▽人物状況(左近&右近除く)
生存:九条直人、九条英名、坪田孝明
死亡:九条秀明、九条孝栄、九条明紀
冒頭の推理
孝明がタイマーをセットし、共犯の明紀が太鼓の撥落としにより時間調整を担当。
しかし、ボーガンが発見された事でトリックが明らかに。
口封じのために明紀を殺害した後、全てを直人の仕業にするため矢文で呼び寄せた。
だが、薫子がいた事でまたも計画が狂い、車で逃走を図るも、酔っていた上に逮捕される恐怖が重なり、事故を起こし死亡。
……というのが薫子の推理。だが孝明と明紀を結びつける決定的要素は曖昧なまま。
葬儀
九条家では秀明と孝明の葬儀が行われていた。喪主を務めるのは一家で唯一残された英名。
父と義兄の遺志を継ぐべく、九条流二代目として舞い続ける意向を固める。
そんな中、左近はあまりに事が上手く進み過ぎていると疑問に思う。そして、執事・坪田の不審な表情も気にかかる…。
それぞれの思い
弟子に稽古をつける英名を見守る直人達。直人は薫子に正式にプロポーズし、薫子もそれを受諾。
その様子を陰から見ていた左近。薫子が嫁いでしまうであろう事に寂しさを隠せないながらも、彼は屋敷の外へ歩き出す。
未だ明かされぬ謎を解くために…。
般若面の謎
屋敷に行く途中襲い掛かった般若面、そして明紀殺害後に林の中で舞う般若面。
木々に絡みついたピアノ線を発見した後、左近は九条家の屋敷の屋根でも同じものを発見する。
滑車を使い、移動した後、車で逃走した可能性もあるが、左近と薫子がすぐに追いかけた上、坪田がすぐに警察に連絡を入れており、車に乗り込む時間があったのかが微妙なところ。
そんな中、左近は坪田の姿を見つける。
坪田の告白
部屋で何かを物色しているところを左近に見つかった坪田。
部屋の整理をしていたという言い訳が通じるはずもなく、左近は彼に真犯人を知っているのかと問う。
坪田が差し出したのは一枚の写真。そこに映っているのは英名と明紀だった…?!
英名の過去
血の涙を流す般若面を見た時に坪田が漏らした「10年前の悲劇」について坪田は語り始める。
正妻との間に生まれた英名を、当初は迎え入れるつもりはなかった秀明が急遽彼を迎え入れる事にしたのは、二代目を継ぐとされていた孝明に才能がない事を悟ったためだった。
しかし、九条の家柄を保つためにも、妾であった母親まで九条家に連れてくる訳にはいかず、母子は引き離れてしまう。
以降、英名は母と会う事も許されず、能楽師としての英才教育を受ける日々を過ごしていた。
そして10年後、子を取り上げられた抗議として、何と英名の母が舞台の上で頸を掻き切り自殺。
その事で英名が秀明を恨んでいたという坪田の話を聞き、薫子は一連の事件が英名の復讐劇であったと確信する。
新たな惨劇
直ちに英名の元へ向かおうとしていた薫子だが、その途中、英名を呼ぶ直人の声がする。
直人のいた先には、崖から落ちた英名の転落死体が…。
薫子の言うように、良心の呵責に耐えきれなかった事による覚悟の自殺なのか、それとも…。
別離
九条家で多くの人が死んだ中、恩を返さぬまま自分だけ幸せになっていいのかと悩んだ直人。
秀明への恩返しとして九条流を立て直す事に専念するため、薫子との結婚を事実上破棄する事を選ぶ。
だが、薫子への想いは変わらず、今夜別れとして薪能を舞うと約束する。
去る途中に会った左近にも舞を見てほしいと頼む直人だが、右近との握手の際に何やら痛みを感じたようで…。
薪能
薫子が一人客席で見守る中、舞台に現れた直人だが、その時般若面から血の涙が──!
そこへやって来たのは左近と右近。二重三重に仕掛けられていた謎が解けたという左近に、薫子は戸惑いを隠せない。
腹話術によって右近に宿った明紀が、全ては直人が仕組んだ事だと暴露する。
真実
全ては直人が九条流を乗っ取るために仕組んだ事だったと断定する左近。
第一の殺人において、ボーガンとタイマーを使ったトリックが用いられたかと思われたが、コンマ何秒の単位で正確な時間を知る事は不可能。
実は共犯の明紀にも実際の計画は知らされていなかった。
第二の殺人は口封じのため。直人は明紀殺害後に何食わぬ顔で矢文を持って薫子の元へ赴き、彼女に能舞台へ行かせ、先回りして般若面として姿を現す。
左近達の眼を森の中に向けるため、人形に般若面の格好をさせ、屋敷の屋根からピアノ線を引き戻す事で人形を移動させた。
その証拠として、立ち上がる直人を支える際に彼の手を見た時にはなかったピアノ線の傷が、・薪能の項では手に残っている。
この後、坪田が酒で泥酔させた孝明を車に乗せ、沢まで移動した後、転落事故に見せかけ殺害。第一の殺人で、ボーガンの矢を放ったのも彼である。
坪田が共犯だという決定的証拠は、彼が左近に見せた英名と明紀の写真。
彼らが来ているのは能の舞台で使用する装束であり、直人が演出したNYでの舞台で、二人が共演した時のものでもある。
当時のパンフレットにも先程の写真と同様の写真が載っており、これを直人や坪田が把握していなかった事はまずあり得ない。
直人の動機
直人が犯人だったと信じられない薫子に対し、直人は普段の彼とは思えぬ残忍な表情を見せる。
彼は、刑事である薫子をアリバイ証人に仕立て上げるべく、見合いを持ちかけたのだ。
実力も内弟子からの人望も自分の方が上なのに、家元制度という慣習上、跡を継げず、後継者の下にいなければならない事に納得できない事が殺害動機だった。
それに続くように、坪田も動機を告白。40年も仕えていながら、秀明・孝明はおろか、英名すら自分を人間扱いしなかったというのが、彼が直人に加担した理由なのだという。
薫子に話していた新芸術独立に関しても、九条流という大看板があればこその話であり、無理に独立すれば秀明がどんな手段を使ってでも潰しに懸かるのは必然だという直人の本音に、薫子は動揺を隠せない。
直人が九条家を継ぎ、坪田が実務面を取り仕切る予定だったが、薫子のせいで計画が狂ったと言う直人を、思わず平手打ちしていた薫子。
さっさと手錠を掛けたらどうだと言われ、動揺しつつも彼を逮捕したのだった。
本当の想い
どうして薫子に対し、あのような態度をとったのか。
パトカーに乗る直前に左近の発した問いに、直人は答える。悪は悪のままの方がいいだろう、と──。
必要以上に悪ぶったのは、利用した薫子に対するせめてもの優しさだったのだろうと左近と右近は悟る。
今回の件で落ち込んでいるのはないかという右近に対し、男なんて星の数ほどいるのだからさっさと次の相手を見つけると、普段通りの調子の薫子。
しかし、彼女は左近達を残し一人車を走らせる。その目からは一筋の涙がこぼれていた…。
最終更新:2010年02月09日 02:54