全ては一匹のケーシィから始まった(笑)。
ポケモンリーグへ挑戦しにやってきた一人のトレーナーがいた。
その者の名は『チルノフ』。彼女はケーシィによってリーグへと転送されたのだ。
「こっちだ…ついてこい。」
チルノフは何故か入口にいたゴンさんに導かれ、いよいよリーグへと突入する。
リーグで待ち構えているのはジムリーダーを上回る実力を持つ四天王と、チャンピオンだ。
緊張するチルノフに、応援に駆けつけてくれる人たちまでいた。
ダーク、ノホホ博士、ハヤテ、そして謎の赤いマントを覆った人…。
やく一名、只ならぬ気を感じる者がいたがちゃんと歓声していたようだ。
そして四天王戦。
その正体はなんと、誰もが知っている有名人ばかりであった。
カントー地方チャンピオン『グリーン』
ホウエン地方チャンピオン『ダイゴ』
シンオウ地方チャンピオン『シロナ』
そして、ジョウト地方チャンピオンであり、カオス地方の元チャンピオン『ワタル』
そしてなんと、この難敵四人に打ち勝つことが出来たチルノフ。
次はいよいよチャンピオンだ。
と、しかし…ワタルが敗れた直後さっきまで歓声していた赤いマントを覆った人が颯爽と姿を消した。
怪しく思った皆はすぐにチャンピオンの間へ。
するとなんと、本来ならチャンピオンの立ち位置であろう場にその人が立っていた。
これは一体どういうことなのか?
全員が疑問に不思議に思う時、ついに赤マントを覆った人が口を出した。
「・・・ ・・・ ・・・よく辿り着いた ここまで来れたのは きみの実力ゆえだ ・・・。」
赤マントを覆った人にチルノフは「貴方には…必ず勝ちます!」と宣言。
赤マントを覆った人の後ろから一匹のピカチュウがやってきた。が、このピカチュウ・・・よく見ると『でんきだま』を持っている。
も し か す る と ?
と、思う内に勝負は始まった。
チルノフはエンブオーを繰り出した。相手のピカチュウはボルティッカーという強力な技でエンブオーに強烈なダメージを負わせた。
さらにピカチュウはあまごいで雨を降らし、エンブオーの炎技を弱体化した。
そしてかみなりの命中率をあげ、更にエンブオーに大ダメージを喰らわせ、戦闘不能にまで追い込んだ。
チルノフが次に出したのはゼブライカだ。
しかしピカチュウのでんこうせっかによる先制攻撃でゼブライカもピンチに。
ここまで知略的な戦法は誰が使うのか?「流石はチャンピオン」と、誰もが口に出した。
雨が降るチャンピオンの間で、お互いのポケモンはへとへとになっていた。
しかしチルノフが最後に繰り出したポケモン、ブルンゲルのサイコキネシスを喰らい、ピカチュウがダウンした。
ついにチャンピオンに打ち勝ったチルノフ。赤いマントを覆った人も驚きを隠せなかった。
そして彼はこう言った「 ・・・ ・・・ ・・・ さすがだな ・・・ おれのうしろをついてまわっていた おまえが ここまでとは ・・・ 。」と。
誰もがその言葉に驚く。そして彼は、その覆っていた赤いマントを脱ぎ捨てた。
バサッ!!
赤いマントを覆っていた人の正体は、なんと……チルノフのあこがれの存在だった『レッド』であった。
「やはりお前だったか、レッド!」共に観戦していた者たちもかなり驚いていた。
チルノフはというと、勿論歓喜していた。それもその筈、まさかこんな処で師匠に出会うことになるとは…
更に念願の夢であった師匠レッドを超える事を、成し遂げることができたからだ。
しかしレッドは、これから何処かへ行くようなセリフを言った。
チルノフは初め…旅にでも出かけるのかと思ったが、違った。
レッドは「望みを果たした。これで安心していけるんだ…。」と言う。
その発言で誰もが絶句した。
そう、レッドは………
もう既に、死んでいたのだ。
焦るチルノフ、泣く博士、見送るダーク、黙りこむハヤテ。
辺りが悲しみに包まれた。
「 あぁ・・・・・俺の体は疾うに尽きた。ここにいるのは・・・未練を抱いた魂。自分を超えるほどのものが、自分に挑んでくる・・・そしてそいつが俺を超越する・・・。それが俺の・・・望みだった。 」
レッドは嬉しそうな顔で言った。
あまりの絶望に、周りの声など全く耳に入らなくなってしまったチルノフ。
そんなとき、レッドはチルノフに相棒を置いて行くといい、彼女にあのピカチュウを譲ったのだ。
チルノフはピカチュウを抱きしめた。
「こいつには・・・寂しい思いをさせてしまう。だが・・・きみのようなトレーナーがいれば、きっと・・・・・」
レッドの体が段々と薄くなっていく。
だがチルノフは泣かず、彼の手を握った。
「レ、レッド先輩…!…私、レッド先輩のためにも…頑張ります!!」
そしてレッドは「 ・・・・・おやすみ ぼくのピカチュウ・・・・・」と、呟いてこの世から消えてしまった…。
絶望のあまり泣くことができないチルノフ。しかし周りは皆おいおいと泣いていた。
泣くことのできないチルノフはただピカチュウを抱きしめた。
ピカチュウは抱きしめられ、彼女の悲しみを痛い程理解した。
「 …私のパートナーになってくれるか?」
チルノフはピカチュウに問う。ピカチュウはそれに黙って頷いた。
全てが終わったと思いきや、チャンピオンの奥の間から誰かがやってきた。
感動物の後は敵が出てくるのがお決まりだとは分かっていたが、こればかりは感動してしまう…。
「…マサラタウンのレッド・・・彼は誰よりも人とポケモンの共存を望んでいた。ボクに取って、彼はこの世の神様ともいえる存在だ…。」
奥の間から出てきたのは……Nだった。そう、彼はすでにレッドを倒して新チャンピオンとなっていたのだった。
Nの突然の出現にチルノフは我に返った。
そう…チルノフがこのポケモンリーグへ来た理由は、もう一つあったのだ。
それは、英雄Nとの決着だった。
Nは一部始終をずっと奥の間から見ていたのだった。そしてこう言った…
「彼のような人間がいれば、この世界の人とポケモンは仲良く渡り合えたはずだ。…けど現実はそう甘くはないね。彼がたった今亡くなった以上、もうこの世界も終わったようなものだ。 」
その言葉に怒り心頭に発したチルノフは、Nを睨みつける。
だがNは何事にも動じない。ただチルノフを見つめていた。
伝説のポケモン同士での決着を望むN。すると彼は突然片手をあげた。
「…地より出でよ!プラズマ団の城!このポケモンリーグを囲め!! 」
突如、ポケモンリーグ周辺で大きな揺れが発生した。
しかしこれは地震ではない。なんと、リーグの真下の地面から巨大な城が出現したのだ。
巨大な城はポケモンリーグを囲み、更にたくさんの黒い橋がリーグに突き刺さった。
Nは、あの巨大な城で全てを終わらせようと宣言した。
これが、本当に最後の戦い…
運命を賭けたラストバトルが今、始まろうとしていた…!
人とポケモンを解放させてたまるか!
チルノフ、ダーク、ノホホ博士、ハヤテの四人は黒い橋を渡ってプラズマ団の城へと潜入した。
だがそこで待ち構えていた者たちがいた。
“七賢人”
彼らはボスのゲーチス亡き今でも、プラズマ団として活動していた。
王のNを護るため、奴等はチルノフに襲いかかろうとしていた。
3対7とは不利があり過ぎる。
駄目なのか?そう思った時、救世主たちが現れた。
ヨウタ「待たせたな、チルノフ!ジムリーダー、颯爽登場だぜ!! 」
なんと、チルノフと熱い戦いを繰り広げたジムリーダーたちが駆けつけてくれたのだった…!
リリカ「事件が発生しているのに、私たちジムリーダーが黙っている訳ないでしょ? 」
ショウヤ「面白そうなことしてるじゃねえか・・。」
チェロ「僕たちが相手しますよ、敵さんたち。」
ミナシゲ「さあ、誰から行こうか・・。」
サイガ「・・・。」
エミ「チルちゃん、先に行って!ここは私たちがやるから! 」
突然のジムリーダーの登場にかなり焦る七賢人たち。
チルノフはジムリーダーたちにその場を任せ、先を急いだ。
そして王の間…
長い部屋の奥の王座でNは待っていた。
「ここまでキミはやってきた……なのにゼクロムは反応しないんだね。まだキミを、英雄と認めていないのか。がっかりだね…。…ボクは少しだけ、キミのことを気に入ってたのに。幾度も勝負を重ねる内にポケモンを大事にするトレーナーかもと思ったのに! 」
そう、チルノフが持っていたダークストーンはまだ何の反応もしなかった。
これはゼクロムに認められていないということになるのか…?
「…だけど所詮、ボクの思い込みでしかなかった。やはりトレーナーが勝負をしても理解し合うことなんてない!…キミにできることは二つある。理想を求める為、ボクに挑み玉砕するか。それともここを立ち去り、ポケモンが人から解き放たれた新しい世界を見守るか。」
そう言うとNは片手をあげた。
おいで、レシラム!
彼の合図と共に、壁を突き破って登場した『レシラム』。
灼熱の火柱を放ち、その強力な力をチルノフたちに見せつけた。
するとその炎に反応したのか、ダークストーンが輝きだした。
周りのオーラを取り囲んだダークストーンが、それを強烈なパワーとして、今・・・・・・・・・解き放つ!!!!
謎の気を吸収したダークストーンは見るみると姿を変え、やがて…『ゼクロム』へと姿を変えた。
ゼクロムは仲間になりたそうな目でチルノフを見つめる。
チルノフはそれを見て、ゼクロムの背中へと乗り込んだ。
Nもまたレシラムの背中へと乗り込んだ。
「N、お前のくだらない夢を…ぶち壊してみせる…!!」
「フフッ・・・ボクには未来が見える!絶対に勝つ!! 」
ついに始まった史上最強の伝説同士の対決…!
ゼクロムはクロスサンダーを、レシラムはクロスフレイムという強力な技で攻撃するが、互いに相打ちとなってしまう。
ゼクロムがあまごいで雨降らせた、だがそれに対しレシラムはにほんばれで日差しを強くした。
同レベルであるがその戦いは口に表せないほどのものだった。観戦していたものは皆唖然としていた…。
「……それで、ボクたちを止められるのかい?」
「 止めてやるさ・・いや、止める!! 」
今度はゼクロムは10万ボルトを放つ、レシラムはソーラービームを放つが互角となる。
「・・・まだだ、こんないい勝負・・・まだ終わらせはしない!!」
「血が騒ぐねぇ!! 」
ゼクロムとレシラムはぶつかり合う、もう体力はお互い限界のはずなのに、それでもぶつかりあう…!
そして…ゼクロムのらいげきとレシラムのクロスフレイムの相打ちにより、レシラムが敗北。そのまま王座へと墜落した。
「…………………ボクとレシラムが敗れた……。キミの思い…真実・・・どうやら僕は…………間違っていたのかもしれない…。」
Nはようやく、自分の間違いに気付いたのだった。
Nは、ある者に「ポケモンと人を切り離せば、お前も・・・友達であるポケモンも救われる」と言われ、人からポケモンを解放しようとしていた。
初めはその者の事など聞き入れたくはなかったが、考えている内にいつの間にか間違ってその者の言う通りにしてしまったらしい。
だがもう、N自身は自由になれた。
「ポケモンのことしか…いや、そのポケモンの事すら理解していなかったボクが…多くのポケモンと出会い、仲間に囲まれていたキミに敵うはずがなかった・・・。」
Nは負けを認めた。そして…ちゃんとした人生を取り戻す為、また一から旅をすると言った。
チルノフも皆もそれを認めた。
「キミには…夢があるんだろう?ならその夢を…叶えろ!ボクも…ちゃんとした人生を取り戻す!そして・・・いつかまた…いつかまた、何処かで会おう!それじゃ…さよなら……。」
N派最後の別れを告げ、レシラムに乗って知らない世界へと旅立っていった。
「ああ!今度会ったときはまた…ポケモンバトルだ!」
チルノフは、彼らの姿が見なくなるまで手を振った。
こうして…チルノフと、仲間たちの長い旅が終わったのだった。
しかし終わりというものは常に始まりでもある。
そう………チルノフたちの冒険は、まだ始まったばかりなのだ。
世界には数多くの強敵トレーナーや、まだ見ぬポケモンたちが存在している。
ポケモンとトレーナーがいる限り、彼女たちの冒険はまだまだ続く…!
続くったら、続く!
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