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死神降臨(後編)



目を覚ますと、知らない世界に居た。


すみはぴょんと起き上がり、あたりを見回す。

空は青く透き通るような色で、白い雲がふわふわと天高く流れている。
空気はさわやかすぎる程澄んでいて、緑色の植物は綺麗な朝露を垂らしていた。
それはすみが本で見た、人間界の世界と同じ風景だった。

「本当に来ちまったのか…人間界に…」

そばに落ちていたドクロ柄のリュックを拾いながら呟く。
中身が無事か確認していると、なんだか急に景色が暗くなった。
「…なんだ?ここは急に夜になるのか?」

不思議に思いながら天を見上げる。
夜になった訳ではなく、なんと巨大な恐竜のあごの下にいた。
「ぎやぁ!?」
すみがびっくりして飛び跳ねると恐竜はシューシューと鳴きながら長くて細い舌をチロリと出す。
「ひいぃ!食われる!!」
ぴょんぴょん逃げ出すすみの後をガザガザとつけてくる四足歩行の恐竜。
「ギャァァァァァ!!」
すみは翼を出すとリュックを抱え、思いっきり高く飛び立った。

「はぁ…はぁ…なんであんな怪獣がいるんだよ………ん?」
諦めて帰っていく恐竜の姿を見て、すみは気付いた。
「あれって……まさか人間界のただのトカゲかよ!?いきなり襲ってきやがって!!怖すぎだぜ!……ハッ、まさか儀式に使ったトカゲの呪いなのか…!?でもあれ元々死んでたやつだしおかしくねぇか!?ふざけんなよ!」
飛びながらぷんぷん一人で怒っているすみ。どうやらこの世界は不思議がいっぱいありそうだ。

「やべー!遅刻遅刻ー!」

すると、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。
その声の方を向いてみると、トカゲよりずっと大きなものがいた。
緑色の帽子をかぶって上下黒い服を来た少年が、カバンを振り回しながら忙しげに走っている。


「……人間だ」

すみは人間というものを実際に見たのは初めてだった。
いつもじいやからは決して近寄ってははらない恐ろしいものと聞かされていたが、実際に見た所、図体だけがでかいだけで大して怖くはなさそうだった。


「また火燃にどやされるよー!」
一人言をいいながら漫画の第一話のように走る少年。残念ながら食パンはくわえていなかったが。

「へぇぇ…あれが本物の人間か…」
初めて見るその姿に、すみはわくわくしていた。ずっと禁止されていたけど気になっていたもの、それが遂に目の前にいるのだ。
すみは少年の肩程の高さまで近づく。
実は彼、本物の人間ではないのだが、すみはそんな事気にしない。というより知らない。

「ようし、せっかくだ。ちょっと面でも拝んでやるかなっ」
すみはそう企むと、少年の斜め前に回り込んでみる。
初めてみる人間の顔は
「お…?意外に悪くない…?」
というの第一印象もつかの間、すみの心に衝撃が走った

「なんだこいつ…凄く…かっこいい……!?」

ハートの矢がずきゅんと、すみのココロに刺さってしまったのである!

「いや、そんなまさか…!この死神王すみ様が、こんな下等生物に心ときめかせるなんてっ!」
すみがぶんぶんと体をふっていると、必死に走っていた少年が急に立ち止まり、目を瞑る。
「へっ……」

「えっ、まさかオレに気がついて…!」
ますますトキメクすみ。

「くし!」
急に暴風が吹いて、すみはあっけなく飛ばされてしまった。

「おー!親父がいつの間にかくしゃみのプログラムを…!なかなか自然な出来じゃーん!ってやっべ!もう間にあわねぇ!」
コンクリートの塀に激突するすみをスルーし、体内電波時計の時間を見て焦る少年。
「仕方ねぇ…本当にピンチの時しか使うなって言われてるけど……」
ボソっと言うとすっと目を閉じ、立ったまま瞑想するように動かなくなる。

「お、おい…てめぇ…なにしやがる…」
ふらふらしながら戻って来て、話しかけるすみ。

短い沈黙の後、少年は勢い良く顔を上げた。カッと開いた目を一瞬ピカっと光らせる。

「…戦闘モードON!!]

「何だ?」
「超速っ、ダーーッシュ!」
と叫んだと同時にズドドドドと砂埃をたてまくりながら猛スピードですみの横を駆け抜けてしまった!
取り残されたすみは一瞬の内に何が起こったのかわからず、誰もいなくなった道の空中で立ち尽くすしかなかった。


その後も何人か人間に出会ったが、すみの頭の中は最初に出会った旋風くしゃみ少年でいっぱいだった。

「あいつ…一体どこに行っちゃったんだろうな…」
特に目的があって下界に来た訳ではないすみは、なんとなく少年の行方ばかり考えている。
「そうだっ!空から見れば分るかもしれねぇ!って、別にあいつに会いたいとかそんなんじゃねぇし!勘違いすんなよ!?」
すみは独り言をいいながらも適当に高く飛んでみる。

景色を見回していると、ある大きな建物が目に入った。
高さは三階ほどだが、大きくて平べったい建物だ。

「なんだあれ…この国の城か?それにしてはえらい地味じゃねぇか」

すみはその建物に近づいてみる。
たくさん並んだ窓と所々ひび割れたような古くさい壁がおしゃれに感じた。サッカーゴールが備え付けられた広い庭も、少し殺風景だが悪くない。備え付けの大きなプールだってある。

門の前ではガタイのいい半袖の男が、派手な服を着た女と口論しているようだった。
「なるほどなぁ……見張りの兵士も強そうじゃねぇか。不審者から城を守ってるぜ」
頷きながらか関心するすみ。
城を見ていると、この国をどんな人物が治めているのか興味が湧いてくる。家出中だろうか関係ない。
「……オレも一国の王だ。とりあえず向こうの国王にあいさつくらいしとくかなっ!」


すみはそう言って、その公立中学校の門を飛び越えていった。



中学校では朝読書の時間だった。
もちろんこのクラスでも皆好きな本を持ってきて、読書に集中している。

重道は窓際の席で、美少女がでかでかと表紙に描かれたライトなノベルをニヤニヤしながら読んでいた。
「ん~……僕も女の子達と一緒にお風呂に入りたい…」
時々笑ったり独り言を漏らす怪しい少年の3つ後ろの席。

ある男子が窓の外に違和感を感じ、本ではなく外をじっと見つめていた。

「……あれは…」

視線の先には、黒くて変な羽を生やした虫のようなものが不自然にガラスの向こうで騒いでいた。
それはコバエのように小さく、普通の人にはこの距離からは見えないだろうが、高性能アンドロイドなら容易に確認できる大きさだった。

「…うっ…ぅー…ぐずっ…どうかしたのR君…?」
隣でケータイ小説を読んでいた有姫奈が話しかける。しかしその顔、涙でメイクが崩れ気味である。
Rは一瞬びっくりしたが、彼女は以前も本を読んで泣いていた。心配したその時に「気にしないで」と言われたことを思い出したので質問に答えた。
「いや…なんかそこに虫みたいな変なのがいて気になるんだよね」
「ぇ?どこー?」
有姫奈は少し身を乗り出して、Rが指差す所を見ようとする。
さっきからぐるぐると同じ場所ばかり飛んでいる。
「んー、わかんない……ぐすっ」

「でもあれは虫じゃないな……。レーダーにひっかからねぇ…」
うぬぬと唸るR君。
「もっと変な力があるような……そういや、学校に来る時もこんな感じが……」
「ぐすっ、マスカラが目に入って見えないでぷ~」
有姫奈が目をこすっているとつけまつげが取れそうになる。あわてて鏡を出してメイク直し。
R君は相変わらず窓の外を見つめて何かを分析している。


「こらっ、華神さん市之瀬君、ちゃんと読書しましょうねー?」
すると、若い女性の声に注意される。このクラスの担任の先生だ。
2人は素直に返事をすると読書に戻った。




「キャァァァァァァァァァ~~~!!!」

すみはというと、2年3組の窓の前で叫びまくって大騒ぎしていた。
「そ…そんな…まさか…まさか…!!」
すみはうろうろと落ち着かない様子でぐるぐると辺りを旋回する。

「あいつ、さっきのあいつが、この城の中にいたなんてっ……!!」

中学校が城だと思い込んでいたすみは、国王がどの部屋にいるか軽くみて回っていたのだが、この窓の前で吸い寄せられるように立ち止まった。
そうしてガラスを覗いてみると、なんということでしょう。今朝のくしゃみ少年がいたのでありました。
「しっ、しかも!見てた!俺のことめっちゃ見てたよぉっ!指さしてたし!今度は確かに気付いてくれてるぅ!他の人間は全く気付かなかったのに!きゅっきゅぅぅぅ!」
ぐるぐると喜びのダンスで飛び回るすみ。

「あっ!また見てる!またオレの事見てる!さっきまで本読んでたのに!きゃー!!」




「…………」

R君はむぅっと眉をひそめると『ゆるゆるきゃらくたーの大冒険☆』を閉じる。
そうして左手をゆっくり窓にかけた。




ガラリと窓が開いた。
窓枠に手をかけた彼とバッチリ目があう。
今まで2人をさえぎっていた透明の厚いガラスの壁、そんな邪魔な物はもう無い。
運命的な再開にテンションの上がるすみ。

「えっ!?なんだ!?も、もしかしてやっぱりお前オレの事を…!?///」

すみがはしゃいでいると、彼は口を大きく開けた。

「なっ、何!?オレに言いたい事でもあるってのか!?キャッ!」

そして口の中に、ぎゅんぎゅんと光を集めていく。

「え?」

疑問におもったその時、彼の口からすみに向かって放たれたのは、告白の言葉ではなく太い光線だった。

「ギューーーーーーッ!!!???」

灼熱の破壊光線をモロに食らってしまったすみは、丸焦げになりながらひゅるると地面に落ちて行った。




「……ふう、これで大丈夫だろ」
何事もなかったかのようにぴしゃりと窓を閉めるR君。
「R君…ぐすっ、どうしたの窓あけて……ひっく……換気…?」
「いや、ちょっと変なの追い払っただけだから。もう気が散ってさぁ」
「ふーん……ぐすっ…」




地面に落ちたすみは、放心状態で空を見ていた。相変わらず青い空には雲がゆったり流れている。

「なんなんだ……あれは…なんだよあいつ……」

人間界で初めてであった王子様。まさか本当にまた会えるなんて。
「でもいきなり攻撃してくるなんて思わなかったぜ…」
プスプスと焦げるすみ。しかし、不思議とその火は心にまで付いている気がした。
心の炎は真っ白に燃え尽きて灰になったりなんかしちゃいない。すみはフッと微笑む。
「いや……積極的じゃねぇの……あれはきっと愛の証だぜ…」

すみは起き上がり、体をふるふるして全身についた焦げをおとす。
「よし……いいぜ……おもしれぇじゃねぇか…」
すみの心は完全に恋の炎で燃え盛っていた。

「俺はひこくなんかじゃなくて…あいつを……」
そしてくしゃみ&光線少年の事を想い、決めたのだ。

「あいつを、オレのお婿さんにしてやるんだ……!キャッ!」







「うーん、先生はどうしたんでしょうねぇ。朝の会の時間はとっくに過ぎているというのに、朝読書のラスト2分で急に校長先生に呼び出されて、まだ帰ってきていないなんて。なにかあったんですかねぇ」
重道は丸い眼鏡をくいっとあげながら、この状況を解説しつつ疑問に思っていた。

教室では、先生がいないことをいいことに皆ざわざわと談笑している。

「これうまくいけば一時間目さぼれそうだよなー!丁度担任の授業だし」
こちにが鏡をみながら嬉しそうに言う。
「そういうことを言うのはよくないですよ」
と、重道は実際に言ったわけではなく、心の中でこちにに注意をして、女の子にもてもてになる妄想をしながらニヤニヤしていた。

しばらくすると、担任の先生が教室に戻ってきた。
これで授業さぼりは叶いそうになく、こちにを始め何人かは残念そうにしていた。

「あのですね、皆。よく聞いてください」
なにやら困った顔をしている先生に、クラス全体が注目する。


「今日から、このクラスに転入生が入ることになりました」


いきなりの知らせにクラス中がざわめく。

「転入生だってよムスカ、聞いたか?」
「まじかよ」

「はいはいー!それって女子ですかー!?男子ですかー!?」
ぽっちゃり系男子の山地が騒がしく尋ねるが、先生はそれすら言いにくそうに答える。
「女子……ですね」
女子と聞いてこちには手鏡を素早く終い、決め顔を作る。
「先生。それでその転入生の女の子はどこにいるんですか?」
こちにがクールに尋ねる。
「……もうここにいます!」

「え?」

先生はそういうが、教卓にいるのは先生一人だ。他に誰もいない。
ムスカが教室を見回しても、重道の観察眼でも、山地が廊下に出てみてもやっぱり誰もいなかった。
「おい先生!いねぇじゃんかよー!」
山地がつまらなさそうに席につく。


「いますよ!ここにいますから!ちょっと皆、前に来てー!」
先生の必至な訴えに生徒達は言われたように教卓を囲む

ムスカも一緒に教卓の前に来る。
よく見ると、なんか黒くてぴょこぴょこ動いているものが机の上にいた。
「……なにこれ、ノミしかいねぇじゃん」
まさかノミが転入生なのか、それとも自分には見えない何かがいるのか。どっちにしろそんな冗談わらえねぇよとムスカが言おうとしたその時

「誰がノミだっててめぇ!!??あぁ゙!?」

聞き覚えのない女の怒鳴り声が響いた

「ノミが喋ったァァァ!!???っぎゃぁぁぁぁぁ!!??」
「うわぁああ!!??」
驚きのあまり後ろにぶっ倒れるムスカ。背後にいた山地も巻きぞえにしてしまう。

「くっ…!なんなんだ今の!?」
「あっ…どうしよう……!ムスカとこんな密着して俺っ…//」
偶然にも床へのダメージを吸収してくれた山地。ムスカは素早く立ち上がると、さっきの声の主を確認しようとまた割り込む。
誰もいないのに声が響いたことで、クラスメイトも当然ざわざわとビビる。
また机の上のノミがぴょんぴょん跳ねながら言った。

「おい!ガタガタ騒ぐんじゃねぇ!オレが転入生だよ!」

ノミ……ではなくすみはあの後、ここは城ではなく学校だとようやく気づき、校長室へ殴り込みに言った。
学校に入ればあの少年といつでも会えるどころか、一緒にテスト勉強したり、屋上でお弁当を食べたり、甘酸っぱい青春が送れると妄想したのだ。
校長も最初は学校の七不思議の実現、ホラー体験かと思い朝から相当びびっていたが、なんとか話を聞いてもらい。
無理やり2年3組へ転入の許可を得たのだった。

「俺は魔界からやってきたんだ!身長を糧にする死神だぜ!ちなみに王な!ここの世界に来たばかりでよく知らねぇから色々教えてくれよ!」
普通に聞くと痛々しい台詞だが、事実なので仕方ない。
こんな自己紹介が行われ、歌恋も何がなんだか分らない様子で、頭にハテナマークを浮かべまくっている。

「まじかよ……」
ムスカや他のクラスメイトは動揺を隠せない。人間の女の子を期待していた(皆そうだが)こちには隣でぽかんとしている。
特に訳のわからん事は避けたいムスカは、先生の悪いジョークであって欲しいと思っていただろう。

「はい、みなさんわかりましたか!?」
先生は、黒板に小さな転入生の名前を書く
「スミノガミ・フォン・ミニマム・シュバルツスプラッタさんです!」

「おう!長いんですみってよんでくれ!」
ぴょんぴょんと跳ねるすみ。大勢の人間に囲まれていても警戒心なんて全く無いようで、これでめでたくクラスの一員になれるのだろう。

「ねぇねぇ、すみ子ってよんでもいい?」
早速、可愛らしい女子が話しかけて来た。すみの学校生活、なかなか良いスタートを切れそうだ。
「えぇ!?華神さん対応早くね!?しかも自分であだ名名乗ってるのに新提案!?」
「おうっ、しかたねぇな!いいぜ!よろしくな猫耳ピンク髪!」
「も~、ユキナって呼んでよ!よろしくね!」

いい雰囲気で話す自称死神王と女子中学生。
こんないきなり来たノミみたいな死神?の話なんて信用していいのだろうか。姿はろくに見えないし信用なんて出来っこない。だが声がするという事は実際そこにいるのだろう。
ムスカはクラスメイトの謎の適応力にも混乱していた時


「ケッ、なにが死神だよ!ただの消しカスじゃねーか!」


転入生へのやじが飛んで来た。子豚系男子の山地である。
この男、文句の声はでかいが結構小物なのでクラスでもスルーされる事も少なくはない。
「こんなのがクラスメイトになるとかありえねーよ!」
「なんだと…!?」

今回は流石に山地の言うとおりだとムスカは思った。普通に考えたらこの状況はおかしい。
続いて疑問をぶつける生徒達。
「そっ、そうですよ先生!それが転入生って無理がありますよ!」
「班分けも一人分に数えるんですか?テスト用紙に文字かけるんですか?体操服のサイズは?」
「魔界だって!ウケる!」
「ノミサーカスじゃん!」
笑い声と抗議の声が飛び交う。それに対し有姫奈はむぅっと頬を膨らませている。

「捕まえてテレビ局とかに売ろうぜ!世にも不思議な喋るゴマ!」
「こんな小さいのが死神とか嘘だろww弱そうだよなww」
「可愛い女の子だと思ったのに……」
「うははー!ファンタジーが有りなら、今度は天使の可愛い女の子が転入してくるかもしれないなぁ」

「てめぇら……言わせておけばつけあがりやがって……」
ふるふると震えるすみ。中学生達の勝手な物言いに怒りが湧いて来た。
一国の王という自分がこんなに友好的にしているのに、どうやらこの偉大なる死神の王の恐ろしさを知らないようだ。

「フッ、いいぜ……少々可哀想だが、俺の暗黒魔法をお見舞いしてやるよ…!」
すみは意識を集中させる。

「何?見せてみろよ!」
教卓に向かってへっへ、と笑う子豚。しかしやじの声はもう耳に入らない。
「ーー漆黒の風よ、我が剣と成りて従え、死神の王の名において……」
すみが呪文を唱え始めると、その威圧的な雰囲気に中学生達は何が起こるのかとヒヤッとした表情を浮かべる。


「暗黒魔法、死 神 風 !!」


………


……………



「あれっ?」

しかし、何も起こらなかった。



「…あれっ、何でだ!?俺の魔法が…。効かない…!?」

「おい、今の聞いたか!?死神の王の名において!だってよ!」

ゲラゲラと笑い声が上がる。これではただの痛々しい奴になってしまう。

「くっ、くぅ〜!!何で魔法が使えねぇんだよーー!!」
悔しくてゴロゴロゴロゴロ机の上を転がり回る。

「はっ、まさかこの世界って魔法使えねぇのか……!?もしそうなら…ど、どうしよう!俺ただの小さい奴じゃねぇか!!」

一気に絶望的な状況になったすみ。さらに暴れ回っていると人だかりの後ろに見覚えのある緑の帽子頭がチラッと見えた。

「あれはっ!」
ドキッとしてぴょんこと起き上がり、ピョーンと60cm程ジャンプする。

そして、彼とまた目が会った。3度目の再会だ。

「キャーーーーー!!!会いたかったーーー!!」

ようやく意中の人に会えたすみは、彼の近くまでジャンプする。
さっきまで怒っていたのに、ハートマークを出しながらかなりはしゃいでいる。

「えっ?俺?」
「そうー!俺お前に会いにこの学校に入ったんだぜー!」

状況が掴めないR。そもそも意味が分からなかった。やっと追い払ったと思った変な生物が今度は転入生として入って来るなんて。
クラスメイト達もそれは見逃さずにRを見る。

「えぇ!?Rってそれと知り合いなの!?」
「いや、知り合いっていうか…。でも何で俺の所に来るんだろう……」
思い当たる事をとりあえずムスカに伝える。

「朝読の時、こいつが窓の外ずっと飛んでてさぁ。そんで邪魔だったから、破壊光線お見舞いして追い払ったはずだったんけど…」
物騒な単語まで出てきてムスカは目を丸くし、Rを教室の後ろまで引っ張る。ここなら物騒な秘密の会話でも聞かれないだろう。少し小声で話を戻す。

「ちょっ、なにやってんの!?光線!?朝読の時に!?しかもそんなので懐いたの!?えぇ!?」
「俺もよくわかんないけど……戦闘モード付けっぱなしだったからつい光線出しちゃってさー」
「お前そんなのまであるの!?一体何と戦って来たんだよ!?」
「今日めっちゃ遅刻しそうだったから使っちゃったんだけど、それで走ったらマッハで着いたぜ」
「遅刻くらいで軽々しく使っていいの!?超コエーな!」
「いやいや火焼のがコエーって!捕まるとめちゃくちゃめんどうなんだよー……ちなみに戦闘モードだとめっちゃエネルギー消費するから今非常用電源で動いてるけど」
「おまっ、ちょっとそれ大丈夫なのかよ!?」
なんか色々なカミングアウトに心配になるムスカ。R本人はそんなに気にしてなさそうだが。
「まぁバレてないし大丈夫大丈夫!そういえば今朝、校門に荒地さん来てたけどなんかあるの?」
「ゲッ!学校に母さんが!?知らねぇって!一体なんの用で!?」
「なんか火焼といい争いしてたっぽいけど…あんま見てなかったからわかんねぇや」
「あぁ〜…学校まで来るのホント嫌なんだけど…」

Rに色々とツッコミが追いつかないムスカ。そしていつの間にかウキウキとするすみも側にいた。
「Rっていうのか!オレはすみ!すみの国の王様の死神だ!よろしくなっ!」
会話を聞いていたようだが、このすみ、好きな人がロボだと分かってるのか分かっていないのかは不明である。
「死神…?ホントに…?」
ため息をついて天井を仰ぐムスカの横で、Rは不思議な感覚に囚われていた。

謎の喋る小さくて黒い奴の正体。何かとよく会う、解析しても正体不明なこの生物。

「おう!そ、それで、このクラスに転入した訳だがっ……その」
すみは何か言いたそうにもじもじする。2人には黒い点が微妙に動いてるようにしか見えていないが。

ロボである自分以上に、世にもファンタジーな小さな死神だというすみ。

「こ…これから…一緒に甘酸っぱい青春を送ろうなっ!Rっ!」

だが、メカニックな少年は思った。
これから面白くなってきそうだと。

「うん……よろしく。すみ!」

Rは笑顔ですみに答えた。

すみの言葉に重い愛情がこもっているとも知らずに……。


END



+++あとがき+++

そんな訳ですみがムスカ達のクラスメイトになりました!
てかじいやとかすみの国サイド出せてないけど、そこはまた今度という事で…。
毎回ながら書くの遅くてもう申し訳ないね!前編からどんだけたってんだよと!
クラスメイトをざわざわと出したかったので、山地も初登場という形になりました。不良になりたいけどなりきれていないうるさい系の奴です。
でも一番嬉しいのはこれですみを自由に出せると言うことですね!

もうすぐ僕母復活一周年!近いうちにまた会いましょうー!

2015.1.17 紀紗
最終更新:2015年01月17日 11:57