真田夫婦の場合
「良いにおいがするな、佐助」
そういって幸村はひょっこりと顔を出した。
「出来るまで待っていてよ、真田の旦那」
陣中にあっても食事はしっかりと作る佐助の居所を、幸村はあっという間に探し出す。
多分、食べ物の匂いに引かれてやってくるのだろう。
割烹着を着て、菜箸と鍋の蓋を持って火加減を見ている後ろ姿を見つけると、後ろからぎゅっと抱きついた。
「うわっ、ちょっと旦那・・・」
「んー、佐助からも良いにおいがするでござる」
幸村が佐助の項に鼻を寄せた。
こそばゆい感触に、佐助は鍋の蓋を取り落としかける。
思いのほか大きな音に驚いて、幸村もバッと身を離した。
「ほら夕飯が出来ないと、お館様にも迷惑かかるでしょ?」
ご飯の後でゆっくりと相手してあげるから、と振り返って片目を瞑った彼女の顔を見た幸村は、目をきらきらとさせながら愛する妻へと抱きついた。
「佐助ーっ!!」
「しょうがないなぁ」
苦笑しながらも、どことなく佐助の頬も緩んでいた。
そういって幸村はひょっこりと顔を出した。
「出来るまで待っていてよ、真田の旦那」
陣中にあっても食事はしっかりと作る佐助の居所を、幸村はあっという間に探し出す。
多分、食べ物の匂いに引かれてやってくるのだろう。
割烹着を着て、菜箸と鍋の蓋を持って火加減を見ている後ろ姿を見つけると、後ろからぎゅっと抱きついた。
「うわっ、ちょっと旦那・・・」
「んー、佐助からも良いにおいがするでござる」
幸村が佐助の項に鼻を寄せた。
こそばゆい感触に、佐助は鍋の蓋を取り落としかける。
思いのほか大きな音に驚いて、幸村もバッと身を離した。
「ほら夕飯が出来ないと、お館様にも迷惑かかるでしょ?」
ご飯の後でゆっくりと相手してあげるから、と振り返って片目を瞑った彼女の顔を見た幸村は、目をきらきらとさせながら愛する妻へと抱きついた。
「佐助ーっ!!」
「しょうがないなぁ」
苦笑しながらも、どことなく佐助の頬も緩んでいた。
伊達主従の場合
「今日は丁度良い野菜が取れましたぞ」
「こいつの皮を剥けば良いんだな」
台所に立ち、小気味良い包丁の音が響く。
いつもの勇ましい戦装束も好きだったが、割烹着を着て立つ小十郎の姿も政宗は好きだった。
互いに料理の事を話しながら、こうして並んで夕食を作るのも良いな、とまるで新婚さんのような気分を噛み締めていた。
「…政宗様?」
考え事をしているのか、手の止まった政宗の様子に訝しげに声をかけてきた。
ほぼ同じ身長だが、若干小十郎の方が低い。
僅かに首を傾げて政宗の方を覗き込むその仕草に、思わず心臓が跳ね上がる。
戦場では凛々しく見える顔も、ふとした瞬間に無防備な表情を見せる。
「小十郎」
「はい?…って、政宗様っ!今は刃物を持っているのですぞ!」
急に抱きついてきた主を強制的に振り払う事も出来ず、小十郎はとりあえず大声を上げて抗議する。
「…Sorry、お前がとても可愛く見えてたまらなかったんだ」
ちゅっと軽く口付けると、政宗は素直に手を離した。
「……今度は許しませんからね」
そう言いながらも、小十郎の耳が僅かに赤く染まっているのを、政宗はしっかりと見ていた。
「こいつの皮を剥けば良いんだな」
台所に立ち、小気味良い包丁の音が響く。
いつもの勇ましい戦装束も好きだったが、割烹着を着て立つ小十郎の姿も政宗は好きだった。
互いに料理の事を話しながら、こうして並んで夕食を作るのも良いな、とまるで新婚さんのような気分を噛み締めていた。
「…政宗様?」
考え事をしているのか、手の止まった政宗の様子に訝しげに声をかけてきた。
ほぼ同じ身長だが、若干小十郎の方が低い。
僅かに首を傾げて政宗の方を覗き込むその仕草に、思わず心臓が跳ね上がる。
戦場では凛々しく見える顔も、ふとした瞬間に無防備な表情を見せる。
「小十郎」
「はい?…って、政宗様っ!今は刃物を持っているのですぞ!」
急に抱きついてきた主を強制的に振り払う事も出来ず、小十郎はとりあえず大声を上げて抗議する。
「…Sorry、お前がとても可愛く見えてたまらなかったんだ」
ちゅっと軽く口付けると、政宗は素直に手を離した。
「……今度は許しませんからね」
そう言いながらも、小十郎の耳が僅かに赤く染まっているのを、政宗はしっかりと見ていた。
瀬戸内夫婦の場合
「…お、これは美味いじゃねぇか」
湯気を立てる鍋から、元親はちょっと一口失敬した。
次の瞬間、おたまで勢い良く手の甲を弾かれる。
「貴様は夕食まで待てないのか、長曾我部」
珍しく割烹着を着て台所に立つ元就は、手元の本から顔を上げると、元親をぎろりと睨んだ。
「待てない」
きっぱりと宣言するあたり、男らしいと言えばそうかもしれないが、少々子供じみているように思われ、元就は頭を押さえた。
「そこで図体の大きな貴様が立っていると、我の視界に入って邪魔でならぬ」
「じゃあ、見ているだけ」
「いらん」
今度は包丁を向けられ、思わず元親は後退りする。
「あっぶねぇ…包丁は振り回すもんじゃねぇだろ、元就!」
びたん、と壁に張り付き、彼女の顔を見下ろす。
「それほど我は信用ないのか……元親?」
ほんの少し柳眉を寄せて、ぽつりと呟く元就の声に、元親は不覚にも萌えてしまった。
「そんなんじゃねぇよ」
元就の手から器用に包丁を取り上げると、胸元へと抱き寄せた。
「…好いた女が自分の為に食事を作ってくれるっていうのが嬉しいんだよ」
ぽん、と胡桃色の髪に手を置き、ぎゅっと抱く。
「……では素直に待て」
するりと伸びた腕が元親の首へと絡んだかと思ったら、元就の方から口付けてきた。
「食事が出来ねば、この続きはないぞ?」
薄く笑みを浮べる元就の顔を見ながら、元親は参ったな、と頭を掻いた。
湯気を立てる鍋から、元親はちょっと一口失敬した。
次の瞬間、おたまで勢い良く手の甲を弾かれる。
「貴様は夕食まで待てないのか、長曾我部」
珍しく割烹着を着て台所に立つ元就は、手元の本から顔を上げると、元親をぎろりと睨んだ。
「待てない」
きっぱりと宣言するあたり、男らしいと言えばそうかもしれないが、少々子供じみているように思われ、元就は頭を押さえた。
「そこで図体の大きな貴様が立っていると、我の視界に入って邪魔でならぬ」
「じゃあ、見ているだけ」
「いらん」
今度は包丁を向けられ、思わず元親は後退りする。
「あっぶねぇ…包丁は振り回すもんじゃねぇだろ、元就!」
びたん、と壁に張り付き、彼女の顔を見下ろす。
「それほど我は信用ないのか……元親?」
ほんの少し柳眉を寄せて、ぽつりと呟く元就の声に、元親は不覚にも萌えてしまった。
「そんなんじゃねぇよ」
元就の手から器用に包丁を取り上げると、胸元へと抱き寄せた。
「…好いた女が自分の為に食事を作ってくれるっていうのが嬉しいんだよ」
ぽん、と胡桃色の髪に手を置き、ぎゅっと抱く。
「……では素直に待て」
するりと伸びた腕が元親の首へと絡んだかと思ったら、元就の方から口付けてきた。
「食事が出来ねば、この続きはないぞ?」
薄く笑みを浮べる元就の顔を見ながら、元親は参ったな、と頭を掻いた。