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各国・地域ごとのスーツの仕立ての特徴

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イギリス


スーツといえばロンドンにあるサヴィル・ロウ。そんな時代もありました。

いわゆる「英国調」(ブリティッシュスタイル)と言っても様々なスタイルが存在するが、仕立てのスタイルとしては「芯地のしっかりした構築的で重厚感のある仕立て」が概ね共通認識として存在していると思われる。またやや高めのウエスト位置でメリハリのあるシェイプもクラシックなブリティッシュスタイルとして連想されがちである。人によっては3Pスーツも英国的なスタイルだとみなす人もいるだろう。

生地は、織りは縦横双糸で張りとウェイトのあるもの、柄は派手すぎないグレンチェックやウインドウペーンなどがそれっぽいイメージがある。もちろん無地でもOK。スーツは地味でそのかわりシャツやネクタイを派手にする、というのはひとつの英国スタイルとしてあるかもしれない。なお靴はビジネスでは基本的に黒をあわせる。

イタリアのようにエリアごとに特色が語られることは稀で、基本的に有名店はロンドンにあるので、店ごとのスタイルの差あるいは時代による隆盛で語られることが多い。よく話題に出る店としては、ギーヴス&ホークス、ヘンリープール、アンダーソン&シェパード、ハンツマンなど。

日本で語られがちなのは伝統的なクラシックスタイルだが、1970年代〜1990年代にかけてはトミー・ナッターやエドワード・セクストンらがミュージシャン等の若者(当時)からの支持を受け、新たな潮流が生み出された。その後のスーツ文化発信の中心はイタリアに移行してしまったため、実際のイギリスのテーラーメイドは風前の灯であり、日本のテーラーは在りし日のサヴィル・ロウを追い求めている節がある。

日本で仕立てるなら

  • batak - 古き良き英国のクラシックスタイルを追求している。丸みがある柔らかい印象の見た目。
  • BLUE SHEARS - 店主の久保田氏はギーブス&ホークス初の日本人カッター。
  • Dittos - こちらも高い完成度のクラシックスタイルを提供している。構築的で力強いショルダーラインの印象。
  • LID TAILOR - 上記の店よりやや細身でモダンブリティッシュなスタイルが多い印象。

アメリカ


アメリカン・トラディショナル略してアメトラ。西海岸の名門私大(いわゆるアイヴィーリーグ)で1960年頃に流行っていたスタイルは日本でも人気で、アイヴィールックと呼ばれる。
ビスポークというよりはブルックスブラザーズやラルフローレンによる既製服を中心に流行ったスタイルかもしれない。ウェストをあまり絞らないボックス的シルエットのスタイルで、ブレザーやボタンダウンシャツは典型的アイヴィースタイルである。あとフックベントなどのディティールもアメトラな印象。

あと最近だとニューヨーク的なモダンなスタイルもあると思うが、ビスポーク界隈ではあまり話題にならないので省略する。

日本で仕立てるなら

  • Tailor Caid - アイヴィースタイルのビスポークを得意とする。
  • batak - やや英国寄りの店なイメージがあるが、サックスーツも得意としている印象(参考)。

フランス


日本でフランス的なスタイルの仕立てを売りにしている店は、大手アパレルの支店除けばおそらくない。
また店ごとに個性のあるスタイルを打ち出しているケースが多いので、一般的なフランス風のスタイルというものはないのではないかと思われる。

ディティールではあるが、フィッシュマウスと呼ばれる独特のノッチトラペルは、フランスの特徴的なスタイルである(もちろんフィッシュマウスが好みでなければ普通のノッチトラペルも指定できるだろう)。

有名なタイユールとして、チフォネリ、カンプス・ドゥ・ルカなど。

日本で仕立てるなら



イタリア


イタリアのスーツスタイルはエリアごとに語られることが多い。概して北部ほど構築的、南部ほど非構築的だと言われている。北から順に記載する。

ミラノ


最も都会的で構築的なスタイル。ミラノはイタリアファッションの中心地であり、この地に本社を構えるアパレル企業は数多い。ブリティッシュスタイルをイタリアの高い縫製技術で提供しているのがミラノと言えるかもしれない。ちなみにアルマーニもミラノが拠点だが、あまりアルマーニのスタイルをミラノと結びつけて考える人はいないかもしれない。

ビスポークで有名なのは A.カラチェニやF.カラチェニ(注: カラチェニを名乗るサルトリアはイタリアに何箇所かある)だろうか。日本だとあまり名前を聞かないが、ムゼッラ・デンベック(Musella Dembech)もミラノの名店である。

日本で仕立てるなら


  • ペコラ銀座 - 言わずと知れた銀座の名店。海外帰りのパイオニア。
  • Sartoria YUKI INOUE - F.カラチェニ由来のラペルのラインは特徴的である。定期的にある受注会で注文可能。

フィレンツェ


固すぎず柔らかすぎない中間的塩梅の構築度に、フロントダーツのないクリーンな見た目の仕立てで、高すぎないゴージ位置にワイドラペルが典型的なスタイル。

フィレンツェ風といえば実質的にはリヴェラーノ&リヴェラーノのスタイルをイメージして話す人が多い印象。それ以外だとセミナーラ、ヴェストゥルッチなどが有名。

日本で仕立てるなら

  • Sartoria Cavuto - リヴェラーノ&リヴェラーノのフランチェスコ・グイーダ氏のもとで修行した技術的評価の高い店。
  • Sartoria Corcos - Seminara、Francesco Guidaで修行。フィレンツェで開業のため、日本でのオーダーはトランクショーにて。
  • Coccinella - 合理的な仕立てと価格。

またリヴェラーノ&リヴェラーノの代理店や同店出身のフランチェスコ・グイーダ氏に日本国内の受注会で注文することも可能。

ローマ


ブリオーニが拠点を置くイタリア第一の都市。ローマンスタイルがスーツのスタイルとして確立しているかというと微妙なところで、スタイル的にはミラノと明確な違いを定義することは難しいかもしれない。ローマの有名なサルトリアとしては、ガエタノ・アロイジオなどがある。

日本で仕立てるなら

  • Sartoria Ypsilon - ローマで修行後、同地で開業。ミラノを経て現在は東京。

ナポリ


典型的な日本人の抱くナポリ仕立ての特徴は「軽く柔らか」である。裾までまっすぐ通るフロントダーツ、高いゴージ位置、やや短めの着丈、ジャケットの袖付けをシャツのように行うマニカ・カミーチャやその際のいせ込みにより生じるギャザー(雨降らし袖)などがよくある仕様だろう。
もっともこのような仕様の多くは差別化マーケティングによって日本展開の際に強調されたものであり、すべてのナポリスーツがこのようなスタイルを取っているわけではない。

ナポリのアパレルブランドとして有名なブランドはアットリーニ、キトンなど数多く存在するが、そのほとんどが既製服を中心とした大量生産の工場であって、サルトリアとは方向性が異なる。ダル・クオーレのようにかつては腕の立つサルトリアだった店が大量生産方針に転換しているケースも多い。

サルトリアとして有名なのは、パニコ、チャルディ、ピロッツィ、ルビナッチ、ソリートなど。

ちなみにナポリ仕立てにおいては型紙を作らずいきなり生地にチョークを引いていくやり方で服を作るスタイルの店も多く、現地においては、仮縫いを何度もおこなってフィッティングをあわせていくことになる。通常のビスポークでは何度か作るうちに型紙がブラッシュアップされてフィッティング精度が高まっていくものだが、本場のナポリ仕立てにおいてはその点あまり期待できない。

日本で仕立てるなら

完全なナポリスタイルというよりはナポリの技術をもとに日本人向けにアレンジしている店が多い印象。日本人の作るナポリスタイルは、本場のサルトリアより作りが丁寧である。良くも悪くも。


より本格的なナポリスタイルを好むのであれば受注会を利用すると良い。

日本


従来、日本の仕立て屋は、型崩れしにくく、芯地のしっかりしたいわゆる「鎧のようなスーツ」を良しとする傾向があった。

これは胸板が薄く猫背気味な日本人の体型を構築的な仕立てによって補おうとしていたのかもしれないし、着用によって生じる皺などの変化を良しとしない消費者のマインドに合わせた結果かもしれない。
伝統的に直線と平面を旨とする和服文化の影響もなきにしもあらずだろう。
日本の多湿な気候を踏まえ芯地を強化する、椅子を用いず床に直接座る文化に合わせてトラウザーズを太めにする、などの工夫は一種の国風化と言える。

とはいえ今日においては、職場における服装のカジュアル化やナポリを始めとするイタリア風スタイルの流行等の影響もあり、程度の差はあるにせよ、どの店でも従来より非構築的で軽い仕立てに対応していると思われる。

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