どんなに生が虚しかろうが、人は腹も空くし、呼吸も繰り返す。
滑稽だった。
生きる意味を失って尚、食物の命を摂取して生きている自分が。
毎日新たな着替えと、食事を与えられた。
専用の小間使も与えられた。
それを只受け取るのが悔しくて、俺は毎夜訪れる久秀相手に、代償として身体を差し出した。
まるで取り決めでも交わしたかの如く、久秀は同じ時刻に姿を見せた。
今夜も欠けた月が天に昇り、その爛れた刻がやってくる。
俺は居住まいを直すと、敷かれた一組の褥脇にきちんと座した。
やがて、判を押したかの様な、一寸狂いない足音が近付いて来る。
障子戸が開けられて月の光が部屋に差し込む前に、俺はまた、一切の感情を押し殺した。
「毎夜そう畏まらなくても良いのだよ」
深々と頭を下げた寝所姿の俺を一瞥して、久秀は半ば呆れ気味に呟いた。
「それとも、それが君の自尊心と言うやつかね」
今度は侮蔑した様な声が頭上から降り懸かる。
そうなのだろうか。ただ、寝所での作法はこうなのだと、侍女に耳打ちされた通りに振る舞っているだけだった。
儀礼的な行為には、儀礼的に振る舞えば良い。
それを自尊心と思うのならそれで良い。
どさり、と耳元で聞こえたものは、俺自身が褥に押し倒された音だった。
「まったく、強情な女だ」
俺の喉笛に喰らい付く様な形で、久秀は言った。
「躰の方は、こんなにも素直になって来たと言うのに」
言って久秀は、はだけた俺の襟元から零れる、片方の乳房を形取る様に人差し指でなぞった。
尖端に触れられ、びくりと俺の身体が跳ねる。
嫌だった。
傷も癒えた。
行為にも慣れた。
痛みはなくなっていた。
それが嫌だった。
開いていく躰。昂ぶる熱。どうにもならない自身が腹立たしかった。
いや、既にどうにかなりそうな位、俺の躰は快楽に馴染んでしまっていた。
「ん……」
胸の突起を口に含まれるのと同時に、身体の中心に割って入られ、俺は喉を鳴らして小さくのけ反った。
ころころと、飴玉を転がす様な舌の動きに気を取られていると、無防備になった下肢を一気に責め立てられる。
「ぅあ……っ!」
最も弱い部分をなぞり上げられ、俺は思わず悲鳴の様な喘ぎ声を漏らした。
久秀がそれを見逃す筈は無い。
逃れようとする俺の腰を押さえ付けて、執拗にそこを責め続けた。
「や……あ……やめ……っ!」
高まり過ぎた熱に支配され、俺の四肢はびくびくと揺れた。
「止めて欲しいと?こんなにも溢れさせておいてかね」
言い様久秀は、その太い指を俺の中へ滑り込ませた。
ぐちゅり、と卑猥な音が俺の耳にまで届き、恥ずかしさから消え入りたくなる。
そんな俺の様子を楽しむ様に、久秀はわざとぐちゅぐちゅと音を鳴らして陰口を掻き回した。
「ぅあ……!あぁっ!」
久秀の指は、確実に俺の弱い部分を突き続けた。
もう、どこからどこまでが自分の身体なのか判らなくなる程に、全身が熱に浮かされている。
「や……っ……あ……ッ!」
限界まで達しそうになった瞬間に指を引き抜かれ、俺は息荒く全身をぐったりと投げ出した。
「ふ……っ」
休む間もなく、完全に怒張しきったそれを宛がわれる。だがすぐに侵入する様子も見せず、それは焦らす様にゆるゆると陰唇をなぞり続けた。
「これが欲しいのかね?」
久秀は意地悪く口の端を上げながら、ゆっくりと先端だけを押し付けた。
問いに答える事が出来ずに狼狽していると、再び先端を引き離され、それを陰核に擦り付けられた。
「ひぅ……ッ!」
敏感になったそこは、その感触だけでも耐えられず、全身を打ち震わせた。
「どうした、"入れて下さい"とねだって見せたまえ。これが欲しいのだろう?」
久秀のものは、熱を帯びて俺の秘部を刺激し続けた。
こんな屈辱を、味わった事などなかった。
何故、抱かれたくもない男に、この様に媚びなければならないのだろう。
そんな考えを払拭する程に、俺の頭は快楽に朦朧としていた。
歯噛みしながら意を決し、張り付いた喉から声を絞り出す。
「……入れ……て……」
その先の言葉は、掠れて空を舞った。
それでも久秀は満足げに、昂ぶりきった熱を一気に俺の中へと押し込めた。
「あ……あぁ……ッ!!」
焦らされた分なのか、感覚はいつもの数倍に勝っていた。
満たされる内部に、躰が悦びを訴える。
あぁ、嫌だ。嫌だ。
嫌なのに、流される。
じゅくじゅくと乱暴に突かれる度、四肢は快楽に踊った。
何度も何度も、意識を手放しそうになる程の高揚の中で、俺は倒れ込む様に気をやった。
滑稽だった。
生きる意味を失って尚、食物の命を摂取して生きている自分が。
毎日新たな着替えと、食事を与えられた。
専用の小間使も与えられた。
それを只受け取るのが悔しくて、俺は毎夜訪れる久秀相手に、代償として身体を差し出した。
まるで取り決めでも交わしたかの如く、久秀は同じ時刻に姿を見せた。
今夜も欠けた月が天に昇り、その爛れた刻がやってくる。
俺は居住まいを直すと、敷かれた一組の褥脇にきちんと座した。
やがて、判を押したかの様な、一寸狂いない足音が近付いて来る。
障子戸が開けられて月の光が部屋に差し込む前に、俺はまた、一切の感情を押し殺した。
「毎夜そう畏まらなくても良いのだよ」
深々と頭を下げた寝所姿の俺を一瞥して、久秀は半ば呆れ気味に呟いた。
「それとも、それが君の自尊心と言うやつかね」
今度は侮蔑した様な声が頭上から降り懸かる。
そうなのだろうか。ただ、寝所での作法はこうなのだと、侍女に耳打ちされた通りに振る舞っているだけだった。
儀礼的な行為には、儀礼的に振る舞えば良い。
それを自尊心と思うのならそれで良い。
どさり、と耳元で聞こえたものは、俺自身が褥に押し倒された音だった。
「まったく、強情な女だ」
俺の喉笛に喰らい付く様な形で、久秀は言った。
「躰の方は、こんなにも素直になって来たと言うのに」
言って久秀は、はだけた俺の襟元から零れる、片方の乳房を形取る様に人差し指でなぞった。
尖端に触れられ、びくりと俺の身体が跳ねる。
嫌だった。
傷も癒えた。
行為にも慣れた。
痛みはなくなっていた。
それが嫌だった。
開いていく躰。昂ぶる熱。どうにもならない自身が腹立たしかった。
いや、既にどうにかなりそうな位、俺の躰は快楽に馴染んでしまっていた。
「ん……」
胸の突起を口に含まれるのと同時に、身体の中心に割って入られ、俺は喉を鳴らして小さくのけ反った。
ころころと、飴玉を転がす様な舌の動きに気を取られていると、無防備になった下肢を一気に責め立てられる。
「ぅあ……っ!」
最も弱い部分をなぞり上げられ、俺は思わず悲鳴の様な喘ぎ声を漏らした。
久秀がそれを見逃す筈は無い。
逃れようとする俺の腰を押さえ付けて、執拗にそこを責め続けた。
「や……あ……やめ……っ!」
高まり過ぎた熱に支配され、俺の四肢はびくびくと揺れた。
「止めて欲しいと?こんなにも溢れさせておいてかね」
言い様久秀は、その太い指を俺の中へ滑り込ませた。
ぐちゅり、と卑猥な音が俺の耳にまで届き、恥ずかしさから消え入りたくなる。
そんな俺の様子を楽しむ様に、久秀はわざとぐちゅぐちゅと音を鳴らして陰口を掻き回した。
「ぅあ……!あぁっ!」
久秀の指は、確実に俺の弱い部分を突き続けた。
もう、どこからどこまでが自分の身体なのか判らなくなる程に、全身が熱に浮かされている。
「や……っ……あ……ッ!」
限界まで達しそうになった瞬間に指を引き抜かれ、俺は息荒く全身をぐったりと投げ出した。
「ふ……っ」
休む間もなく、完全に怒張しきったそれを宛がわれる。だがすぐに侵入する様子も見せず、それは焦らす様にゆるゆると陰唇をなぞり続けた。
「これが欲しいのかね?」
久秀は意地悪く口の端を上げながら、ゆっくりと先端だけを押し付けた。
問いに答える事が出来ずに狼狽していると、再び先端を引き離され、それを陰核に擦り付けられた。
「ひぅ……ッ!」
敏感になったそこは、その感触だけでも耐えられず、全身を打ち震わせた。
「どうした、"入れて下さい"とねだって見せたまえ。これが欲しいのだろう?」
久秀のものは、熱を帯びて俺の秘部を刺激し続けた。
こんな屈辱を、味わった事などなかった。
何故、抱かれたくもない男に、この様に媚びなければならないのだろう。
そんな考えを払拭する程に、俺の頭は快楽に朦朧としていた。
歯噛みしながら意を決し、張り付いた喉から声を絞り出す。
「……入れ……て……」
その先の言葉は、掠れて空を舞った。
それでも久秀は満足げに、昂ぶりきった熱を一気に俺の中へと押し込めた。
「あ……あぁ……ッ!!」
焦らされた分なのか、感覚はいつもの数倍に勝っていた。
満たされる内部に、躰が悦びを訴える。
あぁ、嫌だ。嫌だ。
嫌なのに、流される。
じゅくじゅくと乱暴に突かれる度、四肢は快楽に踊った。
何度も何度も、意識を手放しそうになる程の高揚の中で、俺は倒れ込む様に気をやった。