第一話 <必然のデアイ>
爆発。そして轟音が、学園の一角を包んだ。
その爆炎の中から、きていた黒いマントをぼろぼろにした金髪の少女と、ところど
ころを損傷した、ロボット少女が飛び出る。
ロボット少女……茶々丸が、事務的な声で、金髪の少女……エヴァンジェ
リンに言う。
「すいません、マスター。駆動系をやられました。どうやら、戦闘行動をとる事は
難しいようです。」
エヴァが、思わず叫んだ。
「くそっ、一体なんだというのだ!」
突如現れた、謎の敵。紅い髪の毛、そして紅い瞳の、一切感情を感じることが
できない、青年。
そして、その力に、先ほどから翻弄され続けている。
ふと、壁のように立ち込める爆炎に、トンネルのような穴が開いた。そして、そこ
から長身のほっそりとした、紅い髪と瞳の青年が現れる。
彼は、エヴァと茶々丸のすぐ前まで歩いてくると、かなり無愛想な声で言った。
「……悪いが、一緒にきてもらうぞ。真祖の吸血鬼、『闇の福音』エヴァンジ
ェリン・A・K・マクダウェル。」
無論、言われた通りに従うエヴァではない。
「ふざけるなよ!『リク・ラク・ララック・ライラック!氷の精霊29頭!集いきたり
て敵を討て!魔法の射手、氷の29矢』!!」
すぐさま魔法の氷の矢を精製、すぐさま青年に打ち込んだ。のだが……
「ふん、こんなものか。」
「な……なんだと……」
それらはすべて、彼に当たる前に、蒸発して消え去る。
その現象、そして今までの戦況から、エヴァはすぐさま判断した。もう、自分だ
けではどうしようもない。そして、傍らに立つすでにぼろぼろの自分の従者に、
言った。
「茶々丸。」
「なんですか、マスター?」
「おそらく坊ややタカミチ、学園長のジジイも、このことに気づいているだろう。私
がここは食い止めるから、奴らに伝えろ。『侵入者はかなり手ごわい』……
とな。」
「しかし、マスター……」
「いいから、早くしろ!」
躊躇する茶々丸を、エヴァは大声でどなった。
茶々丸は一瞬躊躇したもの、すぐに決心して、言った。
「わかりました、マスター。」
そして、背中のジェットをフル稼働させ、宙に浮く。飛行機が飛び立つ瞬間の
ようなよく響く音が、あたりに火とがっていく。
「マスター……お気をつけて。」
「ふん……私を、誰だと思っている?」
自分の従者の気遣いの言葉に、エヴァは振り向いて笑って見せた。
「私は、『闇の福音』、エヴァンジェリンだぞ。そう簡単にくたばってたまるか。」
ターゲットと接触して、んで保護したみてえだな。なのちゃん。」
まるでアニメの機動戦艦を思わせるような部屋で、一人の女性が、椅子の上
で胡坐をかいて座っている。
175センチと、女性にしては背は高い。黒い髪は肩までの長さに切りそろえら
れており、身体には青いスーツを纏っている。
そんな彼女の言葉に答えるのは、傍らに立つ背の高い青年だった。
「ふむ、どうやらそのようだ。」
知的な雰囲気を漂わせる端正な顔立ち。髪の毛はまるで夜の闇のように黒
く、190センチ近くありそうな、巨大な、しかし細い身体には漆黒のスーツを
纏っている。
「ん~、どんな娘(こ)かな、あのクロウリードの後継者ってよ?」
「………さあな。」
笑みを浮かべながら疑問を述べる女性に青年は無表情で答えた。
青年の名を、紅天元秀一(こうてんもとしゅういち)といい、女性の名を、蒼地
竜刹木(そうちりゅうさつき)といった。
『あ、もしもし?』
ピピッ、
という電子音に続いて、一人の少女の声が、この部屋を形成している一部で
もある機械から発せられた。
それに応対するのは、刹木の役目である。秀一は、昔から無口、無愛想なの
で、たいていこういう風に人付き合いをするのは、彼女なのだ。
「はいはい、こちら時空管理局万能戦闘母艦弐番艦“ハガネ”です……ああ、
なのちゃんか~」
『はい。……ターゲットの保護に成功しました。いまからそちらに向かいます。あ
と五分くらいでつくと思うんで……』
「はいはい、わかったよ~、んじゃ気をつけてね~」
と、満面の笑みを浮かべた刹木がそういい終えると同時に、少女からの通信
は切れた。
それから半秒後、
「ははは、楽しみだな~、本当にどんな娘なんだろうな~」
「知らん。」
と、二人は先ほどとほぼ同じやりとりを交わした。
「へ、時空犯罪者?」
と、のび太はドラえもんの言葉に対して、抜けた声で返した。
対するドラえもんは、短い腕を組んで、頷いている。
「うん。なんでも、タイムパトロールのタイムマシンが、大量に奪われる事件とか
が起きているらしくて……ほかに、特に目立ってるのは、色んな時代にいる未
来の世界のロボットから、秘密道具を無理やり奪ったりしていることかな。」
「……で、その犯人が、いまこの時代にいるの?」
いつになくのび太が鋭い疑問を口にする。どういうわけか、こういう重大な事件
が起きるときだけは、勘が鋭くなるのだ。
普段もこれならいいのに……と内心思いながら、その思いを外に出すことなく、
ドラえもんはとりあえずその問いに答える。
「そうみたいだね。とりあえず、僕だけじゃなくて、この時代にいる全部のロボット
に、とりあえず警戒するように言ってるみたいだよ。」
「へえ~……」
と感心したようにつぶやいて、のび太はそのまま寝転がった。そして、その体
勢のまま、ドラえもんに問う。
「じゃあドラえもん、とりあえずいろいろ準備したほうがいいんじゃないの?」
それには、ドラえもんも同意する。というか、最初から考えていたことである。
「そうだね。とりあえず、使えそうな道具を集めようか……」
と言いながら、短い手をポケットの中に突っ込んだ。
さくらと、応急処置を終えた小狼が案内されたのは、実に和風な部屋だった。
床には畳がしかれ、壁には掛け軸がかかっており、さらには部屋の中心には、
ちゃぶ台が「で~ん」と置かれている。これが、さきほど見た巨大戦艦の内部
だというのだから、さくらも小狼もびっくり仰天である。
先ほどから自分たちを案内していたなのはの話によれば、時空管理局は、さく
らの世界を含んださまざまな世界の過度の干渉を抑えたりするのが仕事らしい
が、その大層な仕事の内容のわりに、この戦艦の内装は、かなり趣味が爆発
しているように思われる。
なのはは、右手で敬礼しながら、ちゃぶ台のところで正座している男と、その隣
に行儀悪く胡坐をかいて座る女性に、事務的な口調で言った。
「高町なのは、ただいま帰還しました。」
「ふむ。ご苦労だったな。」
男はそう答えながら、なのはの隣に立つさくらと小狼を見る。
「お、やっぱ可愛いじゃんか!」
と、隣の女性が言っているのは無視して、男は立ち上がってさくらと小狼のもと
へ歩く。その顔は、完全に無表情である。
「俺は時空管理局提督の、紅天元秀一だ。君たちが木之本桜と、李小狼
だな?」
「あ、はい!」
「……」
秀一の言葉に、さくらは慌てて返事をして、小狼は無言で頷く。どちらにせよ、
190センチ近い身長を持つ秀一の顔を見上げる形にはなっているが。
「とりあえず、立ち話もなんだ。あちらに座るといい。」
と親指でちゃぶ台を指しながら言う秀一に、とりあえずさくらと小狼はしたがっ
た。
爆発。そして轟音が、学園の一角を包んだ。
その爆炎の中から、きていた黒いマントをぼろぼろにした金髪の少女と、ところど
ころを損傷した、ロボット少女が飛び出る。
ロボット少女……茶々丸が、事務的な声で、金髪の少女……エヴァンジェ
リンに言う。
「すいません、マスター。駆動系をやられました。どうやら、戦闘行動をとる事は
難しいようです。」
エヴァが、思わず叫んだ。
「くそっ、一体なんだというのだ!」
突如現れた、謎の敵。紅い髪の毛、そして紅い瞳の、一切感情を感じることが
できない、青年。
そして、その力に、先ほどから翻弄され続けている。
ふと、壁のように立ち込める爆炎に、トンネルのような穴が開いた。そして、そこ
から長身のほっそりとした、紅い髪と瞳の青年が現れる。
彼は、エヴァと茶々丸のすぐ前まで歩いてくると、かなり無愛想な声で言った。
「……悪いが、一緒にきてもらうぞ。真祖の吸血鬼、『闇の福音』エヴァンジ
ェリン・A・K・マクダウェル。」
無論、言われた通りに従うエヴァではない。
「ふざけるなよ!『リク・ラク・ララック・ライラック!氷の精霊29頭!集いきたり
て敵を討て!魔法の射手、氷の29矢』!!」
すぐさま魔法の氷の矢を精製、すぐさま青年に打ち込んだ。のだが……
「ふん、こんなものか。」
「な……なんだと……」
それらはすべて、彼に当たる前に、蒸発して消え去る。
その現象、そして今までの戦況から、エヴァはすぐさま判断した。もう、自分だ
けではどうしようもない。そして、傍らに立つすでにぼろぼろの自分の従者に、
言った。
「茶々丸。」
「なんですか、マスター?」
「おそらく坊ややタカミチ、学園長のジジイも、このことに気づいているだろう。私
がここは食い止めるから、奴らに伝えろ。『侵入者はかなり手ごわい』……
とな。」
「しかし、マスター……」
「いいから、早くしろ!」
躊躇する茶々丸を、エヴァは大声でどなった。
茶々丸は一瞬躊躇したもの、すぐに決心して、言った。
「わかりました、マスター。」
そして、背中のジェットをフル稼働させ、宙に浮く。飛行機が飛び立つ瞬間の
ようなよく響く音が、あたりに火とがっていく。
「マスター……お気をつけて。」
「ふん……私を、誰だと思っている?」
自分の従者の気遣いの言葉に、エヴァは振り向いて笑って見せた。
「私は、『闇の福音』、エヴァンジェリンだぞ。そう簡単にくたばってたまるか。」
ターゲットと接触して、んで保護したみてえだな。なのちゃん。」
まるでアニメの機動戦艦を思わせるような部屋で、一人の女性が、椅子の上
で胡坐をかいて座っている。
175センチと、女性にしては背は高い。黒い髪は肩までの長さに切りそろえら
れており、身体には青いスーツを纏っている。
そんな彼女の言葉に答えるのは、傍らに立つ背の高い青年だった。
「ふむ、どうやらそのようだ。」
知的な雰囲気を漂わせる端正な顔立ち。髪の毛はまるで夜の闇のように黒
く、190センチ近くありそうな、巨大な、しかし細い身体には漆黒のスーツを
纏っている。
「ん~、どんな娘(こ)かな、あのクロウリードの後継者ってよ?」
「………さあな。」
笑みを浮かべながら疑問を述べる女性に青年は無表情で答えた。
青年の名を、紅天元秀一(こうてんもとしゅういち)といい、女性の名を、蒼地
竜刹木(そうちりゅうさつき)といった。
『あ、もしもし?』
ピピッ、
という電子音に続いて、一人の少女の声が、この部屋を形成している一部で
もある機械から発せられた。
それに応対するのは、刹木の役目である。秀一は、昔から無口、無愛想なの
で、たいていこういう風に人付き合いをするのは、彼女なのだ。
「はいはい、こちら時空管理局万能戦闘母艦弐番艦“ハガネ”です……ああ、
なのちゃんか~」
『はい。……ターゲットの保護に成功しました。いまからそちらに向かいます。あ
と五分くらいでつくと思うんで……』
「はいはい、わかったよ~、んじゃ気をつけてね~」
と、満面の笑みを浮かべた刹木がそういい終えると同時に、少女からの通信
は切れた。
それから半秒後、
「ははは、楽しみだな~、本当にどんな娘なんだろうな~」
「知らん。」
と、二人は先ほどとほぼ同じやりとりを交わした。
「へ、時空犯罪者?」
と、のび太はドラえもんの言葉に対して、抜けた声で返した。
対するドラえもんは、短い腕を組んで、頷いている。
「うん。なんでも、タイムパトロールのタイムマシンが、大量に奪われる事件とか
が起きているらしくて……ほかに、特に目立ってるのは、色んな時代にいる未
来の世界のロボットから、秘密道具を無理やり奪ったりしていることかな。」
「……で、その犯人が、いまこの時代にいるの?」
いつになくのび太が鋭い疑問を口にする。どういうわけか、こういう重大な事件
が起きるときだけは、勘が鋭くなるのだ。
普段もこれならいいのに……と内心思いながら、その思いを外に出すことなく、
ドラえもんはとりあえずその問いに答える。
「そうみたいだね。とりあえず、僕だけじゃなくて、この時代にいる全部のロボット
に、とりあえず警戒するように言ってるみたいだよ。」
「へえ~……」
と感心したようにつぶやいて、のび太はそのまま寝転がった。そして、その体
勢のまま、ドラえもんに問う。
「じゃあドラえもん、とりあえずいろいろ準備したほうがいいんじゃないの?」
それには、ドラえもんも同意する。というか、最初から考えていたことである。
「そうだね。とりあえず、使えそうな道具を集めようか……」
と言いながら、短い手をポケットの中に突っ込んだ。
さくらと、応急処置を終えた小狼が案内されたのは、実に和風な部屋だった。
床には畳がしかれ、壁には掛け軸がかかっており、さらには部屋の中心には、
ちゃぶ台が「で~ん」と置かれている。これが、さきほど見た巨大戦艦の内部
だというのだから、さくらも小狼もびっくり仰天である。
先ほどから自分たちを案内していたなのはの話によれば、時空管理局は、さく
らの世界を含んださまざまな世界の過度の干渉を抑えたりするのが仕事らしい
が、その大層な仕事の内容のわりに、この戦艦の内装は、かなり趣味が爆発
しているように思われる。
なのはは、右手で敬礼しながら、ちゃぶ台のところで正座している男と、その隣
に行儀悪く胡坐をかいて座る女性に、事務的な口調で言った。
「高町なのは、ただいま帰還しました。」
「ふむ。ご苦労だったな。」
男はそう答えながら、なのはの隣に立つさくらと小狼を見る。
「お、やっぱ可愛いじゃんか!」
と、隣の女性が言っているのは無視して、男は立ち上がってさくらと小狼のもと
へ歩く。その顔は、完全に無表情である。
「俺は時空管理局提督の、紅天元秀一だ。君たちが木之本桜と、李小狼
だな?」
「あ、はい!」
「……」
秀一の言葉に、さくらは慌てて返事をして、小狼は無言で頷く。どちらにせよ、
190センチ近い身長を持つ秀一の顔を見上げる形にはなっているが。
「とりあえず、立ち話もなんだ。あちらに座るといい。」
と親指でちゃぶ台を指しながら言う秀一に、とりあえずさくらと小狼はしたがっ
た。