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筆を取らせたもの、チャウチャウ


その姿を私は忘れられず、筆を取らずにはいられなかった。
身体が勝手に、動いていたのだ―。


それまでの私は、しがない喫茶店の一店員であった。
特に夢や目標も無く、たまに来る常連客と惰性な日々を過ごすのみ。
(ああ、また今日も酸味とコクのバランスが最高だ)
そんなことを考えながら人気商品のアイリッシュコーヒーを作っていた。

そんな日々に転機が訪れたのは、まだ夏の暑さが拭えない9月のとある夜。
いつものようにビーンマシンの営業を終えて猫カフェの推し猫であるだいふくをもふもふしに行こうとバイクに跨った。

エンジンをかけて駐車場を出ようとした時にふと思い出す。
明日のコーヒー豆が少なかったことを。

猫カフェにも行きたかったがだいふくちゃんは諦めて仕方なく発注書を用意して
農場に向かった。

その帰り道、あさとの歯車は動き出す―。

喉が渇いて水を買おうと、ふと立ち寄ったコンビニの向かい。
夜の暗闇にひとつ明るく目立つペットショップのショーケース。
ガラス越しに彼女の姿だけがキラキラと輝いていた。

店に近づくとより鮮明に気品ある姿が確認できる。
それはまだ見ぬ主人を待つチャウチャウの姿だった。

だらしなく常に出している舌、眼はほとんど毛に隠れて見えず、くびれも無くたわしを大きくしたようだ。手足の肉付きもよく、なにより今水を飲んでいるが8割くらい口元の毛が水を吸ってしまっている。

身体が勝手に、動いていた―

その日のうちにプランBに加入し、1億円をATMから下ろした私は彼女を家に迎えた。
私はチャウチャウの魅力に取りつかれてしまったのだ。

チャウチャウに縁起の良い名前をつけ、家で自由にさせる。
すぐに彼女は新居を気に入ったようで今も玄関マットでだらしなく横になっている。

この愛すべき駄犬のすばらしさを世に広めなければ―。
服を着替え、ビーンマシンを飛び出して気づけばNEWS社へと走り出した。
最終更新:2025年12月16日 18:38