HA構成は、機器の待機状態や、構成する目的によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴とあわせて、メリット・デメリットを簡単に説明します。
コールドスタンバイ構成
コールドスタンバイ構成は、最も基本的なHA(High Availability)構成の一つで、最小限のリソースで高い可用性を実現します。稼動系(アクティブ)と待機系(パッシブ)の2つのシステムが存在します。「稼働系」が通常のサービス提供を担当し、「待機系」は稼動していません。
そして、システムに何らかの障害が発生した場合に、待機系を手動でまたは自動で起動し、役割を引き継ぎます。これをフェールオーバーと呼び、パッシブシステムが新たなアクティブシステムとなります。それ以降、元のアクティブシステムは修復されるまで非アクティブ化されます。
コールドスタンバイ構成のメリットは、待機系の電源がオフのため、必要なエネルギーコストが抑えられ、運用コストを低減できます。また、構成がシンプルなため、運用管理が容易です。
一方、デメリットとしては障害発生時、待機系の起動やデータ・設定の引き継ぎに時間がかかります。これはサービスのダウンタイムを引き起こす可能性があります。また、自動フェールオーバーが設定されていない場合、管理者が手動で待機系を起動する必要があります。
以上のように、コールドスタンバイ構成はシンプルながらも効果的なHA構成です。しかし、その特性からダウンタイムが許されない環境には必ずしも適していないことを理解しておくことが重要です。
ホットスタンバイ構成
ホットスタンバイ構成では、アクティブシステムとパッシブシステムが存在しますが、パッシブシステムの電源はオンになっており、アクティブシステムと同じ設定やデータが保持されています。パッシブシステムは待機状態であり、アクティブシステムが障害でダウンした場合には、ほぼ瞬時にシステムの運用を引き継ぐことができます。これをフェールオーバーと呼びます。
メリットは、障害が発生した場合でも、待機系がすでに稼働状態であるため、迅速にシステムの運用を引き継ぐことができます。これは、ダウンタイムを最小限に抑えることが重要なシステムにとっては非常に大きな強みです。また、待機系はアクティブ系とデータをリアルタイムで同期しているため、フェールオーバー時にデータの不整合が発生するリスクが低減します。
デメリットは、待機系のシステムが常時稼働しているため、運用コスト(電力、冷却、メンテナンス等)が増加してしまうことです。また、データや設定の同期を保つための追加の設定や管理が必要となり、システムの構成が複雑になる可能性があります。
ホットスタンバイ構成は高速なフェールオーバーとデータの一貫性を保証する一方で、高い運用コストと複雑な構成を必要とすることが特徴です。したがって、これらの特性を理解し、それらがビジネス要件と合致する場合に採用することが重要です。
ウォームスタンバイ構成
ウォームスタンバイ構成は、コールドスタンバイとホットスタンバイの中間に位置する構成です。待機系はOSだけを起動しておき、切り替え時にアプリケーションなどを含めて起動する構成です。メリット・デメリットもコールドスタンバイとホットスタンバイの中間に位置しており、システムの種類によって使い分けるとよいでしょう。
負荷分散構成
負荷分散構成は、複数のシステムが一緒に動作し、インバウンドリクエストを分散させることで全体の処理能力を向上させる方法です。この構成では全てのシステムが稼動系であり、負荷を均等に分散することでシステム全体のパフォーマンスを向上させることを目指します。
負荷分散構成は、複数のシステムが一緒に動作し、インバウンドリクエストを分散させることで全体の処理能力を向上させる方法です。この構成では全てのシステムが稼動系であり、負荷を均等に分散することでシステム全体のパフォーマンスを向上させることを目指します。
メリットは、複数のシステムで均等に処理することで、システム全体のパフォーマンスを向上させることができることと、1台のシステムが故障しても、他のシステムが引き続き稼働し、システム全体の稼働を続けることが可能です。
デメリットは、適切な負荷分散を実現するためには、最適な負荷分散アルゴリズムの選択とそれに伴う設定が必要なことと、各システム間でデータの一貫性を保つために追加の手段が必要になることがあります。
負荷分散構成は、高いパフォーマンスと可用性を求めるシステムに対して有効な選択肢ですが、運用の複雑性も伴います。そのため、システムの要件と運用能力を考慮して、適切な構成を選択することが重要です。
DR構成
DR(Disaster Recovery)は災害復旧を意味します。DR構成は自然災害が発生しても可用性を維持するための構成です。システムを構成するコンピューターを異なる場所・地域に用意する点に特徴があります。(例えば稼動系となるシステムを東京、待機系となるシステムを大阪、というようにシステムを異なる地域に設置します。)
地震などの自然災害が多い日本においては、DR構成も可用性を維持するために必要不可欠な要素の1つです。
HA構成の種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
アクティブ-アクティブ構成 | 複数のサーバーが同時に稼働し、負荷分散を行う。 | 高可用性と負荷分散が可能。システム全体のパフォーマンス向上。 | 構成が複雑で、導入コストが高い。 |
アクティブ-スタンバイ構成 | 一台のサーバーが稼働中で、もう一台が待機。稼働中のサーバーに障害が発生した場合、待機中のサーバーに切り替える。 | シンプルな構成で管理が容易。障害時のダウンタイムが短い。 | リソースの無駄が多く、待機サーバーが通常時には無駄になる。 |
負荷分散クラスタ構成 | 複数のサーバーにトラフィックを均等に分散させる。 | 高可用性とスケーラビリティが高い。トラフィックの効率的な分散が可能。 | 構成と管理が複雑。負荷分散機能のコストがかかる。 |
冗長化構成 | メインの機器と予備の機器を配置し、障害発生時に予備の機器に切り替える。 | シンプルで運用コストが低い。確実な可用性の確保。 | 障害時の切替に時間がかかる場合がある。 |
構成の種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
ホットスタンバイ構成 | 本番用と同じ環境を常に同期し、障害時に瞬時に切り替え。 | 障害発生時のダウンタイムがほぼゼロ。データ損失が少ない。 | 構成と運用コストが高い [4]。 |
コールドスタンバイ構成 | 予備の機器を停止状態で待機させ、障害時に起動。 | コストが低い。運用がシンプル。 | 障害発生時の切替に時間がかかり、ダウンタイムが発生する [1]。 |
ウォームスタンバイ構成 | 待機系のOSを起動状態にし、本番用のデータを定期的に同期。 | コールドスタンバイよりもダウンタイムが短い。コストと可用性のバランスが取れている。 | ホットスタンバイよりダウンタイムが長く、データ損失の可能性がある [3]。 |
DR(ディザスタリカバリ)構成 | 災害発生時にシステムを迅速に復旧するためのバックアップ構成。ウォームスタンバイやコールドスタンバイで事前に環境を準備。 | 災害時のシステム継続が可能。企業全体のリスク管理が向上。 | 初期導入と運用にコストがかかる。通常時の運用が複雑になることがある [2]。 |