覚えていますか?あのハナシ
「ねぇムスカ、うちらのゲームを作らない?」
「は?」
秋月家のいつもの家のいつものリビング。荒地はいきなりそんな事を言い出した。
「何?ゲーム?」
ソファに座っていたムスカは今まで見ていたスマホから視線をあげ、思わず荒地の方を見てしまう。
「そう!なんかねぇ、おもしろそうじゃない?」
「いや何言ってんかわかんないんだけど」
ゲーム……それが一般家庭に普及しだしたのは1980年台からだといわれている。それにはアクション、パズル、PRG等様々なジャンルがあり、今やその媒体もスマホなのかPCなのか専用ハードウェアを使うソフトなのか多様化している。
もっというとカードゲームや人生ゲームなどのテーブルゲームやらも含まれ、もっともっというとキリがないほどだ。
ピンとこずクエスチョンを浮かべる息子に荒地はふふんと笑う
「聞いた事ないかしら?……『僕母を題材にしたRPGゲーム』って」
「あっ……なんかだいぶ前に聞いたような」
「でっしょ〜〜!?そのハナシを聞いた時ねぇ、うちとしてはムスカと冒険ができる!!ってのを楽しみにしてたのに、なんか全然報告なくてぇ〜、聞いてみたら『ストーリーも世界観も何も決まっていない』なんていうのよぉ!酷いと思わない!?」
口調が激しくなり始める荒地にムスカの中で嫌な予感がじわじわと膨らんでくる
「まぁそうだな……それで母さんは何を」
「だ・か・ら♡ そんな制作元のためにうちらでこんなゲームを作ってちょうだい!!ってのを固めてぶつけちゃうワケよ♡ムスカも協力してねん♡」
「……………」
めんどくせーと呟く声はもちろん荒地には届いていなかった。
☆
「はぁ〜〜……俺の貴重な休日が……」
「やあねぇ、中学生なんて母親と遊んでナンボじゃない♡」
「中学生だから母親と遊びたくないんですけど」
「じゃあムスカ、一応前提としてはこれは『パソコンで遊べる僕母キャラを題材にしたRPGゲーム』ってことになってるのよ」
母がハナシを聞かないのは分かりきっているので、ムスカは諦めて聞き手に入った。
「ふーん…それから?」
「それだけよ♡」
「げっ!本当に何も決まってないんだな」
「そうなのよ〜〜!まぁだから逆にいうと、ウチとムスカの恋愛PRGにしても、大冒険して二人の愛の力で世界を救うゲームにしても世界中に散らばってしまったムスカの写真を取り戻すゲームにしてもなんでもありなわけよ!」
「全部嫌なんだが!!??特に最初絶対やめろ!!!」
目をキラキラさせた荒地をムスカは激しめに嗜める
「んもう、今日も照れ屋なんだから♡じゃあムスカはどんなのがいいとかアイデアある?」
照れで否定した事なんざ一度も無いと記憶しているが、RPGのストーリーのアイデアか、とムスカは一度想像を膨らませてみた。
ーー剣と魔法の世界、仲間達との冒険、絆、襲ってくるモンスターに手強いダンジョン、そして最強の敵との戦いに打ち勝った後の平和ー
…なるほど、これを俺やこちに、Rなんかとパーティ組んだら楽しいかもしれない。他にクラスの連中も出てきたりして。異世界での冒険。なんだかワクワクしてきた
「どうかしらムスカ?どんなのがいい?」
だがこれにはある条件がある、快適プレイのためには絶対に外せないことだ。
「よし、俺に言えることはまずひとつだ。」
「なにかしら?」
「母さんが出てこないゲーム」
一瞬沈黙が走った。
いや、一瞬ではない、意外と長い沈黙だとムスカは感じてしまった
「…………あらムスカ、駄目よそんなのは……」
荒地がゆっくりめに返し始める。いつもの畳み掛けるような言葉も厄介だが、たまに来るこのモードの荒地も恐ろしさがより強まる
「お、俺はどうせなら友達とゆっくり異世界を楽しみたいね…!」
何もおかしなことは言ってはいない、男子中学生として当然の感情だ。母親の存在は時には忘れたいものなのだ。
「ウチはね、ムスカとパーティを組んで冒険が…!」
ゆっくりモードの荒地にこれ以上言わせてしまう前に思い切って上から被せた
「か、母さんは魔王に捉えられたプリンセス・ヤスコ!!俺たちが姫を助けにいくための冒険だっ!!」
母親にいう設定としては正直痛すぎる言葉だがこれがムスカの必殺法であった。羞恥と言いたくなかった感が混ざり合い、息まであがっている。
「まぁ、ムスカ………!」
荒地は驚いた表情をした後、一言
「それ、いいわね♡」
ムスカは小さくガッツポーズをした。
そして、「僕母RPGプロジェクト」のストーリー案
×××年、異世界ーー
魔王に囚われた若く美しきプリンセス・アレチ・ヤスコを助けるため、
一人の少年、ムスカが立ち上がった。街の仲間であり友人であるこちにとRとともに−−
手に汗握る壮大なストーリー!絆と友情!立ちはだかる強敵!
果たしてムスカ達はプリンセスを助けることができるのか!?
後日
「まあムスカ!『僕母PRGプロジェクト』の開発元から返事が届いているわ!」
「おっ、マジか!なんて書いてあるんだ?」
荒地は手紙を封筒から出す
「……『拝啓 荒地様とムスカ様 この度は素晴らしいアイデアをお送りいただきありがとうございました。
厳正なる審議の結果、荒地様を抜いての冒険は『僕母RPG』を名乗るには推奨しかねます。』」
「なんじゃそら!!!いいだろ母さん抜きで冒険しても!!なんでなんだよ!!」
納得いかないムスカはその場で地団駄を踏んで暴れている
「待ってムスカ!続きがあるわ!」
荒地は咳払いして続ける
「『尚、面白いアイデアではありましたので立場が逆(魔王に囚われたムスカを助ける荒地のストーリー)なら、やりようはあるかもしれません』ですって!」
「……………………え?」
続く?
あとがき
めちゃくちゃ久しぶりに小説というものを書きました。
リハビリを兼ねて短編を書いたのですが、なんの話にしよう!そういやRPG企画ってどうなったんだろう…と思ったので
荒地とムスカにミニ会議をしてもらいました。まじでなにも決まってない。ごめん。
PRG企画のこともですが小説の書き方も忘れすぎてタイトルはトリプルネーミングを兼ねています。(あとひとつはラストに出た懐かしのアレ)付け方はめっちゃ適当ですが……。
でもやっぱり楽しかったので小説もちまちま書いていくのがええなぁと思いました!
2023.4.22 紀紗
最終更新:2023年04月24日 16:59