きしんえるべら:そうさくめも4
機神エルベラ:創作メモ4
★★★
永遠なる酒宴の月。10と2の日。 魚曜日。
甘い風の吹き渡る、のんびりとした黄金色の午後。
エルベラ西南、街を覆う結界【凍れる虹の橋】の境界付近。
雄大な空を往く鷹の目線になって大地を見下ろすと、
遥かな山の稜線に沿ってジグザグにうねる結界の根元に、
アリのごとく這いずる滑稽な人間たちが見えるだろう。
敵国ラグネロの地上軍だ。
灼熱の太陽の下、砂埃の舞う山中の悪路にむりやり大勢が犇めき、
皆が汗だくになって鎧と剣を身に纏い、
目の前に聳え立つ【壁】──シャボン玉に似た虹の結界──へと攻撃を加えている。
やけくそ気味な怒号。剣戟の音。飛び交う魔術の詠唱。
衝撃があるたびに結界はフラッシュし、正確にそのベクトルを反転させ拒絶する。
丸太で作られた攻城鎚が弾き返され横転する様などはいかにも無様だった。
だから──それを空中で見下ろしていた彼は、くつくつと笑った。
「…戯れに、いまの気持ちを正確に描写してみよう。
たとえば『壷中の穀物を握った為に拳が抜けなくなった猿』。
『鏡に映る自分の姿におびえ、必死になって威嚇する子猫』。
『目の前にさげられたニンジンを追いかけいつまでも走り続ける駄馬』……。
そうしたものを見た時に人類が覚える優越感。
軽蔑。軽い愛情。呆れた笑い──私の気持ちもまさにそれだ」
…つまり『バカみたいで笑える』と言いたいらしい。
雄大な空を往く鷹よりも上から目線の独り言。
わずかな
兵さえも連れず、
たったひとりで西の防衛線をまるごと引き受けた
メノウ男爵だった。
どこまでも明るく爽やかな真夏の空。
雲に近い場所で遊泳を楽しんでいる優雅な姿は、
しかし異様に不吉な暗黒の深淵の如き黒尽くめだ。
ちょっとした城砦よりも防御力の高い魔竜革の外套が
男爵の広い肩を彩っていて、
羽状に変化したそれが男爵の飛行を可能にしているらしい。
笑みを浮かべ澄ました顔の右眼には、万物を透視する魔法の片眼鏡が掛かっている。
白き貴族服の腰には地を裂く宝剣が。
胸元にはまもりのスカーフが。
空中を踏むつま先には炎馬の靴が。
上から下まで稀少品。
全身がレアアイテムの宝庫のごとき有様。
彼は“メノウ男爵を金に換算すればダイアル大陸が買える”と噂がたつほどの、
空前絶後のコレクターなのだ。
すごい人物なのである。
「くくっ…あのジーン卿の結界に挑む人間たちの、なんと哀れなことか!
この絶景を『徒労』と題して額縁に飾りたいほどだよ。愉快愉快。
ふはっ、また兵士がひとり崖から落ちているではないかw
よしよしひとりでは寂しかろう…風の魔術であと100人ほどごっそり落としてやるか…。
くくく!ほぉらガンバって這い上がるがいい。
諦めるなよ。もっと私を楽しませろ。
あと八万年くらい続けたら諸君らの地道な努力も実を結ぶかもしれんぞ?
──ふはっ、ふはははははっ!」
…。
すごい人物なのである。一応。
ひとしきり意地悪く笑った後、彼は「飽きた」の一言とともに七鍵守護神を発動させ、
あっさり地平線の果てまで続くアリの列を全滅させると、
親指を耳に、小指を口元にあてて(つまりは通信魔術を用いて)
遠く離れた本陣に座する軍師代理のクラディールへ、作戦成功を告げた。
「男爵だ。こっちは片付いたぞ…いや、“散らかした”というべきかな」
「あははっ、相変わらずドSですね。
ま、ナニはともあれ快勝連覇、さっすが世界三奇人!お疲れ様でしたー」
「なぁに害虫駆除くらいお安い御用だ。
この街がいずれ私の物になることを思えばな」
「…あ、あげませんよ?」
「失礼、言い方を間違えた」
ニヤリと笑って。
「――ちょっと借りるだけさ(永遠に)」
「…………」
ある意味、侵略国家よりもよっぽどタチの悪い
男爵にロックオンされつつも…
エルベラは今日も平和だった。
★★★
-1-
★★★
冒頭、町の周辺で敵軍隊とメノウ男爵の小競り合い。
「だれか見ているな」
★★★
薬菜飯店の二階は女将の寝床で一階が店。
ふたつしかないテーブルのあいだを
くるくる走り回るウサビトの女将アイスが今日も客をあしらっているとノック。
出る。外にはジュスペル。
戒厳令なので入れない。
するとドアを炎魔法でぶち破られる。おじゃましまーす。
アイスがおびえてカウンターの奥にぴゃっと逃げる。
魔女はどこ?住民に聞こうと思ったけど捕まらないのよ~
がたっ。立ち上がる客──黒き鎧の放浪者。
「──ドアくらい開けて入りなよ、お姉ちゃん」
「他人の土地に無理やり土足で踏み入るなんて、よくないと思うんだ。
おれが言うのもなんだけどさ…」
まったくもってその通りである。
ジュスペル。魔女狩りの三つ子の長女。
顔はそっくりだが雰囲気がぜんぜん違う彼女らの中において唯一のおっとり派。
お調子者と仏頂面と天然。
だけどパワーは折り紙つき。その能力の真髄は──
「燃え落ちる街・揺らぐ次元・焦げる魂・我が神のぬくもりに焼かれよ罪人!」
「凍える滝・腫れた心臓・錆びた槍・冥界の犬よ頭をもたげ“それ”を噛みくだけ!」
「四月に降る雪・奇妙なノイズ・風の魔術師・終わる世界の終わる音を聴け!」
あっという間に建物は半壊し、柱といい壁といい見事なまでに倒壊していた。
基礎構造は4割ほど崩れ、幸い二階へのアクセスに問題はないのだが
果たしてそこに逃げるのは良策だろうか。
すぐに焼け落ちてしまうのに。
放浪者は「へん!なまぬるいよ」と笑い、まったく問題にしない。
しかし次にジュスペルが放った必殺技を受けて初めてダメージが通る。
泡立つようにして放浪者の黒き鎧が膨張し、歪み、
ぶくぶくと暴れたあと急にボカンとへこんだ。
真夜中の海面に隕石が落ちたかのような真円形の穴。
穴のむこうにアイロット少年の緑の瞳が見えた。
「な──っ!?」
「うふふ~、おしい~。本体に到達するまであとちょっとかしら~」
驚嘆すべきその技を連発されて、さしもの放浪者にも焦りの色が見える──。
謎の炎球が彼の身体をえぐるまで、あと数センチ。
アイスは自分の尻尾についた火にびっくりしてところかまわず走り回り、
二階の自室に飛び込んでベッドに頭を
埋める。
あしをぱたぱた。「やーぁあ!あついあついあつーーーいーーーっ」
誰かがそれを消してくれる。
「みゅっ…!?あ、ありがとっ、親切なひと──」
眼前にいたのはなんと魔女狩りシスターズ。
「へっへっへー、お姉ちゃんが魔女をぶったおして某らを救ってくれたんだ」
「…気に食いません。この私、エベレッタの獲物がこんなちいさなウサギだとは」
ベッドの中にごろりと転がる気絶したベルディッカ。青ざめるアイス。
肝の冷える瞬間とはこういうシュチュエーションを挿す。
氷菓よりも怪談。
アイスはそれを思い知った
ジュスペルの強さの秘密──それは見たものをそのままコピーするものまね能力。
MPの消費もなく。
レベル制限も関係なく。
ただただ素直に、その日眼にした魔術を、寸分の違いもなく真似できる。
──今日彼女が偵察してきた、メノウ男爵の魔術も、である。
「そっか…だからこんなに強いのか」
あいつの魔術なら納得だね、とアイロット。
そこに、二階の廊下をたったか走り逃げるウサギと2人の敵。
「アイロットさぁーーん!このひとたち、3人で詠唱してまーす!」
「ふむ?」
「あぅ、やばい。ばれちゃっ…」ジュスペルは若干あわてる。
三つ子ゆえの魔力共有。
三位一体の輪唱によってその“ものまね”は成り立っているのだった。
アイロットは笑う。
「お姉ちゃんの能力はおれと似ている。
目にした技をコピーして強くなる、という点で…似ている…」
「だけど違う点もある」
「おれは本物で」
「お姉ちゃんはニセモノだってことさ」
変形した鎧で詠唱サポートの2人をぶっ倒して。
「こんな小細工であいつの魔術を真似しようなんて、千年早いんだよ、お姉ちゃん」
甘い甘い。
ジェラートみたいにね。
薬菜飯店篭城戦、終了。
篭城とは名ばかりの逃走戦だったけど、
女将アイスが発見した詠唱の秘密が勝利の鍵となったのだから
彼女の名誉のためにも、逃走というネガティブな名をつけるのはやめにしよう。
女将たる彼女が、自分の城である薬菜飯店を護った──という意味をこめて、篭城戦と名づけよう。
薬菜飯店篭城戦。
★★★
「」
「」
薬菜飯店の女将アイスの本名はエダ・ル・ジェンマ・キルヒアイスというやけに長い名前で、
本人もそれをあまり好きではないようだ。
彼女は雪みたいに白い毛皮の
ウサビトで、身長体重、ともにりんご5個分。
くりくりにカールした水色の髪や柔らかいほっぺたは
間違いなく人間のそれなのだけど手足が違う。
ポケットがいっぱい付いた制服のスカートからのぞく足は、
ピンクに照る膝小僧のとこまでが少女の肌で、
スネから下はもふもふの毛で覆われたウサギの足だ。
これまた赤い長靴ブーツを履いてるからぬいぐるみみたいに末端が大きい。
毛に覆われてるのは腕も同じで、
肩から二の腕まではすべすべの少女の肌なのに
肘から先が毛の生えたウサギの前足。
肉球はカワイイけれど、飲食店で働いててその獣のパーツはあからさまに不利だった。
なんかこう、夢とか、獣人への憧れとかを
まるっとぶち壊す形になって申し訳ないのだが、
けっこう落ちてるのだ彼女の毛玉。
丁寧に磨かれたログハウスの床なのに、
丸太組みの天井から零れる陽光に透けて、雪みたいに…。
せっかく美味しい料理を食べてるのに
西部劇の荒野に転がるアレみたいな代物がテーブルの下をふさふさコロコロ。
客が苦情をいれても、薬菜飯店の女将アイスは
頭頂部から可愛らしく生えたウサギの耳をぱたんと閉じて
『え?なんですか、きこえませんよ?』といった顔をする。
とんだ確信犯(誤用)である。
まぁ…女将の性格に幾らか問題はあるものの、薬菜飯店はその味の素晴らしさによって人気だった。
──そんな女将のいるレストランに、
敵国の刺客が放った巨大炎弾魔術が襲い掛かり、
その攻撃に反応して、街の要塞化の一貫として薬菜飯店に掛けられていた
冷凍防御魔術が発動したところから…物語は始まる。
★★★
「こ、凍って──いるのかよ?」
テーブルの下からどうにか這い出して、椅子に片肘をついて顔を上げた少年の名はトロピコ。
彼もまた変な響きを持つ自分の名前があまり好きではない。
さきほど、遅めのランチを嗜んでいた彼の座る席の向かい、吹き抜けの二階の窓のすぐ外に
巨大な太陽のごときドロドロの溶岩球が迫って
どうも、薬菜飯店の女将、アイスです。
うさぎの女の子です。
年齢は秘密です。
その日はぽかぽか陽気があんまり気持ちいいものだから
テラスのお客様用テーブルにお布団を干して
ついでにそのフカフカの上にでへーっと寝そべってみました。
もふもふ。
ふあー。たまりません。天国ってこんな感じだと思う…。
(わたしは背が低いのでお布団を運ぶのが大変だったけど。
二階の自室から階段を下りてお店の裏口から庭へ…という道のりが
まるで世界一周旅行のように長かった)
あったかいお日さまと布団にサンドイッチされてつい転寝をしてしまったわたしでしたが、
薬菜飯店入り口のベルがかららん、と鳴るのを耳にして
(うさみみがぴくりと反応するのです)
はっと顔をあげました。
あれ、お客さんですか?
イエス。そうでした、お客さんでした。
敵襲があり、戒厳令まっただなかの機神都市エルベラなのに、
薬菜飯店には今日も朝からお客さんが来てくれたのです。
いつまでも鼓膜に残る重低音とともに
フローリングの床がばっくりと裂け、自重でさらに傷が開いた。
めきめき…!谷のような穴が深く、さらに深く…!
(う、うっうー…怖いよう…こ、怖いですけど…でもっ、でもわたしっ…)
アイスは震える指先をそろそろと緑髪の少年の小さな肩に伸ばす。
(女将ですから──
お店なんかよりずっと大事な、お客さまを──ま、守らなきゃ)
いいかいアイス。女の子はだれでも魔法がつかえるものさ。
甘い恋。汗と涙の冒険。魅惑的なミステリィ。ほんのり酸っぱい夢。苦い思い出…
ぜんぶをスパイスみたいに振りまいて
食堂が一階、厨房が二階にある奇妙な作りのレストラン。
二階はまるごと店主たる彼女の生活スペースであり、
暖炉とわらのベッドと安楽椅子がある屋根裏部屋だ。
機神都市エルベラに火の手があがったその日。
初めて敵国が結界を破り、本土決戦が始まったその一日のおおよその展開を追ってみよう。
まず、前日の深夜に召喚兵器ミコトが【裏切り者】に敗北し、捕獲される。
【裏切り者】はその夜から今日にかけて結界破りの工作を行い、少数の刺客を誘致することに成功。
【放火魔】の敦賀屋 檻髪。他二名。
【魔女狩り】のクレイピア・エベレッタ・ジュスペル。
結界にあけた罅のサイズの問題で、比較的体格の小さな少女兵だけが通れた。
アイスの設定考えよう。
頭では難しいこと考えて喋りは萌えキャラ、というのは
ある意味ナナセでやってしまったし
そのキャラはナナセにこそぴったりだった感じだ。だから別のキャラを考えなくては。
ウサビト。ロリキャラだとミミウと被りかねない。かといって姉御系はシーナに任せたい。
無口だめ。ロリだめ。姉御だめ。天然?うーむ、俺は天然うまくない。
ボーイッシュ…そういやいないな、でもそれこそミミウだ。
おおおっ、『すんドメ』のヒロインみたいな自傷も辞さない冷徹系は!?
妙に迫力があり、曲がったことがキライで、見つめるだけで相手がタジタジになる。
脅されても一歩も退かず
「どうぞ…この肉(わたし)を壊したいというならお好きに。絶対に喋りませんけどね」みたいな。
それを男の子(放浪者)が必死で護る。ううん、いいかも!
ウサミミでー。片目かくしの鬼太郎ヘアでー。すらっとした美人でーw
物事に構わない一途さがあってー。職人肌で、料理の腕以外に求めるものはなにもなくてー。
でも料理ほめられるとゾクゾクッ!ってするくらい嬉しい。
放浪者に肩を抱かれ、その手を握り返して
「お客様は暖かいですね──融けてしまいそう」とか!ひゅーっw
お客様第一主義はシーナと被るけど、そこはまぁ
俺の商売人キャラはだいたいそうだからしょうがない。
いままでの描写は──えっと、
夏だからアイスが売れて薬菜飯店の主人も恵比須顔だろう、ってのと
やれやれって表情でテーブル拭いてる二点だけだったはず。いける!
「…あの、お姉ちゃん、もしかして怒ってる?」
(ええっ!?おっ、怒ってないですよぉ!?)
驚いて少年に眼を向けると彼は少しひるんだように身を竦める。
(どうしてそんなこと…あっ、そうか)
噛み締めた唇に気付く。
(私、また怖い顔してたんだ)
うまく笑えなくて、喋れなくて。
人前を傷つけてしまって、悔しくて、不甲斐なくて。
そんな後悔の表情すらも、氷の破片みたいにギザギザだなんて。
アイスは自分の険しい顔が少年をさらに恐れさせている事を自覚して泣きそうな気持ちになる。
自分は笑顔が作れないんです、と告白して彼の不安と疑問を氷解させてあげたかった。
暖かく接客したかった。
しかしそう思えば思うほど、アイスの表面は硬く凍りつくのだった。
「…別に怒ってない。早く食べたら」
「う、うん…あっ!これとっても美味しいよ。おれ、こんなの初めて食べた!」
(……あうう)
どうにか会話を盛り上げようと、健気にがんばる少年に良心の呵責を感じたアイスは
「そう」とそっけなく応え、うさ耳をぷいとひるがえし、厨房へと逃げ帰ろうとした──
その瞬間だった。
うさびとの女将アイス。店の常連は放浪者アロウ・アイロット。
氷菓と鉄塊。
そろそろガチバトル?おっとりした術の達人ジュスペル。なのよ~。すやすや。
魔女狩りのコスチュームは黒。
黒衣。喪服。あとは…ゴスロリ?w黒猫。死神みたいな黒装束。
そういやトリプレッツであることを説明しわすれてるぞw
詠唱なく唱える邪道魔術師。うさみみで詠唱元を特定。
勝利。
斜道と邪道のバトル。
「あなたは他人を護るのに向いてないのよ~」
ちょっと間違った諺?「これはもう三位一体よね~」的な。アヤベエ的な。
属性はなにがいいかな、いままで出てない赤らへん?放火魔と被る?
篭城戦。「詠唱を生首に」というネタのために魔女を撃破させるべきか?
ショッキングさは出るけどパワーバランスはヤバげw
ものまね師。男爵の魔術をものまねして魔女3人を倒す。
放浪者にシメられる。
うさみみをどう絡める?逆に放浪者が詠唱?いやいや…。
ものまねしか出来ないならどうやって周辺魔術を使っているのか?
→三つ子であるがゆえに無理に口寄せ
→クレイピアとエベレッタに詠唱させてる→うさみみがそれを見破る
最終更新:2017年08月16日 15:22