後ほねっこ男爵領

善政

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atohone

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善政



 善政とは何か。
 理想社会を実現することを善政というのではない。
 善政とは、理想社会を目指して飽くことなく歩み続けることをいう。
 つまり善政とは、一貫した方針に基づく終わる事なき more better の積み重ねである。

   

   

   



   

 農業国である後ほねっこ男爵領は朝も夜も早い。
 休耕期である冬季は別としても、春から秋にかけて、朝日が昇るころに起きて、夕日が
落ちる頃に帰宅する生活が続く。
 無論、何事にも例外は存在する。例えば、こんな片田舎を訪れる物好きが滞在するため
の宿泊施設であるとか、或いは、いつ急患が来ても対応できるように準備をしている医療
機関であるとか。
 中でも例外中の例外といえるのが、政庁を兼ねている藩城である。
 不夜城、(蛍光)灯の落ちない帝国、藩国で一番環境に優しくない建物など、様々な異
名が奉られているその窓から、明かりがすべて消えることは滅多にない。
 勿論、なにも後ほねっこ男爵領の藩国政府もエネルギーの無駄遣いをしたいわけではな
い。毎日NWの何処かで起こっている緊急事態に対処しつつ、日常の業務をこなすとなる
とどうしてもそうなってしまうのだ。その辺りは人手の少ない貧乏藩国の悲哀といえなく
もない。
 そんなわけで、今日も藩国民は、王城に点りはじめる灯りを見上げて、ああ、そろそろ
帰る時間だねぇと呟くのだ。

   



 そんな窓の一つから、ボクは今日も国土を眺めている。
 目を眇めれば、額に汗して働く人々の姿を見ることができる気がした。
 勿論、気の所為だ。千里眼でもなければ、ここから食糧生産地まで見通せるわけがない。
 無意味な仕種だ。そんな事は重々承知している。
 だけれども、ボクは窓の外に目をやる癖を治すことが出来ない。
 無意識のうちに、自分のしている仕事が、そうやって働いている人一人一人と繋がって
いること、確認しているのかもしれない。
 そういう風にいつも意識していないと、すぐにモニターに表示される数字を追うだけで
満足するようになってしまいそうで、怖いから。
 気を付けていないと人間はすぐ、想像力を行使することを忘れてしまう。

 想像力。

 ボクは、第七世界人だ。
 残念な事に、NWでは全般に第七世界人は嫌われがちで、そうでない場合でも、少なか
らぬ隔意を持たれる事が多い。
 まあ、仕方ないかなと、わが身を振り返って思う。
 本当は仕方ないで済ませちゃいけないとのだが、そう諦めてしまいそうになるくらい、
NWの人々と、ボクたちの間には深くて広い溝がある。
 何しろ、流れる時間からして違う。ボクたちの一日が、NWでの十二日に当たるわけだ
から、こちらで三日も対策が遅れると、NWでは一か月が過ぎてしまっている計算になる。
 NWでの出来事を知るのも、リアルタイムとはいかず、だいたいの場合は、事が始まっ
てしまってから、それを知っておたおたすることになる。
 NWの人には自明のことでも、ボクたちには全く知らなかったりする。
 そんな食い違いが、幾つも積み重なって(食い違いで済まされないクリティカルな物
も中には含まれている)、今の現状がある。

 こういう溝を埋めるために、絶対に必要なのが、想像力だ。
 目に見えず、耳にも聞こえないことは、もはや想像する他ない。
 例えば予想もしていなかった治安悪化の原因とか、もっと卑近な所では、目の前にいる
人の気持ちとか。
 この場合の想像力とはつまり、手持ちの情報から段階を追って、発展的に推論の枝を伸
ばしていく力に他ならない。自分の中の常識とか、あるいは思い込みから、自由でなけれ
ばならない。

 とはいえ。

 とはいえ、限界がある事も事実だ。慣れや意識の持ちようどうにかなる面がある一方で、
どうしても必要な思考の飛躍に手が届かないという場合が、往々にして存在する。
 結局、何もかもを想像力一つでどうにか出来るわけではない。ボクたちとNWの人たち
とにある溝が、完全に埋まることなど、ありはしない。

 だからボクは、こう考えることにしている。
 溝の存在はそれとして、立ち位置の違いを、弱点ではなく、武器であると考えよう。
 NWに住む人たちにしか見えない事、出来ない事があるならば、その逆もまた然りであ
るはず。ボクたちにしか見えない情報を生かし、ボクたちにしか出来ない方法で、藩国を
支えよう、と。
 勿論、だからといって情報収集の努力を怠っていいわけではない。これは役割分担の話
なのだから。設定国民と、ボクたちが、それぞれの立場から、出来る最善を目指す、とい
う。

 ボクはさらに思考を進める。問題は設定国民の側が考える最善を、如何に反映させるか
だけれども、そこはPCACEの火足水極藩王や、じょり丸様にお任せしよう。トーゴさ
んや、吹雪先生、先生の奥さんもいる。もちろん、みらのちゃんに亜細亜ちゃんも。
 あとは耳を澄まし、目を凝らし、そして、想像することを忘れなければ、きっと大丈夫。

 キーボードを打つ手が止まる。コキコキと肩を鳴らす。
 今日はこのくらいにしよう。
 モニタの中、NWへと続くウィンドウから視線を外すと、僕は、部屋の窓から第七世界
の空を見上げた。

   




後ほねっこの王城からは、秋になれば黄金色の絨毯が広がったような大地が一望できる。
特に藩王の執務室からはその光景がよく見えた。
収穫のこの時期、その景色を見ながらようやく一息がつけるのだ。
その光景は、今年も国民が無事に年を越えることができた証とも言えた。


長く厳しい冬を越え、春を喜び、短い夏を過ぎてようやく訪れるこの光景。
その集大成とも言えるのがこの時期であった。
作物の実りを喜び、一年の労をねぎらう。
市場は農作物で活気に溢れ、ほねっこの各地で収穫の祭りが開かれる。
民は、太陽に祈り、大地に祈り、風に、水に感謝を捧げる。
出来た作物は余すことなく頂く。

誰からも教えられるわけでもなく、ほねっこの農民たちはそうした感謝を言葉以外の方法
で示した。
そして、一日の終わりには、後ほねっこ王城のある方向を静かに見あげる。
場所によっては王城など見えなかったりするが、それは関係なかった。
城には王が居る、王が暮らしを守ろうと尽力してくれている。
かつて焦土と化し、国は幾度も戦火に襲われた時、
藩王を始めとしたほねっこ政庁は何よりも先に農業の復興に力を注いだ。
国の民たちを飢えさせたくない、民に混じり馬車馬のように働いていたことをほねっこの
農民たちは覚えている。
だから、多少勇ましさに欠けると冗談混じり言いながらも民は王を支持していた。


   



  ***

NW全体を襲った食料価格の暴落は農業中心の後ほねっこにも暗い影を落としていた。
後ほねっこ男爵領の損害推定、800億。
国家予算の何十年分よ、これと誰もが言いたくなるような金額だった。

消費者から見れば、主食のひとつである農産物が安くなるのは財政的にも歓迎したいとこ
ろだが、生産している農家から見れば頭を抱えるしかない。
ある程度の数を生産しなければ収入に繋がらず、かといってこれ以上の農地を広げるには
資金も人員も足りない。農業だけでは生活は困窮するため、兼業農家が増加。それに伴い
、後継者の減少、生産の低下……。土地を広げるにしろ、新たに開墾しなければならずこ
れと言って八方塞がりともいえる。
それでも、手をこまねいている訳にはいかない。
迅速に対応せねば、これは冬の寒さ以上の脅威へとなるだろう。1日遅れれば、それだけ
被害は広がる。

どこまでやれるかは分からない。だが、何もしないよりはましだ。
これ以上の涙は見たくないのだ。

机の上に積み上げられた書類の山に目を向けた。
片付けるよりも早く山のように積もっていく、それはまるでこの国の冬の雪のように。
その一枚一枚は民の声であり、願いでもある。何一つとして疎かにすることは許されない。
されど、藩王一人の身では成せる事など限られている。
ほねっこが藩国として機能することが出来るのは摂政のユーラを始めとした有能なスタッフ
に支えられているからだ。
その点において、この国はどこのどんな国にもひけを取らないだろう。

日が沈み、夜の帳が外の景色を覆う。
国民は夕餉を楽しく家族で囲んでいるだろう。その後は一日の出来事を語り合っているに
違いない。
城下に灯る明かりの一つ一つを眺めながら、明日がいい日であるようにと藩王は書類の山
へと戻るのであった

   



【おまけ】
「何仕事しないで外眺めてるんですか」

背後から、聞き覚えのある声がする。
恐る恐る振り返ればいつもの面子が藩王の背後に立っていた。にこりと微笑んでいる姿が、
笑顔がある意味怖い。
「ダンジョン探索に行こうとか、思ってませんか?」
怖い、笑顔が怖い。あくまでもにこやかなのに、後ろからはブリザードが吹き荒れている。
流石はブリザードパイロットを着用しているだけのことはある(※関係ありません)
「ばっかだなー、そんなことあるわけないじゃないか」
精一杯の弁解が、今はとても痛々しく見える気がするがそれどころではない。
「えっと……お仕事が溜まってるんですけど」
「迷宮に行ってた間の分とか」
「決済の書類とか」
「とりあえず山のように案件は溜まってるんですけど」
「わふっ(あそんでー)」
ああ、約一匹を除いた皆の笑顔がにこやかすぎて尚怖い。
「ぷ、PLACEは働いてるだろうに……」
「確かに働いてますけど、元は藩王ですから」
元が同じということは、結局のところ……やっぱり同じなのである。藩王がくりと肩を落と
す。

「今日はしっかり働いてもらいましょう」
「ですっ」

あ~れ~と城の方向から空に響き渡る声に、周辺の住民たちが顔を上げるが、「いつものあ
れか」と思いながら再び日常へ戻るのであった。

   



一般性能開示

L:善政(後ほねっこ版) = {
 t:名称 = 善政(後ほねっこ版)(イベント)
 t:要点 = 城,静かに見上げ,働く人々
 t:周辺環境 = 国土
 t:特殊 = {
  *善政(後ほねっこ版)のイベントカテゴリ = ,,藩国イベント。
  *善政(後ほねっこ版)の位置づけ = ,,一般イベント。
  *善政(後ほねっこ版)の内容1 = ,,善政によって国民は幸福に暮らす。
  *善政(後ほねっこ版)の内容2 = ,,善政によって国民は増加を開始する(3ターンの間+10%される)。
 }
 t:→次のアイドレス = 善政の輸出(イベント),迷宮の賢者(ACE),国民から贈られた宝重(イベント),グレートエンディングチャレンジ?(イベント)
}

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