「あー痛ぇ…今凄い音したよな。
…アンタ、手ぇ大丈夫か?」
…アンタ、手ぇ大丈夫か?」
「貴様…一体何が可笑しい」
「いや、『用が済んだのなら即刻我の目前から消えうせよ!!』って事は、
用が済むまでは俺ここに居ても良いって事だよな」
用が済むまでは俺ここに居ても良いって事だよな」
「きっ…消えよ…」
「何でだよ。
別に話するだけだし、居たって良いじゃねぇか」
別に話するだけだし、居たって良いじゃねぇか」
「ならぬ…ならぬのだっ!!!」
「…………っ!?」
「これ以上貴様と居ると…心が揺らぎ、決意が…鈍る」
頑なに纏っていた氷の面が跡形も無く砕け、ゆるゆると頭を振りながら悲痛な面持ちを
むき出しにした元就を見て、ふいに元親の脳裏に大きな警鐘が鳴り響く。
むき出しにした元就を見て、ふいに元親の脳裏に大きな警鐘が鳴り響く。
…もう限界だ。
これ以上問答を続けたら、俺は毛利を傷つけるどころか…壊しちまう。
もう…潮時だ。
これ以上問答を続けたら、俺は毛利を傷つけるどころか…壊しちまう。
もう…潮時だ。
元親は一度きつく瞳を瞑り…ある事を決意した。
そして眼を開けると目前の元就に少しでも安堵を与えようと、努めて淡い笑みを浮かべる。
そして眼を開けると目前の元就に少しでも安堵を与えようと、努めて淡い笑みを浮かべる。
「分かった、もう消える。
この先も…金輪際アンタの前には現れねぇ」
この先も…金輪際アンタの前には現れねぇ」
「…………」
「だがその前に一つだけ聞かせてくれ。
今この瞬間、アンタが俺の事をどう思ってるか。
好きだの嫌いだのゴチャゴチャ言えねぇなら『可』か『否』か。
『か』か、『ひ』か…ただそれだけで良い」
今この瞬間、アンタが俺の事をどう思ってるか。
好きだの嫌いだのゴチャゴチャ言えねぇなら『可』か『否』か。
『か』か、『ひ』か…ただそれだけで良い」
「…………」
「…頼む。
どうかアンタ自身の言葉で、俺の想いに引導を渡してくれ」
どうかアンタ自身の言葉で、俺の想いに引導を渡してくれ」
「…………っ」
-その刹那、迷い子が親を見つけた瞬間のように元就の顔が切なげに歪み。
動揺した元親が心の準備をする間も無く、元就は全体重をかけて元親の胸にしがみついた。
元親はつい先ほどまで、喉から手が出るほど言葉での答えを欲していた筈だ。
にも関わらず、
-初めて、毛利の方から強く強く抱きしめられた-
その事実がもたらす悦びのあまり、何もかもが頭から消し飛び昇天しかけた。
だが元就はそんな元親には一切構わず、元親の耳元に紅い唇を寄せると、ただ一言
動揺した元親が心の準備をする間も無く、元就は全体重をかけて元親の胸にしがみついた。
元親はつい先ほどまで、喉から手が出るほど言葉での答えを欲していた筈だ。
にも関わらず、
-初めて、毛利の方から強く強く抱きしめられた-
その事実がもたらす悦びのあまり、何もかもが頭から消し飛び昇天しかけた。
だが元就はそんな元親には一切構わず、元親の耳元に紅い唇を寄せると、ただ一言
『か』
と…それこそ文字通り蚊の鳴くようなか細い声で囁いたのだった。