私以外に殺し合いを打倒しようなどと考えている者は、
本当にいるのだろうか」
こうも死亡人数が多いと不安になる。
更に、行光自身、殺し合いに乗った竜人警官以降誰とも会っておらずそれが不安に更に拍車をかけた。
だがまだ諦めるには早い、自分を含めまだ33人生き残っている。
全員殺し合いに乗っているとはとても考え難いと、行光は考える。
「放送も聞いたしさっさと行くか……」
放送も聞き終え、これ以上分校にいる理由も無い。
行光は荷物を纏めて教室を後にし、昇降口へ向かった。
問題はこれからの行き先である。
現在いる分校のあるエリアはD-4であるが南下すると禁止エリアに指定されたD-5にぶち当たる。
かと言って北は森でしかもその先も禁止エリア。
となると東か西かしか無い。
「どこに行く……」
行き先を考えながら行光は校門を通り抜けた。
「いぃ~たぁ~」
「……!」
妙な抑揚の女性の声。
直後、行光の胸元を熱が貫いた。
耳を劈くような音が響く。
「がっ……は」
口から血を胸元から血が噴き出すが辛うじて行光はまだ立っていた。
撃たれたのだとすぐに理解する。
鍛え抜かれた屈強な肉体のおかげで即死は免れたが、重傷である事には変わり無い。
溢れる血液、遠のく意識。
「くそっ……不覚……ここまでか……」
恐らく自分はもう助からないだろう。
この殺し合いを打倒するための事を何も成し遂げられず死にゆく、実に残念であった。
せめて、自分を撃った者の顔を見届けようと、消えかかる意識を必死に保ち銃弾が飛んで来た方向を見据える。
殆ど全裸の、青い狐獣人の女性が、銃をこちらに向けて構えていた。
笑っていた。明らかに正気では無い。
そしてもう一発の銃声が響いた瞬間、行光の首輪が炸裂する。
狐女性の放った銃弾が行光の首輪に命中し誘爆したのだ。
行光は首に大きな穴が空き、鮮血を撒き散らしながら崩れ落ち、しばらく痙攣していたがやがて動かなくなった。
「あははっ、仕留めたりぃ」
獲物を仕留めた事に歓喜する狐女性、ヘレン・オルガ。
相変わらずその精神は狂ったままである。
「へへっえへへっ、どんどん、ころっ」
掃射音が響きヘレンの言葉は中断される。
彼女の身体中に穴が空き血が噴き出す。
心臓、肺、脊髄、脳、生存に必要な全ての器官が銃弾によって破壊されその機能を喪失し、
そして彼女自身の命も潰える事となった。
イングラムM10の空になった弾倉を交換する白狼獣人、フーゴ。
そして自分が撃ち殺した青狐獣人の女性の死体に近づき、彼女が持っていたリボルバーを拾い、
所持品を漁って予備の弾も手に入れた。
ついでに男の死体も調べるが、特に何も無く早々に切り上げる。
そして足早にその場を立ち去った。
「にしても、緒方の奴死んじまったんだな」
先刻の放送で呼ばれた死者の名前の中には、自分を襲ってきたが返り討ちにし犯して捨てた、
竜人警官の緒方龍也の名前もあった。
自分が捨てた後、誰かに殺されたのだろうか、それとも自分で命を絶ったのだろうか。
どちらかは分からないし、別に確かめる気もフーゴには無かった。
【内藤行光 死亡】
【ヘレン・オルガ 死亡】
【残り31人】
【D-4/分校周辺の市街地/午前】
【フーゴ】
[状態]健康
[装備]イングラムM10(40/40)
[持物]基本支給品一式、イングラムM10予備弾倉(2)、針金、ニッパー、三十年式銃剣、
ベレッタM92FS(12/15)、ベレッタM92FSの弾倉(3)、S&W M3ロシアンモデル(4/6)、.44ロシアン弾(6)
[思考]
基本:面白そうなので殺し合いに乗る。
1:獲物を探す。
最終更新:2013年04月02日 05:35