2010年9月21日 07時08分
大学生が夏休みなどに職場を体験するインターンシップ(就業体験)。企業と提携するなどして、積極的に取り組む大学が増えてきたが、その内容に不満を抱く学生も少なくない。中には氷河期の就活(就職活動)に苦しむ学生の足元を見て、人手不足の解消に使ったり、アルバイト代わりにしたりする例も。就職問題に詳しい識者は「職業を学ぶ本来の形になっていない」と警鐘を鳴らす。 (橋本誠)
「こんなはずじゃなかったのに…」
昨年夏、東京都内の有名ホテルで行われた二週間のインターンシップ。都内の私大に通う四年生の男子学生(21)=神奈川県=は、初日から頭を抱えた。
当時、就職活動の始まりを控えた大学三年生。ホテルの接客の仕事に興味があり、大学を通じて応募した。だが、膨らんだ期待はすぐにしぼんだ。
研修生が配属されたのは、レストランや客室清掃係。この学生は付属の娯楽施設の配属となったが、時折レストランで食器を磨く以外は、ずっと売店にいて、生ビールやソフトクリームの販売に追われた。売り子はアルバイトが多く、やり方も先輩アルバイトが教えてくれたという。
インターンシップらしい体験は、初日にホテル内を見学したことくらい。会社や業界について学ぶ機会も設けられなかった。
ホテルは家族連れでにぎわう時期。同じ売り場のアルバイトには千円前後の時給が出ており、納得がいかなかった。
学生は「人手不足だったのでは。こんなことなら行かないで、アルバイトしてました」とポツリ。IT関連企業に志望変更し、内定を得た今、「ホテルには『ありがとう』と言いたい。この経験がなかったら、幅広い業界を見ていなかった」と皮肉っぽく話す。
ホテル側は「ホテルにはフロントや宿泊だけでなく、レストランも宴会もある。あくまで研修であり、労働力とは考えていない」と説明。学生から不満が出ていることには「心遣いが足りなかった。今年から、中間期と終了時に責任者とのミーティングを加えた」と説明している。
インターンシップ名目で学生をただ働きさせる例は、後を絶たない。よく学生の相談を受けるという都内の私大教授は「ひどいのがある。三~六カ月もプログラム開発をさせて、まったく報酬を出さない例もあった」と打ち明ける。
旧労働省の一九九七年の通達で「見学や体験的な」仕事の場合、賃金を支払うべき労働者とはみなされないとされている。だが、会社と学生の関係によっては事実上の労働者とみなし、最低賃金が適用される。厚生労働省の担当者は「個別に判断する」と説明。今回の例が通達違反かどうかは答えなかった。
<インターンシップ> 大学、大学院、専門学校などの学生が企業や役所で実習、研修的な就業体験をする制度。大学が窓口になったり、学生が企業に直接申し込んだりする。文部科学省の2007年度の調査では、68%の大学で実施。75%の大学が3年生で行った。期間は1週間以上2週間未満が52%で最も多く、1週間未満も13%ある。1990年代に欧米から導入され、若者の離職率上昇を抑えようと政府が97年に推進を閣議決定。05年には全国で推計約12万人の大学生が参加した。
◆相談窓口設けあぶり出せ
1998年にインターンシップに関する報告書をまとめた政府の研究会で、座長を務めた諏訪康雄・法政大教授(雇用政策)の話 インターンシップのメリットは、社会経験が少ない学生が業界やビジネスの様子を垣間見られること。欧米には、社員の夏休みで空いた所に学生を入れる「サマージョブ」があり、報酬を出して6~8週間観察し、これはという人に仕事をオファーする。日本は企業や大学の夏休みが短く、インターンシップは長くて2週間。体験学習の一環で報酬を払わないことが多く、アルバイト代わりに使う企業が無くならない。企業PRに利用したり、「半日インターンシップ」と称し、ただの説明会を行ったりする企業も出てきた。だが、これからは企業の長期休暇に合わせ、夏休みに本格的なインターンシップを行うべきだ。議会や裁判所、警察なども率先して受け入れるとともに、各大学が相談窓口を設け「名ばかりインターン」をあぶり出してほしい。
(東京新聞)
ソース:東京新聞(TOKYO Web) http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010092190070854.html