055 戦う理由
「♂アルケミさんは……このゲームに乗る気ですか?」
傷の処置を終えて服を調えた♀クルセが、ふと真顔に戻って切り出す。
「あー……俺がその気だったら、まず無防備な君を殺してると思うがね」
「真面目に答えてください!」
ぴしゃりと言われ、♂アルケミはわしわしと髪をかき乱す。
彼とてこんな場所で死にたくはない。むろん冒険者としては何度も死線をくぐり抜けてきたが、
このゲームはそれとは根本的に異なっている。このゲームでの死者は「蘇生できない」
――つまり、「本当に」死ぬ。生きたければ、勝ち残るしかないのだ。
「わからねぇな……どうするのがいいのか。むざむざ殺されるのはごめんだが、
奴らの思惑に乗るってのも癪だ」
それは彼のプライドの問題でもあったし、処刑された父への裏切りであるとも思った。
一瞬の沈黙の後、♀クルセが続ける。
「私は、さっきあの人に殺されそうになっても、何もできませんでした。どうしてこんな、
無理やり殺し合わなくちゃいけないんだろうって、そればかり考えて……」
膝に置かれた手が、ぎゅっと固く握られる。
「でも……ここは、そういうところなんですよね。戦わなければ、生き残れない――」
「じゃあ君は、ゲームに乗るってことか?」
声に決意を感じ、♂アルケミはわずかに腰を浮かせる。いつでも動きに対応できるように。
しかし♀クルセの答えは違っていた。
「いいえ……私は、やっぱり殺し合いなんてできません。
でもその代わり、守るための戦いをします」
「守るため?」
「はい。私のように、殺す側になれない人も大勢いると思うんです。そんな人が何もできず
殺されたりしないように。そんな人を守るためなら……戦える気がします」
彼女は♂ケミをまっすぐに見すえ、言った。
「我らの力を必要とするものに応えよ。それが、クルセイダーの教えですから」
「そうか……」
♀クルセには、信仰という支えがある。それはある意味では逃げであるのかもしれないが、
♂アルケミは素直にそれを羨ましいとも思った。自分には、揺るぎ無い信念をもたらすもの
などあるだろうか? 世界の真理に至る錬金術の理念など、この場では何の意味もない。
とするならば、自分にとって拠り所たるのは――
(やれやれ……つくづく親父の影響から抜け出せないらしいな、俺は)
♂アルケミの顔に、苦笑が浮かぶ。
「俺はな……こんなゲームになんか、乗ってやらねえ」
自分に言い聞かせるように、その言葉を発する。
「俺が戦う相手は、このふざけたゲームを仕組んでる連中だ!」
傷の処置を終えて服を調えた♀クルセが、ふと真顔に戻って切り出す。
「あー……俺がその気だったら、まず無防備な君を殺してると思うがね」
「真面目に答えてください!」
ぴしゃりと言われ、♂アルケミはわしわしと髪をかき乱す。
彼とてこんな場所で死にたくはない。むろん冒険者としては何度も死線をくぐり抜けてきたが、
このゲームはそれとは根本的に異なっている。このゲームでの死者は「蘇生できない」
――つまり、「本当に」死ぬ。生きたければ、勝ち残るしかないのだ。
「わからねぇな……どうするのがいいのか。むざむざ殺されるのはごめんだが、
奴らの思惑に乗るってのも癪だ」
それは彼のプライドの問題でもあったし、処刑された父への裏切りであるとも思った。
一瞬の沈黙の後、♀クルセが続ける。
「私は、さっきあの人に殺されそうになっても、何もできませんでした。どうしてこんな、
無理やり殺し合わなくちゃいけないんだろうって、そればかり考えて……」
膝に置かれた手が、ぎゅっと固く握られる。
「でも……ここは、そういうところなんですよね。戦わなければ、生き残れない――」
「じゃあ君は、ゲームに乗るってことか?」
声に決意を感じ、♂アルケミはわずかに腰を浮かせる。いつでも動きに対応できるように。
しかし♀クルセの答えは違っていた。
「いいえ……私は、やっぱり殺し合いなんてできません。
でもその代わり、守るための戦いをします」
「守るため?」
「はい。私のように、殺す側になれない人も大勢いると思うんです。そんな人が何もできず
殺されたりしないように。そんな人を守るためなら……戦える気がします」
彼女は♂ケミをまっすぐに見すえ、言った。
「我らの力を必要とするものに応えよ。それが、クルセイダーの教えですから」
「そうか……」
♀クルセには、信仰という支えがある。それはある意味では逃げであるのかもしれないが、
♂アルケミは素直にそれを羨ましいとも思った。自分には、揺るぎ無い信念をもたらすもの
などあるだろうか? 世界の真理に至る錬金術の理念など、この場では何の意味もない。
とするならば、自分にとって拠り所たるのは――
(やれやれ……つくづく親父の影響から抜け出せないらしいな、俺は)
♂アルケミの顔に、苦笑が浮かぶ。
「俺はな……こんなゲームになんか、乗ってやらねえ」
自分に言い聞かせるように、その言葉を発する。
「俺が戦う相手は、このふざけたゲームを仕組んでる連中だ!」
青箱を開けると、がらがら、がちゃんと試験管や空きビンがあふれ出てきた。
錬金術師組合でも実験用に使っている特製のやつで、普通にぶつけたり落とした程度では
割れにくい。これでポーションでも作れればいいのだが、あいにくと今は材料がない。
それでも何かの役には立つだろう。どこかで材料を見つけられるかもしれないし。
それはそれとして、何か武器が欲しいところだ。もう1個を開ける。なにやら長いものが
出てきた。それは武器には違いなかったが……マイトスタッフだ。魔力を代償に
攻撃力を引き出すという代物だが、俺たちにはせいぜい棍棒みたいに使うしかない。
だがないよりはマシだろうと、これも持っていくことにする。
ビン類をかばんに詰め、マイトスタッフを腰にさす。
「で、本当に俺についてくるのか?」
「はい。あなただって、簡単に死なせるわけにはいきません。他にも守らないといけない人と
出会うまで、一緒に行かせてください。それに、本当に彼らと戦うつもりなら、仲間だって
大勢必要でしょう?」
「ありがとな……。じゃ、行くか!」
俺は俺のやり方で、徹底的に戦ってやる。敵はあまりに大きすぎて、
道半ばで倒れるかもしれない。戦っても、何も変わらないのかもしれない。
だが、親父を、俺たちを、否定した連中に何としても一泡吹かせてやる。それが、俺の戦いだ。
錬金術師組合でも実験用に使っている特製のやつで、普通にぶつけたり落とした程度では
割れにくい。これでポーションでも作れればいいのだが、あいにくと今は材料がない。
それでも何かの役には立つだろう。どこかで材料を見つけられるかもしれないし。
それはそれとして、何か武器が欲しいところだ。もう1個を開ける。なにやら長いものが
出てきた。それは武器には違いなかったが……マイトスタッフだ。魔力を代償に
攻撃力を引き出すという代物だが、俺たちにはせいぜい棍棒みたいに使うしかない。
だがないよりはマシだろうと、これも持っていくことにする。
ビン類をかばんに詰め、マイトスタッフを腰にさす。
「で、本当に俺についてくるのか?」
「はい。あなただって、簡単に死なせるわけにはいきません。他にも守らないといけない人と
出会うまで、一緒に行かせてください。それに、本当に彼らと戦うつもりなら、仲間だって
大勢必要でしょう?」
「ありがとな……。じゃ、行くか!」
俺は俺のやり方で、徹底的に戦ってやる。敵はあまりに大きすぎて、
道半ばで倒れるかもしれない。戦っても、何も変わらないのかもしれない。
だが、親父を、俺たちを、否定した連中に何としても一泡吹かせてやる。それが、俺の戦いだ。
<♂アルケミ>
現在位置:海岸から森へ(D-3)
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
外見特徴:BSデフォ・青(csm:4j0g50k2)
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る、ファザコン気味?、半製造型
現在位置:海岸から森へ(D-3)
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
外見特徴:BSデフォ・青(csm:4j0g50k2)
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る、ファザコン気味?、半製造型
<♀クルセ>
現在位置:海岸から森へ(D-3)
所持品:レイピア、青箱(未開封)
外見特徴:剣士デフォロング・黒(csf:4j0270g2)
備考:守る対象を探す(今は♂ケミに同行)、左肩と左足に軽症・右脇腹に負傷(応急処置済み)、
献身Vitバランス型
現在位置:海岸から森へ(D-3)
所持品:レイピア、青箱(未開封)
外見特徴:剣士デフォロング・黒(csf:4j0270g2)
備考:守る対象を探す(今は♂ケミに同行)、左肩と左足に軽症・右脇腹に負傷(応急処置済み)、
献身Vitバランス型
戻る | 目次 | 進む |