幼い頃、ボクと彼女はよく遊んだ。
ふたりだけ、森の中で摘んだあの花
彼女の柔らかい金の髪によく似合うあの青い花
あの花の名前は、なんというのだろう……?
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「…さん、神崎さん!!」
「?」
いつの間に物思いにふけっていたのだろう。
授業中に先生にこんなふうに呼ばれるのは初めてだ。
「あなたやる気あるの!?前に出て問2を解きなさい!」
頭を占めていた甘い思い出をそっとしまって、教科書を持って前に出る。
この問題は昔復習したきりだ、思い出せるだろうか。
と、チョークを持って問題を見ると、案外簡単な基礎の練習問題だった。
サラサラと解いて席に戻る。
「っ……正解ね。まあいいわ。ちゃんと授業は聞くように」
「はい、すみませんでした。先生」
悔しそうな先生を一瞥して、手元に目をやる。
ノートには黒板にある文字はなく。
ノートの下に忍ばせた最新の論文誌をようやく父に譲ってもらえたので、読んでいたところだった。
なにか考えていた気がするけど、なんだっただろうか。
忘れてしまった。
忘れるということは瑣末なことだったということなのだろう、と自分を納得させて、3つ目の論文に目を通し始めた。
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その頃、授業中の歌恋は突然机に投げられた手紙を読んでいた。
「歌恋ちゃんへ!その髪飾りかわいーね♪♪どこで買ったの??」
どうやら手紙の送り主は華神有姫奈の様だ。
有姫奈とは服装のことで一緒に火焼に絞られてから少し、暇な休日には二人でアクセサリーを見に行ったりするほどには親密になっていた。
といっても、誘うのは有姫奈からがほとんどで、アクセサリーを見に行って購入するのも有姫奈なのだが。
歌恋も初めてできた友人と呼べる存在に少しではあるが心を許していた。
ふと有姫奈の方を見ると、ブレスレットをじゃらじゃらと鳴らしながら手を振ってきた。
ふ、と微笑みを返して手紙の返事を書く。
「これは、オーダメイドなの。華神さんがよければお下がりをあげましょうか?」
丁寧に畳んで、先生に見られないようにそっと有姫奈の方に投げた。
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「ねえねえ、キョーコさまっ!お昼ご一緒してもいいかしら?」
まただ。逃げきれなかったので、今日はこの子と昼食をとる。
「あなた、ずるいわよ!私が昨日キョーコ様と約束していたのを忘れたのかしら!?」
……と思ったのだけど、何やら話がややこしくなってきた。
「そんな約束、無効よ!だいたいあなた馴れ馴れしいわよ」
「なんですって!?」
ヒステリックな彼女たちの目を盗んで、教室を抜け出す。
「待って!キョーコ様がいないわ!」
「探すのよ!!」
確かに彼女たちは可愛い女の子だと思う。そこらにいる女性より美しいだろう。
だけど、ボクの中にはただ一人だけ、最上の女の子がいるのだ。
その子と比べると、彼女たちのなんと醜いことだろう。
広い学園の隅にある、人っ気のない庭園にボクは逃げ込んだ。
最近見つけたこの場所は、教室内の喧騒を忘れるにはもってこいの場所だった。
ふう、と一息ついて少し潰れてしまったサンドイッチを取り出す。
昼食はいつもトマトサンドだ。ある女の子が好きだったから。
食べ終えて、草の上に寝転ぶ。
あの教室に戻るのが嫌になってくるほど、この庭園は静かだった。
まるで、ここだけ時が止まったかのようだ。
「少し、眠くなってきたな…」
教室に戻る気は最早一ミリもなく、ついでに昨日は徹夜で論文を読んだということを思い出した。
すると、一気に眠気が押し寄せてきてボクは一眠りすることを決めた。
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放課後、歌恋は有姫奈を家に招待した。
メイド達はみな驚いた顔をしていたが、ひと睨みするとおとなしくなった。
「うわ…歌恋ちゃんってほんとにお嬢様……」
「あまり見ないでくださいね、恥ずかしいから。」
「えっ!……っていわれてもなぁ、見ちゃうよ、きれいだもん」
そして、何度目かの扉を過ぎた先で
「着きましたよ。ここが私の」
「歌恋ちゃんの部屋だね!」
「いえ、私のアクセサリー部屋ですよ」
歌恋は扉を開けて、中に有姫奈を通した。
有姫奈はこれ以上ないくらい目を輝かせた。
そこには数え切れないくらいの髪飾りがあったからだ。
「どれか、気に入ったものはあるかしら?あるといいのだけれど。」
「えっ、あっ!み、見とれちゃってたよ~、えへへ」
といいながら、有姫奈はひとつひとつアクセサリーを手に取ってうっとりと眺めた。
そして、一際目をひく鮮やかな青い花の髪飾りを見つけて手にとった。
「わぁ…これすっごく綺麗」
「ぁ…ごめんなさい、それはあげられないわ」
歌恋は一瞬だけ寂しそうな顔をして、しかしすぐに笑顔になって言った。
「あわ、ごめん!そんなつもりじゃなくて、ただきれいだなあって!」
有姫奈は慌てて取り繕う。
「ふふ、そうでしょう?それ、私の一番のお気に入りなんですよ?」
「そうなんだ?その割には一回もつけてきたことないよね?」
歌恋はこんどこそ目を伏せて、寂しそうに笑った。
「それは、着けられないの」
「……なんでか、聞いてもいい、かなあ?」
「……そうね、あなたにならいいかもしれない。この花は…私の、初恋の人との思い出の花なの」
有姫奈は、初めて見る歌恋の悲しそうな姿に驚くと同時に、自分が持っている花の髪飾りを見つめた。
「初恋の、人…」
有姫奈は、歌恋の告白に、歌恋の秘められた大人な部分を感じた。
「ええ、まあ、何も言わずに突然私の前からいなくなってしまったのだけれど。」
「好きって、いったの?」
「……伝えたわ。だけど、返事はなかった。そんなあの人が私に似合うって言ってくれたのがその花よ。」
「そうなんだ…。違う学校なんだね…」
「そうね、どこかで暮らしているはずよ」
「じゃあ、また会えるよ!大丈夫♪」
「ふふ、そうね。ありがとう」
歌恋はキャラを作るのも忘れて有姫奈に笑いかけた。
「それにしてもこの花本当に綺麗だね、なんて名前なの?」
「えっと、確か……」
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「ふあ……あれ?もう夕方だ」
どうやら放課後まで昼寝してしまったみたいだ。
いくら睡眠不足とはいえ、こんなところで数時間も寝てしまうなんて。
「誰も、探してくれなかったのかあ」
その事実が、少しさみしいといえばさみしかった。
昔は、少しボクがいなくなったくらいで大騒ぎして泣いていた女の子がいたっけ。
肌寒さを感じながらふと花壇に目をやると、見たこともないような青い花があるのが見えた。
「あの花…」
ぼんやりと、思考を巡る。
思い出した。授業中、何を思い出していたのかを。
「ああ、あの子によく似合ったな……」
立ち上がって、花壇に近づく。
花は小さく、だが凛と咲いていた。
「夏が苦手で、それでも健気に、きれいに咲いてる。ほんと、あの子にそっくりだ。」
そっと、花弁に触れる。誰かが水をやったのだろうか、鮮やかな青から綺麗な雫がこぼれた。
「確かこの花の名前は……」
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「「チャイナブルー」」
おわり
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あとがき
はい、ナオです。今回は少し短めかな?
チャイナブルーはライチの味です。
ホントはカクテルのはなしが書きたかったんですけど、
こいつら未成年じゃん!!!!ってなったので、
お花の話にしました。綺麗だよね、コリダリス。
またこのコンビの話かよ、とか思われそうだったので
有姫奈も登場させてみました。
私が思うに、有姫奈はおいしいとこをもっていくポジションだと思います。
機会があればカクテルの方でも書くかもしれません(もちろんノンアルね!)
ではまたおあいしましょー!
H27.1.10 ナオ
最終更新:2015年01月11日 02:22