2016年4月から1年間テレビ東京系で放送されたバトスピアニメの8作目『バトルスピリッツ ダブルドライブ』だが、DVD-BOXの受注がなかなか目標に達せず苦戦するなど、人気の面でかなり苦戦を強いられていた印象は否めない。
もちろん「ダブルドライブが大好きだ」という意見は否定されるべきではないし、実際に視聴者の中でもダブルドライブに否定的な意見一色であるわけではないだろう。
私もダブルドライブのすべてを否定したいわけではない。
このページではあくまで個人的意見としてなぜダブルドライブはバトスピアニメとして引っかかるのかについてまとめたいと思う。
ちなみにページ名に(アニメ)とついているのは同名のカードが存在するからである。
ルール
『ダブルドライブ』の作中において、特殊ルールを採用したバトルが多いように感じられる。
第8話 |
ソウルスポット |
異界デッキバトル |
第12話 |
ソウルスポット・ガイオーの壁 |
10ターン耐久バトル |
第23話 |
キキvsキモン一族の三賢者 |
1vs3 |
第29話 |
ソウルスポット |
1枚のカードのみを用いた詰めバトスピ? |
第33話 |
判定の地 |
2vs1で挑戦可能 |
第44話 |
駿太&ヨク(&ザルク)vsアルティメット軍団 |
恐怖の無限バーゴイル |
第48話 |
タツミ(&キキ&イヌイ将軍)vsシシ |
後述 |
第50話、第51話 |
駿太&ヨクvs和巳 |
2vs1 |
第8話のバトルはほんのご挨拶、異界デッキバトルである。劇中で一切説明がないが、一応当時の公式イベントでも採用されていたルールである。
第12話は、10ターン(往復5ターン)をひたすらに耐えるというバトルである。相手のライフを削っても勝利とはならない関係上、相手のコアの概念がどうなっているか怪しいところではあるが、まだマシなルールだろう。
第23話は1vs3のバトルである。ざっくりとしたルールは以下のような感じである。
- 3人側のライフは個別
- ターンは三賢者→キキ→三賢者の順番
- 1人の側が使用した効果(BP-など)は相手プレイヤー全てに及ぶ
このバトルの中でキキは「複数の敵と戦う時には1人ずつ確実に倒すのが定石」といった内容の発言をしている。
いや、
普通のバトスピは1vs1だからそんな状況ねえよ! スピリッツワールドではこのようなバトスピが頻繁に行われているのだろうか。
BANADI仕事しろ。
第29話はバトルと言えるのだろうか。作劇的な都合でスピリットのCGを使いたかっただけのようにしか見えない。
第33話での試練は、ざっくり以下のような感じである。
- 相手ライフは15個
- 相手スピリットは《海魔神》+《蜂王フォンニード》&《大地の忍ダイビート》、《天魔神》+《天剣の覇王ジーク・スサノ・フリード》&《騎士の覇王ソーディアス・アーサー》、《龍魔神》+《蓮華王センジュ》&《大天使ララファエル》の布陣
- 相手は上記以外のカードを使用しない
- 挑戦者は異魔神ブレイヴとスピリット2体を使用できる
- バトラー2人で協力して挑んでもよい
これをクリアすると《炎魔神》と《風魔神》を《超・炎魔神》と《超・風魔神》に書き換えてもらえる。色々とそれでいいのか。
第44話、なにこれ。
無限に増殖した《バーゴイル》がBPが下の相手に破壊されたり、三龍神と戦国六武将(3体)が湧き出てきたりするクソゲーである。
にもかかわらず駿太チームはしっかりとコストを支払ってカードを使用しているように見える(しかも十二神皇使えないハンデ付き)し、互いにアタック時効果を使用するなどして中途半端にバトルに見える。
まあシシがお遊びで考えたルールなんでそんなもんである。
挙句の果てには異世界からザルク兄さんが乱入してきて万事解決してしまい、十二神皇を取り戻した。
なお、別にザルク兄さんは以後役に立つカードを持ってきたとかではなく、活躍的にはここが最初で最後である。この後何してたんだっけこの兄貴。
あほくさ やめたらこのカードアニメ?
第48話、こちらもなかなかのクソゲーである。
- シシのライフは4つのソウルコア
- シシのフィールドには《辰の十二神皇ウロヴォリアス》《巳の十二神皇ティアマドー》《申の十二神皇ハヌマーリン》《子の十二神皇マウチュー》の4体
- シシのエンドステップ時にシシのフィールドのスピリットは回復
- タツミはコアを無制限に使用できる
- 途中キキとイヌイ将軍が乱入してくる
今更だがコアで指定されたコストを支払うというバトスピの基本中の基本が崩壊している。
こんなんだったらネルウァ!ダブシン!4点!して終わりである(実際友人とプレイしてみた実話)。
これらのトンチキルールの中では再現しやすい、再現してみたくなりそうなルールではあるが、ゲームとして成立させるには工夫が必要になるだろう。
まあシシがお遊びで考えたルールなんでそんなもんである。
第50-51話のラストバトルを飾るのも特殊ルールである。
- 和巳のソウルコアは2個、ライフは10
- 和巳がドローステップで引くカードは2枚、コアステップで追加するコアは2個
- ターンは駿太&ヨク→和巳→駿太&ヨクの順番
- 駿太とヨクのライフは同時に減る
「バトル相手は和巳しかいないけどヨクを留守番にするのはちょっと……」という事情が透けて見える歪なトンチキルールである。
このバトル最大のツッコミどころは別にあるのだが、それは後述。
ではこれらのトンチキルールのどこに問題があるのかというと、「バトスピを販促するアニメなのに実際のゲームでは再現できない描写をしている」という点である。
もちろん友人同士互いに了承を得ていれば再現プレイもできるであろうが、公式が提供しているルールではありえない描写であることには変わりない。
例えばアニメ『遊戯王』でも『遊戯王オフィシャルカードゲーム』で再現できない描写は多々ある。これは『遊戯王OCG』が原作先行で生まれたカードゲームであることの影響であるといえるだろう。
一方、バトスピはカードゲームありきでアニメが作られている。演出の都合でゲームとしては間違った描写になることは少なくないが、ルールそのものを都合よく改変してしまうのはいかがなものだろうか。実際のルール上でバトスピの楽しさや白熱のバトルを魅せるのがバトスピアニメの役割ではないだろうか。
ガバガバプレイング
『ダブルドライブ』のバトルで槍玉に挙がりがちのは《未の十二神皇グロリアス・シープ》の扱いだろう。
グロリアス・シープを使用したバトラーの敗因はほぼ「効果の使い過ぎによってデッキが足りなくなり、ここ一番でライフを守りきれなかった」ことである。
メイとの戦いでこれを指摘したキキも同じことをやらかしている。アホか。
個人的には『ダブルドライブ』屈指のガバとしてラストバトルの最終ターンの攻防(?)を挙げたい。
《光魔神》+《超・十二神皇エグゼシードF》&《超・十二神皇ゲイル・フェニックスZ》のシンボルとBPの暴力で迫る駿太とヨクに対し、シシは和巳に《スクランブルブースター》で《邪神皇デスピアズ・ゾーク》を疲労ブロッカーにした上で《絶甲氷盾》を使用してアタックステップを終了させろと指示を出す。そうなればデッキの無い駿太とヨクは敗北する。しかし和巳はこれを拒否して敗北した。
すなわちバトルとしては主人公側の実質敗北である。ラストバトルが実質敗北でええんか。
そもそもバトル中にシシがネタバラシしていなければ和巳の離反はなく、駿太とヨクは敗北していただろう。
シシの悪役としてのガバガバプレイングが光る。
インチキおじさんサンドラット
《子の十二神皇マウチュー》はサンドラットが使用していたカードである。
低コストで先行1ターン目から《封印》できる関係上、アニメのバトルでも序盤に出そうとするのは自然な流れである。
あろうことかサンドラットはイカサマでマウチューを使用するのである。
前もってアフロに仕込んでいたマウチューを手札とすり替えることでサンドラットは必ず自分の最初のターンにマウチューを召喚している。
このことは劇中では咎められていない(駿太たちに気づかれていた節はある)。マウチュー初登場の第30話はもちろん、サンドラットがメイのバトルに感銘を受けてキキとのバトルに挑む第36話でも同じ方法を使っている。「男の意地」を見せてもイカサマで全部台無しになってんだよ!
競技アニメ(スポーツやホビー)などにおいて不正を行ったキャラクターは主人公に完膚なきまでに叩き潰されるなど、それ相応の報いを受けるのが普通である。しかしサンドラットは最後まで不正そのものを咎められることはなく、改心した後も不正を行っている(それは改心していないのでは?)。こんなカードバトラーの屑が味方にいるんだぜ?
何よりも哀れなのが、マウチューはまともな方法でフィールドに出たことがないという点である。光魔神はノーカン。
キースピリット
主人公2人のキースピリットは馬と鳥である。
これまでのシリーズのキーカードがドラゴンであったことを考えると、これは革新的ともいえるが、馬と鳥ってドラゴンや獣に比べてアクションさせづらくないだろうか……?
バトスピアニメの最大の魅力はCGで描かれるスピリットの大立ち回りにあるといえる。
しかし、よりにもよって馬と鳥という立ち回りには不向きそうなモチーフを用いたスピリットたちには、印象に残るアクションシーンが少ない。乱暴に言えば馬は走って角を突き刺し、鳥は飛んで毎週アメジスト・ドラゴンをつついていただけの印象である。
鳥といえば、アニメ『ソードアイズ』の《光牙鳳凰レックウマル》vs《黒き骸王バルトアンデルス》のバトルは今なお評価が高いCGアクションのように感じられる。このように馬や鳥でカッコよく立ち回るのは不可能ではないのだろうが、『ダブルドライブ』でのイメージの乏しさにやはり難しさを感じてしまう。
馬と鳥にはこれに加え、カードとしての扱いにも過去にない点があった。
それぞれのカードは「超・十二神皇」のカードにバトル中に書き換わっているのである。
それ以前のシリーズにおいてはカードそのものが別のカードに変化してしまうという事はなかった。
『ダブルドライブ』においては十二神皇に先駆けて主人公2人の異魔神が試練を乗り越えた結果別のカードに変化している。これはバトル外のことであったが、エグゼシードは手札において、ゲイル・フェニックスはあろうことかフィールドでアタック中に変化している。
これまで一切そのような描写をしなかったバトスピアニメにおいて、是非はさておきこの描写は異質さを感じざるを得ない(個人的には石川てつや氏がこの描写に苦言を呈していたことが忘れられない)。
最後に、エグゼシードFとゲイル・フェニックスZが使用されたバトルはそれぞれ2回ずつしかないことを記しておきたい。もっと出番やれよ!
W主人公
そもそも、駿太とヨクの「W主人公」自体にカードアニメとして無理があるのではないだろうか。
バトスピは基本1対1でプレイするゲームである(過去にはタッグバトルルールも存在したが)。
そうなると基本アニメも1対1のバトルを軸に作っていかなければいけないわけで、主人公と敵陣営のバトルとなると2人のうちのどちらかしか参加できず、主人公1人あたりのバトル回数は半分になってしまう。
しかし主人公のバトル回数自体は問題とは言えない。主人公がバシン1人ならばジークフリードが毎回登場するところを、主人公2人が別々のデッキを使えばその分多彩なバトルの描写が期待できる。
問題になるのは「ラストバトルをどうするか」という部分である。
普通ならば主人公とラスボスあるいはライバルがバトルをするところであるが、W主人公を標榜した以上どちらか一方だけをバトルさせるのはいかがなものか。
実際の『ダブルドライブ』では「駿太&ヨクvs和巳」の特殊ルールでのバトルになったわけだが、なるべくトンチキルールを使わずに主人公2人をバトルさせるにはどのような方法があるだろうか。
「駿太vs和巳」「ヨクvsシシ」の2戦を同時進行されば格好がつきそうである。
しかし、ラストバトルを2戦同時進行すると視聴者側としてはバトル状況の理解が難しくなるだろう。加えてバトルフィールドが別々だとエグゼシードFとゲイル・フェニックスZの共闘といったおいしい要素を取り入れにくくなる。
漫画『ダブルドライブ 六大輝石編』では「駿太vs璃人」「ヨクvs
ホワイトナイトジャックさん」の2戦同時進行であった。
「駿太&ヨクvs和巳&シシ」のタッグバトルならば描写しやすそうだが、肝心のタッグバトルルールは捨て去られてしまっている。
漫画『ダブルドライブ』では「駿太&ヨクvs和巳&タツミ」の形でこの方法をとっている。
これでええやん。
説明不要の熱い展開、遊戯王で言ったら「遊戯vsアテム」「遊馬vsアストラル」といったところである。
実は劇中において駿太とヨクがバトルしたことは一度もない。ならばなおさらラストバトルでこの対戦カードを実現させてほしかったところだが、尺の都合か実現には至らなかった。そこはトンチキバトルを削って実現しろよ。
ラストに主人公2人がバトルしておけばW主人公でもカードアニメは作れそうな気がしてきたが、『ダブルドライブ』はそうはならなかった。
そもそもW主人公するぐらいならゲーム側もタッグバトルルールを整備するぐらいの連携が必要ではないだろうか。
最後に
もし次のバトスピアニメがあるならば、このような問題は極力なくしてほしいと思う(小学生並みの感想)。
もし次のバトスピアニメがあるならな。
最終更新:2018年07月11日 07:29