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気持ち良く射精を済ませたあと、放心しているわたしを置いたまま上機嫌の保坂先輩は、わたしの正面にある部屋の棚から何か小さな箱のようなものをとりだして、にっこりと微笑んだ。
目が細くなる保坂先輩特有のあの満面の笑顔だ。
目が細くなる保坂先輩特有のあの満面の笑顔だ。
精液の匂いを感じながらはだけたブラウス姿のまま、ぐったりとして瞳を開けたまま見ていたわたしは、それが何だか解ると、あ! と声にならない声を上げた。小さな箱のように見えたそれはハンディタイプのビデオカメラだったのだ。
どうして気付かなかったのだろう。ずっと正面にあったのに。たぶん器用にそういう電子機械を扱う保坂先輩、というのが想像しずらかったせいかもしれなかった。でも何度か不自然に身体の正面をそちらに向けさせられたようなそんな感じはずっとしていたのだ。
どうして気付かなかったのだろう。ずっと正面にあったのに。たぶん器用にそういう電子機械を扱う保坂先輩、というのが想像しずらかったせいかもしれなかった。でも何度か不自然に身体の正面をそちらに向けさせられたようなそんな感じはずっとしていたのだ。
保坂先輩は物問いたげなわたしに上機嫌な様子を隠さないまま説明を始めた。
「これはな、速見の奴が貸してくれたものだ。せっかく後輩女子に相談に付き合ってもらうのにその後の研究がおざなりになってしまってはその女子が泣いてしまうだろう、と言ってな」
それで?
「うむ。なので、相談の様子はずっとこのビデオに取ってバレー部2年男子に見てもらっているのだ。男子として女の子への接し方が一人よがりになってしまってはそれは紳士とは呼べないからな。
2年男子には協力して貰ってできるだけ一緒にビデオを見て意見を言って貰うことにしているがこちらが忙しくて時間が取れないときはビデオだけを渡して翌日感想文を全員に提出して貰うことになっている。万全の体制だろう? 」
2年男子には協力して貰ってできるだけ一緒にビデオを見て意見を言って貰うことにしているがこちらが忙しくて時間が取れないときはビデオだけを渡して翌日感想文を全員に提出して貰うことになっている。万全の体制だろう? 」
万全の体制? どこがですか? わたしは開いた口が塞がらなかった。うちの高校はいわゆる柄の悪い高校ではないしむしろどちらかと言えば品が良いというか大人しい方の高校だと言われている。だから高校2年にもなってクラスメートや、同学年の女子の裸の…相談映像を見せられたところで表だって騒ぐようなことはしないだろう。
でもそれは表だけの話であって、女子からしてみれば同学年の男子たちが女子の胸や身体に向ける興味は事あるごとに痛いほど伝わってきていて、とうてい隠しおおせているとは言えないのが常識なのだ。
でもそれは表だけの話であって、女子からしてみれば同学年の男子たちが女子の胸や身体に向ける興味は事あるごとに痛いほど伝わってきていて、とうてい隠しおおせているとは言えないのが常識なのだ。
制服の上からでさえ痛い程、身体への視線を感じるのに……わたしの…相談映像の…裸の剥き出しの胸や身体や…広げた脚をそのまま見せたら……。わたしは正面から見たわたしの相談映像を想像して絶句した。たぶんビデオを見た男子たちは知らないふりはしてくれるだろうけれど……でもいったいいつから……そう思う間もなくわたしは続く保坂先輩の言葉に唖然とした。
「無論、男子だけでは男の見方だけに偏ってしまい、肝心の女子の気持ちが解らないということが充分に有り得る。それではやはり紳士の行いとは言えまい。
そこでこのビデオはバレー部2年女子全員にも見てもらっている。みんないっしょにだ。ビデオを提供してくれた速見の提案でな。実に女らしい細やかな心配りだ。良い先輩を持ったな。実に良い先輩と言えよう。」
そこでこのビデオはバレー部2年女子全員にも見てもらっている。みんないっしょにだ。ビデオを提供してくれた速見の提案でな。実に女らしい細やかな心配りだ。良い先輩を持ったな。実に良い先輩と言えよう。」
まったく気付いてなかった。女子のみんなが保坂先輩とわたしのアレを見ていただなんて。かなり念入りに箝口令が引かれていたのだろう。その上でわたしが保坂先輩に呼ばれていくときにはそれが何だか女子全員が承知していて密かに見送っていたわけだ。
それが意味することを知ってわたしは観念した。もう駄目だ。どうにもならない。
女子は男子と違って単純じゃない。保坂先輩はこう見えても一般女子には人気がある。外見が良いから、変人なのは解っているけれど、もし自分が付き合えるならば、というものだ。保坂先輩の裸の映像は女子なら誰でも見たがるだろう。その一方で保坂先輩と別の女子の誰かが裸で"相談"している所は見たくない。抜け駆けされたという意識が強く働くからだ。例えそれが同じ部活のチームメイトの女子であっても、いや同じチームメイトだからこそ、負の感情が渦巻くのを止められない。
ただそれが……保坂先輩にその女の子とは別の女の子の名前を叫ばれながら射精されているそんな"相談"の映像だったならば?
そのカップリングは抜け駆けされたという感情を引き起こさないし、女の子はそういう可哀想で……笑える映像が大好きだ。本人だけが知らされず秘密にされているものならそれを知りながら陰でみんなで楽しめる映像ならなおさら……
その上、女子には映像の中でされている最中の女の子の気持ちが解る。男子はわたしの裸の胸や身体や脚や性器を見て、そこに保坂先輩の物が出し入れされているのを見て、それでわたしが声を上げるのを見て興奮するだけかもしれないけれど、女子にはそうして他の女の子の名前を呼ばれながら射精されているとき、わたしの鳴き声が響いているとき、最後に痙攣しながらドクドクと身体に精液を注がれているとき、そのときわたしがどんな気持ちでいるのか想像がついてしまう。
わたしの裸の身体の痙攣のひとつひとつがどんな気持ちから来る物なのか、その想像がついてしまうのだ。
みんなでそれを見ながら、場面場面でうわあと声を揃えて映像を楽しみながら、それと同時にかならず何人かは声を隠さずクスクスと笑うだろう。可哀想な女の子が有り得ない目に遭っている姿というのは、それを見るというのは女の子にとってひとつの楽しみなのだから。
つまり……いつからかはわからないけれど、このビデオはもう学年中に……
下手をすれば学校中に出回ってしまっていて……
下手をすれば学校中に出回ってしまっていて……
保坂先輩はしている時と同じでこちらの様子にはおかまいなしに話し続ける。
「それでだ。見て貰った結果、色々有益なアドバイスを貰ったわけだが、この上はビデオではなくやはり実際に見てみないことには実際の雰囲気はつかめない。という全員一致での結論になった。男子も女子もだな。
というか俺も観察する側に回らないと、している最中はどうしてもその感覚に引きずられて冷静な観察ができないからな。幸い男子があと数人も来ればそいつらがしていてくれている間、俺もその最中の胸を触ったり、あちこちを触りながら状態を確認することができるだろう。
ということで明日以降はそういう方針で行くことにしようと思う。」
というか俺も観察する側に回らないと、している最中はどうしてもその感覚に引きずられて冷静な観察ができないからな。幸い男子があと数人も来ればそいつらがしていてくれている間、俺もその最中の胸を触ったり、あちこちを触りながら状態を確認することができるだろう。
ということで明日以降はそういう方針で行くことにしようと思う。」
もはや返す言葉がなかった。
というか最初から、こうなる初めの初めから、先輩とはちゃんと会話が成立していなかった様な気もする。
というか最初から、こうなる初めの初めから、先輩とはちゃんと会話が成立していなかった様な気もする。
最後に部屋を出る前に保坂先輩は少し気が引けた様にわたしに声を掛けた。
いやでも、この人に限って気が引けるなどということは有り得ないような気がする。
この人はいつも素でこうなのだ。
いやでも、この人に限って気が引けるなどということは有り得ないような気がする。
この人はいつも素でこうなのだ。
保坂先輩は言った。
「いや、こういうのは正直どうかと始める前は思ったんだけどな。実際こんなところまで親身に相談にのってもらえるとは想像もしていなかった。女の子の後輩というのは何て有り難いんだと今回、実感したよ。実に有り難い。
では明日の土曜だが、これから毎週朝9時にこの場所へ全員集合という話になっているからその点よろしく頼むぞ。」
では明日の土曜だが、これから毎週朝9時にこの場所へ全員集合という話になっているからその点よろしく頼むぞ。」
そして保坂先輩は弦楽セレナーデの調べと伴にズボンのベルトを締めながらドアを閉め出ていった。
そう、結局、最後の最後まで保坂先輩にはわたしの話は通じていなかったみたいだった。
そう、結局、最後の最後まで保坂先輩にはわたしの話は通じていなかったみたいだった。
この先、どうなるかはちょっと良くわからない。思うに、これもわたしの運命なのではないかと思う。
保坂先輩と知り合いになったわたしの。
保坂先輩と知り合いになったわたしの。
―――― キーン・コーン・カーン・コーン~
「……でね~」
校内に昼休みを告げるレトロな鐘音が響き渡る。南春香の今日の弁当はピンクの弁当箱に敷かれたレタスの上のフライドチキンのようなもの、リンゴ、カリフラワー、アルミのパッキングの上の推定八宝菜および白米、梅干しであった。一方で購買部購入と思われる推定カレーパンを後にまわし、コッペパンを握りしめたままのマキが熱弁を続ける。
「その先輩が気持ち悪いのよ。キモいとかじゃないの。ああいうのが気持ち悪いっていうんだわ。放っとくとアツコはこんな風に毎週土曜朝9時に集合かけられてその先輩以外にもヤラれちゃうようになっちゃうわけ。」
黙って聞いていたままのアツコが口を挟む
「マキ…ここまで言うことはないと思うよ。保坂先輩はいい人よ。面倒見がいいし。
まあ、多少……
というか、この話は何!? これもわたしの運命っていったい何!?」
まあ、多少……
というか、この話は何!? これもわたしの運命っていったい何!?」
「だからアツコみたいな性格だとこんな事になりかねないって、たとえ話よたとえ話。
それとも……毎週土曜日朝9時に集合かけられてもいいっていうの?
だとしたら趣味を疑わせてもらうわよ! 」
それとも……毎週土曜日朝9時に集合かけられてもいいっていうの?
だとしたら趣味を疑わせてもらうわよ! 」
(あれ……何でわたしが責められているんだろ)
マキに強い調子で詰問されてアツコは瞳を見開いたまま少し涙ぐんだ。困り顔の眉、その下の潤んだ涙目、頼りなさげな口元、ひたいに掛かる前髪と耳に掛かる内はねの髪が幼い印象の表情を強調してはいるがその下へ目を移すとネクタイと白いベストが白いブラウスに包まれた胸元の豊かさを隠せない。何よりその弱気な性格では強気だという保坂に抵抗できるとはとうてい思えなかった。
(保坂先輩という人は良く知らないけれど、有り得るんじゃあないかしら……
それにしてもマキちゃんの話……みんないつもあんな事をしているなんて……
私ももっと積極的になっても良いのかも……)
それにしてもマキちゃんの話……みんないつもあんな事をしているなんて……
私ももっと積極的になっても良いのかも……)
その時そう南春香が考えたかどうかは定かではない。
(終わり)
- 昼飯くってるってのにマキはなんてエグイ話をするんだ -- 名無しさん (2009-12-20 12:19:10)