快感の後に佳主馬の胸に訪れたのは、後悔と自己憐憫である。同級生からとても人には言えない辱しめを受けて、佳主馬のプライドは無惨に傷付けられた。何故ボクは騙されて体育倉庫に呼び出されて来たんだ。何故ボクはクラスメートに身体を縛られて、女装させられて、チンチンを弄られなきゃいけないんだ。一筋の涙が、佳主馬の頬を伝った。
「うっ、ううっ……」
佳主馬は嗚咽を漏らした。もう我慢の限界だった。さっきから佳主馬の背中を支えていたケイタはその泣き声を間近で聴いていた。流石に不憫に思って「もう止めようよ」とリーダーに声を掛けようとしたのだが、タクヤの手が動くほうが早かった。
「……一応、確かめておくか」
タクヤはそう言うと佳主馬のブルマーを下着ごと手に掛けて脱がせようとした。これには佳主馬も驚いて、大分疲れているにも拘わらず反射的に身体を捻ってタクヤの手から逃れようとした。然し、この行動が命取りとなる。うつ伏せの状態で取り押さえられたら、何の身動きも取れなくなってしまうからだ。
これは好機とばかりに、タクヤは佳主馬の両脚に乗り掛かった。佳主馬は上半身を水から揚げられた魚のようにジタバタさせたが、もうどうにもならない。佳主馬は下着ごとブルマーを脱がされた。全身が小麦色に焼けた佳主馬の身体の中で唯一、日に焼けていない部分がタクヤの目の前で露になった。
「……ってオレは佳主馬のケツを見たいんじゃねえ!シュウヘイ、そこでボサっとしてないでひっくり返すのを手伝ってくれ」
「は……ハイッ!」
自分でやっておいて一人で盛り上がっているタクヤのテンションに釣られて、シュウヘイはタクヤの側に立ってうつ伏せになった佳主馬の身体をタクヤと一緒に反転させた。ケイタもやや遅れてこれに加わった。
佳主馬は下半身を丸出しの状態で再び仰向けにされた。必然、自分の陰部は三人組の目前に晒される格好となる。
「おおっ、佳主馬のお〇ん〇ん!」
「馬鹿、んなもん見て喜ぶな!お前に付いてるモンと大して変わらんだろうに」
好奇に満ちた声を上げるシュウヘイに、タクヤはぶっきらぼうな口調でツッコんだ。そしてタクヤが指摘した通り、佳主馬の陰部には毛の一本も生えていなければぺニスの先端は固く閉ざされた蕾……一言で言えば何の変哲も無い子供のちんこだった。
然し、タクヤが確認したかったのはそんな粗末なものではない。脱がせた佳主馬のブリーフの裏地を広げてジッと目を凝らしてみたが、そこには何の液体も付着していなかった。ただ純白の布地がそこにあるのみだった。
「……何だ、佳主馬はまだなのか。って、オレもまだだけどな」
タクヤは佳主馬が精通しているかどうかを確かめたかったのだ。然し、佳主馬の腹の下もブリーフの裏地も一切汚れていなかった。これを見てタクヤは寧ろ安堵した。負けず嫌いのタクヤの事である、仮に佳主馬の腹の下やブリーフの裏地が白く濁った液体で汚れていたりしたら、それは複雑な気分になっていただろう。
これでもう用は済んだと思い、タクヤは佳主馬に再びブリーフを穿かせようと佳主馬の両脚を持ち上げた。この時、あるものが目に飛び込んできた。
「なあ、シュウヘイ……この穴は何だったっけ?」
「え?そりゃ親びん、そこが何かと言ったら……」
シュウヘイはタクヤが指差した所に目をやった。そこはぺニスの付け根から蟻の戸渡りを経て臀部の中心部にある、男性の身体では下半身のなかでも唯一体内に侵入可能な場所……とどのつまり、肛門であった。
「どう見たって、ウンチの穴じゃないですか……」
「果たして本当にそうかな?」
「えっ!?」
思いも寄らぬタクヤの発言に、シュウヘイは目をきょとんと丸くした。そんな彼の様子を後目に、タクヤはこう続けた。
「お前達、女のアソコを見たことあるか?」
「いいや、無いッスよ」
「ケイタはどうだ?」
「僕も無いです……」
「だろ?だからもののついでに確かめておくんだよ。佳主馬に女のアソコが付いてるかどうかをな」
確かめるも何も、股間にチンチン付いてる時点で佳主馬の性別は男で確定である。それなのにどういった心積もりでタクヤはこんな発言をするのか、シュウヘイ達には理解できなかった。当のタクヤ本人でさえ、後になって振り返ってみても自分が何故こんな頓珍漢なことを言い出したのか、さっぱり解らなかった。もしも「乱心」という言葉を使うとしたら、今この場面こそ相応しいだろう。
「シュウヘイ、ちょっとオレが持ってきた袋をよこせ。その辺に転がってないか?」
「あ、はい……」
シュウヘイは周りをキョロキョロと見回した。例の巾着袋はシュウヘイの隣にあった。片手でそれを掴み取ると、タクヤへ手渡した。
「おう、サンキュー」
タクヤは巾着袋を受け取ると同時に携帯電話をシュウヘイに渡した。
「親びん、これは……」
「撮影役はお前に任せた」
「あ……ハイッ!」
シュウヘイは一瞬躊躇したが、快く引き受けた。然し携帯電話を開いてみたものの、どうやってカメラ機能を呼び出せばいいのか解らなかった。最近の携帯電話には実に多くの機能が盛り込まれており、操作方法も機種によって微妙に異なっている。日本の携帯電話事情がガラパゴス諸島に喩えられる所以である。自分が使い慣れていない携帯電話をマニュアルも見ずに使いこなせる小学生は稀だろう。
「あの、カメラ機能はどこに……?」
「横っちょにカメラの絵が描いてあるボタンがあるだろ?そいつを長く押すんだ。撮影する時も同じボタンを押せば写真が撮れるで」
「あ……これかな?」
シュウヘイはタクヤに教えられた通りに携帯の右サイドにあるカメラボタンを長押しした。液晶画面に「カメラ起動中」という文字が二、三秒間流れた後、カメラが捉えている風景が映り出した。液晶画面には佳主馬とタクヤとケイタの三人が写っていた。佳主馬は四肢を縄跳びで縛られ、彼の下半身は曝け出されていた。ケイタは所在無さげに佇んでいた。タクヤは巾着袋の中をまさぐっていた。
タクヤは巾着袋の中から予備の縄跳びを取り出した。佳主馬の身体を縛り付ける為に使ったものと併せて、これで四本目である。一体何処からかき集めて来たのだろうかと思われそうだが、現役の小学生にとっては馴染みの深い遊具である。必要な数を揃えるのはそう難しい事では無かった。
佳主馬は自分が置かれている状況にほとほとうんざりしていた。外気を遮断されて熱気が篭った体育倉庫の埃っぽい空気も、汗を吸って身体に纏わり付く体操着も、自分勝手に盛り上がるタクヤの喚き声も、何もかもが不快だった。これが悪い夢なら一秒でも早く醒めて欲しい。そんな風に考えていたものだからタクヤ達の行動は気にも留めていなかったのだが、彼らが次に取った行動が、この悪い夢が醒めることは無いという事実を佳主馬に思い知らせた。
タクヤは手に取った縄跳びの結び目を解かずに、グリップを逆方向に握った。そして佳主馬の腰を持ち上げて、縄跳びのグリップの先端を肛門にあてがった。
「!?」
自分の秘所に突如訪れた冷たくて硬い感覚に、佳主馬の表情が強張った。
(ボクのお尻に何が当たっているんだ!?)
「へへへ……佳主馬のココが女のアソコなら、棒を突っ込んだら気持ちよくなる筈だぜ」
タクヤは下品な笑い声を浮かべながらグリップの先端を佳主馬の肛門にグリグリと押し付けた。シュウヘイはその様子を何かに取り憑かれたかのように夢中になってカメラに収めていた。やがて硬質の白いプラスチックが一センチだけ肛門の中に埋まった。異物を挿入された佳主馬の反応は、タクヤの期待とは相反するものだった。
「☆%#@*¥□※▽$!!?!」
佳主馬の顔面が苦痛に歪んだ。未だかつて経験したことの無い痛みに、何を言っているのか判らない程に激しい絶叫が咽からほどばしり、目尻には新たな涙の粒が浮かび上がった。佳主馬が痛がるのも当然だった。たとえ女性が相手でも行為に及ぶ時は前戯で秘所を十分に解しておく必要があり、受け手が男性ならばそれは尚更のことなのだが、そういった知識を覚えるには彼らは若過ぎた。
苦悶の表情を浮かべる佳主馬の様子を見るに見かねて、ケイタが叫んだ。
「リーダー!もうこんな事止めようよ、佳主馬君が可哀想だよ!」
然し、ケイタの良心がタクヤの耳に届くことは無かった。
「うるせぇ!黙って見てろ!」
こう言われては気の弱いケイタは黙って見ているしかない。タクヤはすっかり佳主馬を虐げることに夢中になっていた。シュウヘイはさっきと変わらぬ様子で夢中でシャッターを切り続けている。タクヤの暴走を止める者は、この中に居なかった。
「おかしいなぁ……もっと深く突っ込めば気持ちよくなるかな?」
まるで他人事のように呟きながら、タクヤはグリップを更に奥へと侵入させようとした。温もりの欠片も持たぬ白い円柱状の物体が、音も立てずに佳主馬の肛門へ埋まっていく。これ以上の侵入を許すまいと括約筋に力を入れるが、痛みは却って増していく。こういう時は力を抜いたほうが楽になれるということを佳主馬は知らなかった。
グリップには滑り止めと装飾の目的で凹凸に加工されている部分があった。指で触っても何て事の無い突起が佳主馬の肛門を通過したその刹那、悲劇は起きた。
「むぐぅううううっ!!」
尻に火が点いたような痛みに、佳主馬は断末魔の叫びを上げた。次の瞬間、佳主馬のペニスの先端から黄金色の液体が勢いよく飛び出した。余りの痛みに耐えかねて、佳主馬は失禁してしまった。仰向けの姿勢で放たれた尿は佳主馬の顔や体操着をびちゃびちゃと汚した。
「う……うわああああああああっ!!」
想定外の事態にタクヤは動揺し、叫びながら後退りした。シュウヘイは悲劇的瞬間に至るまで撮影を継続していたのだが、パニック状態のタクヤに無理矢理止められた。
「馬鹿、こんなところまで撮るんじゃねぇよ!」
必死の形相でシュウヘイから携帯電話を奪い取ると、カメラモードを終了して自分のポケットに素早く仕舞った。
「お、お前達……ひとまず、逃げるぞ!」
言うや否や、タクヤは裏口目掛けて一目散に走り出した。アルミ製の開き戸が荒々しく開け放たれ、ガタイのいい小学生の人影が夕焼け空に吸い込まれていった。
「待ってくださいよ、親びぃ〜ん!」
シュウヘイは一瞬の間だけ事態を飲み込めなかったが、すぐにリーダーの後を追い掛けた。ケイタは悲惨な状態の佳主馬を何とかしようと思い掛けたが、とても自分の手には負えないと諦めると、良心の呵責に苛まれながらも二人の後を追い掛けた。裏口の戸を開け放ったままにしたのは、彼なりに考えたせめてもの助け舟であった。
「うっ、ううっ……」
佳主馬は嗚咽を漏らした。もう我慢の限界だった。さっきから佳主馬の背中を支えていたケイタはその泣き声を間近で聴いていた。流石に不憫に思って「もう止めようよ」とリーダーに声を掛けようとしたのだが、タクヤの手が動くほうが早かった。
「……一応、確かめておくか」
タクヤはそう言うと佳主馬のブルマーを下着ごと手に掛けて脱がせようとした。これには佳主馬も驚いて、大分疲れているにも拘わらず反射的に身体を捻ってタクヤの手から逃れようとした。然し、この行動が命取りとなる。うつ伏せの状態で取り押さえられたら、何の身動きも取れなくなってしまうからだ。
これは好機とばかりに、タクヤは佳主馬の両脚に乗り掛かった。佳主馬は上半身を水から揚げられた魚のようにジタバタさせたが、もうどうにもならない。佳主馬は下着ごとブルマーを脱がされた。全身が小麦色に焼けた佳主馬の身体の中で唯一、日に焼けていない部分がタクヤの目の前で露になった。
「……ってオレは佳主馬のケツを見たいんじゃねえ!シュウヘイ、そこでボサっとしてないでひっくり返すのを手伝ってくれ」
「は……ハイッ!」
自分でやっておいて一人で盛り上がっているタクヤのテンションに釣られて、シュウヘイはタクヤの側に立ってうつ伏せになった佳主馬の身体をタクヤと一緒に反転させた。ケイタもやや遅れてこれに加わった。
佳主馬は下半身を丸出しの状態で再び仰向けにされた。必然、自分の陰部は三人組の目前に晒される格好となる。
「おおっ、佳主馬のお〇ん〇ん!」
「馬鹿、んなもん見て喜ぶな!お前に付いてるモンと大して変わらんだろうに」
好奇に満ちた声を上げるシュウヘイに、タクヤはぶっきらぼうな口調でツッコんだ。そしてタクヤが指摘した通り、佳主馬の陰部には毛の一本も生えていなければぺニスの先端は固く閉ざされた蕾……一言で言えば何の変哲も無い子供のちんこだった。
然し、タクヤが確認したかったのはそんな粗末なものではない。脱がせた佳主馬のブリーフの裏地を広げてジッと目を凝らしてみたが、そこには何の液体も付着していなかった。ただ純白の布地がそこにあるのみだった。
「……何だ、佳主馬はまだなのか。って、オレもまだだけどな」
タクヤは佳主馬が精通しているかどうかを確かめたかったのだ。然し、佳主馬の腹の下もブリーフの裏地も一切汚れていなかった。これを見てタクヤは寧ろ安堵した。負けず嫌いのタクヤの事である、仮に佳主馬の腹の下やブリーフの裏地が白く濁った液体で汚れていたりしたら、それは複雑な気分になっていただろう。
これでもう用は済んだと思い、タクヤは佳主馬に再びブリーフを穿かせようと佳主馬の両脚を持ち上げた。この時、あるものが目に飛び込んできた。
「なあ、シュウヘイ……この穴は何だったっけ?」
「え?そりゃ親びん、そこが何かと言ったら……」
シュウヘイはタクヤが指差した所に目をやった。そこはぺニスの付け根から蟻の戸渡りを経て臀部の中心部にある、男性の身体では下半身のなかでも唯一体内に侵入可能な場所……とどのつまり、肛門であった。
「どう見たって、ウンチの穴じゃないですか……」
「果たして本当にそうかな?」
「えっ!?」
思いも寄らぬタクヤの発言に、シュウヘイは目をきょとんと丸くした。そんな彼の様子を後目に、タクヤはこう続けた。
「お前達、女のアソコを見たことあるか?」
「いいや、無いッスよ」
「ケイタはどうだ?」
「僕も無いです……」
「だろ?だからもののついでに確かめておくんだよ。佳主馬に女のアソコが付いてるかどうかをな」
確かめるも何も、股間にチンチン付いてる時点で佳主馬の性別は男で確定である。それなのにどういった心積もりでタクヤはこんな発言をするのか、シュウヘイ達には理解できなかった。当のタクヤ本人でさえ、後になって振り返ってみても自分が何故こんな頓珍漢なことを言い出したのか、さっぱり解らなかった。もしも「乱心」という言葉を使うとしたら、今この場面こそ相応しいだろう。
「シュウヘイ、ちょっとオレが持ってきた袋をよこせ。その辺に転がってないか?」
「あ、はい……」
シュウヘイは周りをキョロキョロと見回した。例の巾着袋はシュウヘイの隣にあった。片手でそれを掴み取ると、タクヤへ手渡した。
「おう、サンキュー」
タクヤは巾着袋を受け取ると同時に携帯電話をシュウヘイに渡した。
「親びん、これは……」
「撮影役はお前に任せた」
「あ……ハイッ!」
シュウヘイは一瞬躊躇したが、快く引き受けた。然し携帯電話を開いてみたものの、どうやってカメラ機能を呼び出せばいいのか解らなかった。最近の携帯電話には実に多くの機能が盛り込まれており、操作方法も機種によって微妙に異なっている。日本の携帯電話事情がガラパゴス諸島に喩えられる所以である。自分が使い慣れていない携帯電話をマニュアルも見ずに使いこなせる小学生は稀だろう。
「あの、カメラ機能はどこに……?」
「横っちょにカメラの絵が描いてあるボタンがあるだろ?そいつを長く押すんだ。撮影する時も同じボタンを押せば写真が撮れるで」
「あ……これかな?」
シュウヘイはタクヤに教えられた通りに携帯の右サイドにあるカメラボタンを長押しした。液晶画面に「カメラ起動中」という文字が二、三秒間流れた後、カメラが捉えている風景が映り出した。液晶画面には佳主馬とタクヤとケイタの三人が写っていた。佳主馬は四肢を縄跳びで縛られ、彼の下半身は曝け出されていた。ケイタは所在無さげに佇んでいた。タクヤは巾着袋の中をまさぐっていた。
タクヤは巾着袋の中から予備の縄跳びを取り出した。佳主馬の身体を縛り付ける為に使ったものと併せて、これで四本目である。一体何処からかき集めて来たのだろうかと思われそうだが、現役の小学生にとっては馴染みの深い遊具である。必要な数を揃えるのはそう難しい事では無かった。
佳主馬は自分が置かれている状況にほとほとうんざりしていた。外気を遮断されて熱気が篭った体育倉庫の埃っぽい空気も、汗を吸って身体に纏わり付く体操着も、自分勝手に盛り上がるタクヤの喚き声も、何もかもが不快だった。これが悪い夢なら一秒でも早く醒めて欲しい。そんな風に考えていたものだからタクヤ達の行動は気にも留めていなかったのだが、彼らが次に取った行動が、この悪い夢が醒めることは無いという事実を佳主馬に思い知らせた。
タクヤは手に取った縄跳びの結び目を解かずに、グリップを逆方向に握った。そして佳主馬の腰を持ち上げて、縄跳びのグリップの先端を肛門にあてがった。
「!?」
自分の秘所に突如訪れた冷たくて硬い感覚に、佳主馬の表情が強張った。
(ボクのお尻に何が当たっているんだ!?)
「へへへ……佳主馬のココが女のアソコなら、棒を突っ込んだら気持ちよくなる筈だぜ」
タクヤは下品な笑い声を浮かべながらグリップの先端を佳主馬の肛門にグリグリと押し付けた。シュウヘイはその様子を何かに取り憑かれたかのように夢中になってカメラに収めていた。やがて硬質の白いプラスチックが一センチだけ肛門の中に埋まった。異物を挿入された佳主馬の反応は、タクヤの期待とは相反するものだった。
「☆%#@*¥□※▽$!!?!」
佳主馬の顔面が苦痛に歪んだ。未だかつて経験したことの無い痛みに、何を言っているのか判らない程に激しい絶叫が咽からほどばしり、目尻には新たな涙の粒が浮かび上がった。佳主馬が痛がるのも当然だった。たとえ女性が相手でも行為に及ぶ時は前戯で秘所を十分に解しておく必要があり、受け手が男性ならばそれは尚更のことなのだが、そういった知識を覚えるには彼らは若過ぎた。
苦悶の表情を浮かべる佳主馬の様子を見るに見かねて、ケイタが叫んだ。
「リーダー!もうこんな事止めようよ、佳主馬君が可哀想だよ!」
然し、ケイタの良心がタクヤの耳に届くことは無かった。
「うるせぇ!黙って見てろ!」
こう言われては気の弱いケイタは黙って見ているしかない。タクヤはすっかり佳主馬を虐げることに夢中になっていた。シュウヘイはさっきと変わらぬ様子で夢中でシャッターを切り続けている。タクヤの暴走を止める者は、この中に居なかった。
「おかしいなぁ……もっと深く突っ込めば気持ちよくなるかな?」
まるで他人事のように呟きながら、タクヤはグリップを更に奥へと侵入させようとした。温もりの欠片も持たぬ白い円柱状の物体が、音も立てずに佳主馬の肛門へ埋まっていく。これ以上の侵入を許すまいと括約筋に力を入れるが、痛みは却って増していく。こういう時は力を抜いたほうが楽になれるということを佳主馬は知らなかった。
グリップには滑り止めと装飾の目的で凹凸に加工されている部分があった。指で触っても何て事の無い突起が佳主馬の肛門を通過したその刹那、悲劇は起きた。
「むぐぅううううっ!!」
尻に火が点いたような痛みに、佳主馬は断末魔の叫びを上げた。次の瞬間、佳主馬のペニスの先端から黄金色の液体が勢いよく飛び出した。余りの痛みに耐えかねて、佳主馬は失禁してしまった。仰向けの姿勢で放たれた尿は佳主馬の顔や体操着をびちゃびちゃと汚した。
「う……うわああああああああっ!!」
想定外の事態にタクヤは動揺し、叫びながら後退りした。シュウヘイは悲劇的瞬間に至るまで撮影を継続していたのだが、パニック状態のタクヤに無理矢理止められた。
「馬鹿、こんなところまで撮るんじゃねぇよ!」
必死の形相でシュウヘイから携帯電話を奪い取ると、カメラモードを終了して自分のポケットに素早く仕舞った。
「お、お前達……ひとまず、逃げるぞ!」
言うや否や、タクヤは裏口目掛けて一目散に走り出した。アルミ製の開き戸が荒々しく開け放たれ、ガタイのいい小学生の人影が夕焼け空に吸い込まれていった。
「待ってくださいよ、親びぃ〜ん!」
シュウヘイは一瞬の間だけ事態を飲み込めなかったが、すぐにリーダーの後を追い掛けた。ケイタは悲惨な状態の佳主馬を何とかしようと思い掛けたが、とても自分の手には負えないと諦めると、良心の呵責に苛まれながらも二人の後を追い掛けた。裏口の戸を開け放ったままにしたのは、彼なりに考えたせめてもの助け舟であった。
佳主馬は体育倉庫に取り残された。タクヤが佳主馬にこれ以上ない辱めを与えた例の縄跳びは、間もなく佳主馬の肛門から押し出された。佳主馬の体操着は小水を悉く吸収してしまった。黄色く染まった体操着から放たれるアンモニアの臭いは、佳主馬に現実逃避する余裕を与えなかった。
ずぶ濡れになった衣類が肌に纏わり付く感覚は極めて不快なものだった。おしっこのオプション付きなら、尚更である。脱ごうにも四肢を拘束されたままではそれも叶わない。まさに生き地獄だ。
「あ、あは、あははははは……」
もはや悲しみなど通り越してしまった。佳主馬は誰も居ない体育倉庫の中で悪臭に耐えながら、目尻に涙を浮かべてひとり薄ら笑いを浮かべた。そうでもしなければ、心が壊れそうだった。どの位の間、そうしていただろう。下校放送が聴こえたのを機に、佳主馬はハッと我に返った。
もう下校の時間か……まずい、このままではこんな状態で校内に取り残されてしまうかもしれない。先生方のうち誰かが見回っている筈だから、まずはここを出てボクを見つけてもらわないと!
おしっこで汚れた体操着を着たまま体育倉庫の中で一人ぼっちで寝るなんて、考えただけでも背筋が凍る。それだけは何としてでも避けようと、佳主馬は体育倉庫からの脱出を決意した。とはいうものの、状況は極めて過酷であった。何となれば、佳主馬は手足を縛られたまま高さ四十センチのウレタンマットを降りて、下半身を曝け出したままで、しかも濡れた体操着を引き摺って裏口まで這って進まなければならなかったからだ。
どうしたらこの危機的状況を乗り越えられる?佳主馬は知恵を絞って、ある作戦を思いついた。身体を横方向に転がして進もうというのだ。これなら急所をコンクリートに擦り付けて痛い思いをすることも、ぐっしょり濡れた体操着を引き摺って嫌な思いをすることもない。然し四十センチの段差を落下するように降りるのだけは、避けられそうになかった。
佳主馬は自分の頭を庇うように、下半身から先に滑らせるようにしてウレタンマットを降りた。そして幾つかの障害を乗り越えながら自らを大玉転がしの要領で横方向に転がして裏口に辿り着いた。然しここで最後の壁にぶつかる。いくら佳主馬の身体が学年一小柄でも、横方向に転がって出られるほど体育倉庫の裏口は広くなかった。
(ここだけは仕方ないか……)
佳主馬は身体を横向きにして、肩と膝小僧を支点にして匍匐前進を行った。腕や腰など、肌が露出している部分がコンクリートや砂利と擦れあって痛い。それでも誰にも見つけられないよりはマシだと辛抱して前進を続けた。そして遂に悪夢の空間から脱出した。
「ふぅ……ふぅ……」
歩けば十歩程度の距離を足を使わずに進むのは、ひどく体力と根気を要する。蒸し暑い体育倉庫でのおぞましい出来事とも相俟って、佳主馬は既に精魂尽き果てていた。
(お願い……誰か助けに来て)
空は赤々と燃え上がっている。既に夕暮れ時だ。体育倉庫の傍の植え込みで羽を休めている赤トンボが飛び立ち、夕焼け空へ溶け込んでいった。普段ならとっくに帰宅して、仕事で忙しい両親に代わって家事をこなしている頃合いである。なのに何でボクはこんな所に倒れこんでいるんだろう……
「いったいどうしたんだ、君!?」
児童下校後の見回りに当っていた教諭が、佳主馬のあられもない姿を発見して駆けつけてきた。
「一体誰がこんな酷い事を……君、大丈夫かね?」
教諭は佳主馬の猿轡を外し、両腕両脚を縛り付けている縄跳びを全て解いてあげた。
「あ……」
佳主馬は心ここにあらずといった様子であまり顔馴染みの無い教諭の顔を眺めていたが、自分は助かったんだということが漸く判ると、大声で泣きながら佳主馬の傍でしゃがみ込んでいる教諭の肩に抱き付いた。
「先生……先生ぇ……!」
「よしよし、よっぽど怖い目に遭ったんだね」
佳主馬の体操着から漂うアンモニアの臭いに一瞬顔をしかめたが、見回り担当の教諭は「もう怖がらなくていいよ」とわが子を慈しむように佳主馬を抱きしめた。ウンコを漏らす
ずぶ濡れになった衣類が肌に纏わり付く感覚は極めて不快なものだった。おしっこのオプション付きなら、尚更である。脱ごうにも四肢を拘束されたままではそれも叶わない。まさに生き地獄だ。
「あ、あは、あははははは……」
もはや悲しみなど通り越してしまった。佳主馬は誰も居ない体育倉庫の中で悪臭に耐えながら、目尻に涙を浮かべてひとり薄ら笑いを浮かべた。そうでもしなければ、心が壊れそうだった。どの位の間、そうしていただろう。下校放送が聴こえたのを機に、佳主馬はハッと我に返った。
もう下校の時間か……まずい、このままではこんな状態で校内に取り残されてしまうかもしれない。先生方のうち誰かが見回っている筈だから、まずはここを出てボクを見つけてもらわないと!
おしっこで汚れた体操着を着たまま体育倉庫の中で一人ぼっちで寝るなんて、考えただけでも背筋が凍る。それだけは何としてでも避けようと、佳主馬は体育倉庫からの脱出を決意した。とはいうものの、状況は極めて過酷であった。何となれば、佳主馬は手足を縛られたまま高さ四十センチのウレタンマットを降りて、下半身を曝け出したままで、しかも濡れた体操着を引き摺って裏口まで這って進まなければならなかったからだ。
どうしたらこの危機的状況を乗り越えられる?佳主馬は知恵を絞って、ある作戦を思いついた。身体を横方向に転がして進もうというのだ。これなら急所をコンクリートに擦り付けて痛い思いをすることも、ぐっしょり濡れた体操着を引き摺って嫌な思いをすることもない。然し四十センチの段差を落下するように降りるのだけは、避けられそうになかった。
佳主馬は自分の頭を庇うように、下半身から先に滑らせるようにしてウレタンマットを降りた。そして幾つかの障害を乗り越えながら自らを大玉転がしの要領で横方向に転がして裏口に辿り着いた。然しここで最後の壁にぶつかる。いくら佳主馬の身体が学年一小柄でも、横方向に転がって出られるほど体育倉庫の裏口は広くなかった。
(ここだけは仕方ないか……)
佳主馬は身体を横向きにして、肩と膝小僧を支点にして匍匐前進を行った。腕や腰など、肌が露出している部分がコンクリートや砂利と擦れあって痛い。それでも誰にも見つけられないよりはマシだと辛抱して前進を続けた。そして遂に悪夢の空間から脱出した。
「ふぅ……ふぅ……」
歩けば十歩程度の距離を足を使わずに進むのは、ひどく体力と根気を要する。蒸し暑い体育倉庫でのおぞましい出来事とも相俟って、佳主馬は既に精魂尽き果てていた。
(お願い……誰か助けに来て)
空は赤々と燃え上がっている。既に夕暮れ時だ。体育倉庫の傍の植え込みで羽を休めている赤トンボが飛び立ち、夕焼け空へ溶け込んでいった。普段ならとっくに帰宅して、仕事で忙しい両親に代わって家事をこなしている頃合いである。なのに何でボクはこんな所に倒れこんでいるんだろう……
「いったいどうしたんだ、君!?」
児童下校後の見回りに当っていた教諭が、佳主馬のあられもない姿を発見して駆けつけてきた。
「一体誰がこんな酷い事を……君、大丈夫かね?」
教諭は佳主馬の猿轡を外し、両腕両脚を縛り付けている縄跳びを全て解いてあげた。
「あ……」
佳主馬は心ここにあらずといった様子であまり顔馴染みの無い教諭の顔を眺めていたが、自分は助かったんだということが漸く判ると、大声で泣きながら佳主馬の傍でしゃがみ込んでいる教諭の肩に抱き付いた。
「先生……先生ぇ……!」
「よしよし、よっぽど怖い目に遭ったんだね」
佳主馬の体操着から漂うアンモニアの臭いに一瞬顔をしかめたが、見回り担当の教諭は「もう怖がらなくていいよ」とわが子を慈しむように佳主馬を抱きしめた。ウンコを漏らす