カオスファンタズマ Re:辺獄篇 異端録ログ①

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エリィ「――――……うぅ…いったた…っ……さっき打った腰がまだ痛い……(電脳空間を彷徨う一人の少女がいた。腰もとを片手で摩りながら猫背のような丸みを帯びた姿勢で壁を尽きながら、たどたどしい足取りで当てもなく歩いている―――) 」

エリィ「……みんな…どこ行っちゃったんですか……?まさか…私だけ……一人、逸れて…… さっきいたダクトと雰囲気も違うし……ここ、どこなんだろう……?(急に押し寄せる不安と孤独が、その歩みを阻害する。入口も出口も分からぬ迷宮に迷い込み、ましてやここへ来る道中に起きた「不慮の事故」によってまともに歩くこともままならず、苛まれていた) 」


――――――――― ザ ッ (彷徨う少女の前に、何かが現れる。ネオンライトの光源をバックに逆光を帯びたそれはひとつの人影を映しとっていた)


エリィ「 ……? ……! ……!? (目の前に現れたその人影に目を凝らしてよく見る。特徴的なシルエットに感じた既視感。そして、確信… 人影の正体を知ると疲労で閉じかけていた目がかっと大きく見開かれた)…き、『 君 』は―――――!? 」


グ ゥ オ ン ッ ――――――― ! (佇む影が少女の視界を覆い尽くす勢いで、迫った――――)



うちはオビト「―――――――……っ……!(エリィのチャクラを頼りにここまで来てしまったが…あの奇妙な穴に飛び込んだら妙な空間に出てしまった… まさか……ここがアークの言っていた「カーディナルゾーン」なのか…っ …?)(異端集団から別行動をとって数時間、行方不明になったエリィのために一人颯爽と捜索を行っていたが、不可思議な空間の空気感に冷や汗が垂れていた) 」

うちはオビト「(だが…間違いない…!エリィのチャクラを感じる… 着実に近づいている…!だが…一気に弱まっている…っ…!?一体何が……)…待っていろ、エリィ…!もうすぐ俺が―――――(嫌な予感がする。焦燥によって徐々に高鳴る鼓動を無理矢理抑え込むように胸元を牛と掴み、忍特有の疾走で電脳空間を駆け抜けていく) 」

そこから数分後、ただ通路が繋がるだけの無機質な空間であったが、遥か先の道の上に小さな影が蹲っていた。その正体こそ―――――― 」

エリィ「―――――――――(―――――オビトが探し続けていた少女、その一人であった) 」

うちはオビト「――――!(あれは…エリィ…!?間違いない…チャクラも紛れもない本物…)――――エリィ!!(通路の真ん中で蹲る少女を発見すると血相を変えて一目散に飛び抜け、瞬く間に彼女の傍へ駆け寄った)……まったく…随分探したんだぞ… こんなところで寝て…疲れたのか――――――― ッ゛ ! ? (少女の肩に手をかけて仰向けに転がしたその瞬間、表情が大きく一変。瞳孔が縮小し、絶句したように口が微かに開いた) 」

エリィ「―――――――――(オビトによって転がされたことで明かされた衝撃の事実。仰向けになった彼女の姿は、見るも無残なほどの重傷を負っていたのだ。打撲によってできたであろう痣だらけの全身、顔面。右ほおは大きく膨れ上がり、口の端から血が垂れ流れている。彼女自身が大事にしていたアイデンティーでもあるメダルや勲章までもが、ベキベキに砕けていた) 」




うちはオビト「……エリィ……――――――― エ゛ リ゛ ィ゛ ッ゛ ! ! (幼気な少女の無残な姿に居たたまれなくなり、ついにその身を抱き起して強引に何度も揺さぶり始める)…しっかりしろ…っ……エリィ……ッ……!いったい、何が……なんで…こんな…ことに……っ………! 」

エリィ「―――――――― ッ カ ハ ! (オビトに揺さぶられたことが起因したのか、息を吹き返したかのように激しく吐血しながら微かに再起動する)……ハァ……はぁ………っ………?ォ……おび、と……たい、ちょ……っ………?(開くことのできない目。だが、閉ざされた瞼は確かにオビトの方角へゆっくりと向き始めていた。彼の声を頼りにするように―――) 」

うちはオビト「……!(まだ息がある…!だが、チャクラもかなり激減して…衰弱しきっている……!?)ああ…俺だ…!遅くなって、すまなかった……っ…――――――(悔いるような震える声音で少女に応答するが―――) 」


コ ツ ン … コ ツ ン … コ ツ ン … ――――――(感動…とは程遠い二人の再会に水を差す様な、異様な足音がオビトたちの眼前から聞こえてくる。彼が見上げた先にいたのは――――――)


仮面ライダーパンクジャック「――――――――   オ゛   ゥ゛   ン゛   (黒素体の体に特徴的な南瓜頭を被った人物。オビトにとっても、エリィにとっても、見覚えしかないあの人物であった―――――) 」

うちはオビト「……………『 パンクジャック 』……… お前…なのか…… これは……っ……(現れた第三者。かつての部下にして同僚…"だった"人物に、怒りとも悲しみとも区別のつかない眼差しを向けた) 」

仮面ライダーパンクジャック → ニャイ「 ギ ュ ゥ ン ッ … ―――――― (腰もとに巻かれていたデザイアドライバーに手をかけ、ゆっくりと引き剥がすとともに返信が解除され、その正体であった黒猫の少女として姿を露わにする)……そう……アンタはいつもそうだった。肝心な時にいつも遅い。そして手遅れになる。今までも、今だって。 」

うちはオビト「――――――― ッ ! ? (黒猫の語る言葉に戦慄が過る。それもそのはず。どこかで聞いたことのあるその言い回しは、かつて闇に堕ちていた自分が恩師に向けて言い放ったものに類似していたのだから――) 」


―――― 今更説教か。遅すぎやしないか……先生。
アンタはいつも肝心な時に遅すぎるのだ。オレの師が火影でよかったよ。おかげで火影を諦められた。


うちはオビト「――――――……ぐッ………!(いつかの自分が放った言葉が、皮肉にも、現在(いま)の自分に深く突き刺さる。因果応報のように。心臓(むね)が酷く締め付けられる感覚に、呼吸が激しく乱れようとしていた―――) 」

ニャイ「それがアンタの罪。そして一生贖うことなんてできない。だから目を背けて逃げるしかない。偽りの仮面に本性を隠していた頃の様に。…………逃げなよ。 」

うちはオビト「―――――― ! ? 」

ニャイ「元同期として慈悲を与えてあげる。その娘を連れて逃げなよ。瀕死の人間を抱えてこれから先の戦いに臨むことなんてできないでしょ?ほら…―――――――― "逃げなよ" 。 」

うちはオビト「ッ゛――――――― ! (黒猫の低い声音が脳に叩きつけられていくく感覚に、己の矜持がへし折られていく。事実、プライドよりも今は人命救助。すでに虫の息であるエリィを救出するのが最優先である。そんなことは、気が動転している今でもよくわかっているつもりだった)……く…ッ…―――――― "神威" ! ( ギ ュ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ッ ! )(右目の写輪眼を起点に空間の一部が渦巻き、抱き上げていたエリィと自分自身を吸い込んで電脳空間から消え去った――――) 」



― 神威空間 ―



うちはオビト「――――― ス タ ン ッ … ! (エリィを抱き上げたまま、自身の写輪眼が構築する四角形の構造体のみが広がる隔絶空間に降り立った)……すまなかった……本当にすまなかった…エリィ……っ… 確かに俺のせいだ… 俺が…遅すぎたから……!もっと早くに行動に出ていれば、お前をこんな目に遭わせずにすんでいたかもしれないのに…っ……(悔いるように相貌を泳がせながら、静かにエリィの体を床上に降ろす) 」

うちはオビト「……っ……(俺には回復手段はない…急いで滅たちにコンタクトを送って神威に引き寄せなければ…このままではエリィが――――――)(耳元に備えていたインカムに手を伸ばそうとした、その時だった――――) 」


―――――― ゲ シ ィ ッ ! ! (突如として弾けた衝撃。オビトの顔面にめり込むような激痛が彼に襲い掛かったのだった)



うちはオビト「 が ッ ? ! (面食らった打撃に宙を舞い、しかして咄嗟的に受け身を取って着地する)……何が――――!?(強打した顔面部を片手で覆いながら眼前を見据える) 」

ニャイ「―――――― ス ト ン … ! (顔を上げたオビトの視線の先に、あの黒猫がいた。華麗な蹴りを入れたであろう挙動から静かに降り立つと冷徹な眼差しを彼に突きつけた)………バカだね。「逃げなよ」と言ったからって、「追いかけない」とは一言も言っていないよ。 」

うちはオビト「―――――!!(何故ここに…!?いや待て……まさか――――ッ!)……そうか…ッ……!あの時…"神威"が消える最後の瞬間に飛び込んできたというのか…!?(しくじった。思えば相手は自分のことを誰よりも知っている元部下なのだ。写輪眼の力を…自身だけが持ちうる"神威"の力を把握しきっていることに、今更気づく) 」

ニャイ「アンタの写輪眼…特に、物体をすり抜けるその"神威"は非常に厄介。だけど弱点もたくさんある。反撃の瞬間に実体化することや、すり抜けられている時間には制限があること。けどそれは戦闘の合間に見せる一時的な欠点であって、決定打にはならない。だから、最も大きな欠点を突くことにした―――― 」

ニャイ「神威は物体をすり抜ける能力じゃない。実際は、"現実世界ですり抜けた物体をこの神威空間に一時的に転送し、すり抜けているように演出していた"だけに過ぎない。攻撃を受けそうな時に自分身体をすり抜けているように見えたのは、その瞬間だけアンタの体は神威空間に逃げていただけ。つまり…――――― この空間内でなら、アンタは常に実体化している。ここでなら、アンタを殺せるってことだよ。 」

うちはオビト「ッ……!?(完全な論破。一見は万能に見える"神威"の欠点を淡々と、しかし的確に突いたその指摘に驚愕する)……流石だな… 俺の能力は既にお見通しだったか…っ…… ロウレクストの連中でも、この事実を知っているのはオラクルと滅…ほんの極一部だったのだがな…… (不味い…確かに奴の言う通りだ… この空間では"神威"は使えない…!生身の体で殴り合うリスクを強いられることになる…!俺としたことが…不覚…ッ……!) 」

うちはオビト「……(だが…手がないわけじゃない……!"神威"による転送は、その写輪眼を持つ者だけの特権…!奴をこの空間に紛れ込ませたのは失態だったが、脱出はそうはいかん…!このまま奴をこの空間に閉じ込めて、俺とエリィで脱出を――――) 」

ニャイ「―――― アンタの考えはすべて読めているよ、うちはオビト。このまま私をこの空間に置いて逃げ出せば、実質私は何もできずこのまま一生封印される。そんなことも知らないで飛び込むほど私もバカじゃない。(そう言うと、オビトの背後にいるエリィを指差し彼女の姿を促した) 」

エリィ「―――――――(今にも絶命しそうなほどに浅い呼吸を繰り返している少女だったが、よく見るとその首に、黒いチョーカーが嵌められている。エリィが決してつけないアクセサリー…その正体は―――――) 」

うちはオビト「――――――― まさか…ッ… ! ? (エリィの首元に嵌められたチョーカーの意味を悟り、表情が青褪める―――) 」

ニャイ「――――――――「起爆装置」だよ。私の意のままで、今すぐにでも彼女を逝かせられる。無理矢理外そうものならすぐに起爆させてあげる。装置を解除する方法はただ一つ―――――― バ ッ (愛くるしい猫の手で、自らの心臓部を指し示す)―――――― 起爆装置とリンクしている私の人工臓器を破壊すること。つまり、"私を殺せば"彼女を救うことができる。至極単純な事だよ。できるよね。何人もの命を奪ってきた忍のアンタならさ。 」

うちはオビト「…ッ……ぁ………?(愛くるしい見た目をした少女が淡々と語る言葉に、酷く狼狽する。大切な仲間を救うために、かつての同胞をこの手にかけること…)………(他の仲間たちやオラクルならば、裏切り者である目の前の少女を躊躇なく殺めるだろう。実際、それでことはすぐに片付く。しかし…この男「うちはオビト」は"違う"。確かに闇に堕ちたその過去では誰彼問わず多くの命を奪ってきた。しかしそれは、愛する者のため…。根っからのクズ野郎になりきれなかった不器用な男が辿ってきた道。その上、かつて愛した少女が、目の前の黒猫に重なっている。殺れる――――――わけがない。) 」

うちはオビト「―――――(できることなら、自分の命を差し出すことも躊躇わない。今の自分ならばそうするだろう。だが、ここまで綿密に自分を陥れてきた相手が、自分一人の命を代償にエリィを見逃してくれる保証はない。つまり、どちらにせよ殺るか殺られるかの結末を強いられるのだ。苦渋の決断…背後に横割るエリィに一瞥を与え、瞼を強く閉ざし―――――) 」

うちはオビト「―――――― カ ッ ! (右目の写輪眼が、決意を極めたように回転した)……お前の言う通りだ。これは…俺が俺に課した"罪"だ。何度も逃げ続けてきた、俺への… だが、もう逃げはしない…!男として…そして上司として……ここでお前を…―――――― 殺 す ッ ! 」


――――― それが…俺がお前にしてやれる…最後の手段だ…っ……


ニャイ「………(廻る写輪眼からオビトの覚悟を読み取った少女は鋭くその目を細める)……なら、私も答えは同じ――――― \ DESIRE DRIVER / (もともと腰に装着されていた黒いドライバーを再起動) \ SET / (傍らより取り出したモンスターレイズバックルをドライバー右側スロットへ装填する) 」

ニャイ「      変   身       」

ニャイ → 仮面ライダーパンクジャック「 ガ ァ ン ! \ ニャーッ ! / (バックルを押し込むことで起動)  \ MONSTER / \ READY FIGHT /  (南瓜仮面に黒スーツの素体へ変身した直後、パンクな星模様があしらわれた青い装甲が上半身に装着されることで、仮面ライダー「パンクジャック」・モンスターフォームへと変身を遂げた。それは、元ロウクレストとしての仮初の姿。スパイとして潜伏していた、偽りの姿―――――) 」

仮面ライダーパンクジャック「―――――――――― オムニバス・粛正班《 デバッガー 》・橙の部隊 隊長 『 ニャイ・ チェッシャー』。これより、侵入者のロウクレスト「うちはオビト」を粛正する。(星型のグローブによるファイトスタイルを取る) 」

うちはオビト「――――― LCCセキュリティ・隠密機動部隊-ε隊長 『 うちはオビト 』。 推して参るッ!! (片手で印を結び、因縁の決戦へと挑む―――――) 」





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最終更新:2025年05月19日 00:35