ニセ科学の条件その1に関する問題
(科学-非科学間のグレーゾーン問題)
- 科学と非科学の間に明確な境界線を引くことはできない。何故なら「反証可能性の有無」や「反証されているか否か」といった内容は単純に決められるとは限らないからである。一例を挙げるならば、どのような分野であっても、最先端の科学は必ず「未科学」の要素を含んでいると言える。
- 「グレーゾーンのどこに境界線を引くか」あるいは「そもそも境界線を設定出来るのか」というのは科学哲学上の重要な問題である。しかし、実を言えば、この問題(線引き問題)と「ニセ科学の定義と判定の問題」は別々の問題である。つまり、線引き問題を棚上げにしたままでも、ニセ科学を定義し判定を下す事は可能なのである。
- グレーゾーンがある(科学と非科学に明瞭な境界線は無い)からといって、科学と非科学とが区別できないと考えるのはおかしい。白と黒がグレーのグラデーションをはさんで連続的につながっているからといって、白と黒が同じ色だという事にはならないし、もっと言えば、真っ白と明らかなグレーも違う色だし、明らかなグレーと真っ黒も違う色である。
- 「ニセ科学だ」として批判の対象となっているものは、見かけと実態の間に明らかな差異があるもの、つまり主張している色と実際の色が明らかに違うものである。
具体的には
真っ黒を真っ白だと言い張るもの
真っ黒をグレーだと言い張るもの
グレーを真っ白だと言い張るもの
明らかに濃いグレーを明らかに薄いグレーだと言い張るもの
等は、いずれもニセ科学に含まれる。
reference
ニセ科学の条件その2に関する問題
(「装っている」かどうかのグレーゾーン問題)
- 「装う」という語の意味に関しては定義の項である程度詳しく説明した。これは逆に言えば、詳しく説明しないと誤解されうるという意味でもある。
- 例えば(「ありがちな不毛な議論」のところでも説明するが)、「俺にはニセだと解っているから別に問題ない(≒騙される方が馬鹿)」という意見や「実害がなければ問題とは思わない(「自分の知る範囲内では」実害が無いと言っているだけ)」という意見などは「装う」の意味を正しく理解していないことと関連している。
- もう一つ例を挙げるなら「詐欺との類似」がある。どれほど馬鹿げた内容であろうとも、現実に騙された被害者が存在すれば詐欺は成立しうる。「騙される奴が悪い」という自己責任論にも一理あるが、自己責任論を振りかざすほど被害は拡大し結果として「悪人を利する」事になるだろう。また、殆どの場合、被害が表面化する前段階で既に多数の予備軍がいるという点にも注意を払うべきである。
- 大雑把にまとめると「知識量・判断力・リテラシーには個人により大きな差があるので、個人の経験を過度に一般化すべきではない」「被害が明らかになってからでは手遅れ」となる。