テノリライオン

06-10-02

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corelli

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梨木香歩「家守綺譚」購入。

何故「読了」でなく「購入」かと言うと、実はこの本そのものは以前ハードカバーで出た時に買っており、とっくに読み終わっているからで。
今回買ったのは文庫版。 つまりハードカバーは「保存用」、文庫は「読む用」である。

まるで大好きなアイドルの写真集の如き扱い。
何故これほどまでにこの本を大事にするのかと訊かれれば、とにかくその文章が美しいと思うからだ。
読めば頭の中が洗われるような、えもいわれぬ気持ちになる。

少し昔のお話。 しがない文筆家の青年が、豊かな和風庭園を持ちながら無人となった友人宅に、家守(いえもり)として移り住む。 そこで四季折々に出会う、様々なモノものと交流録。
サルスベリの木に惚れられる。 白木蓮が龍を産む。 池に迷い込んだ河童の忘れ物を、飼い犬のゴローが滝壺へと届けに行く。
淡々としたお伽噺のような風景には、過剰な描写も奇抜な歌い上げも必要ない。 日本の柔らかい風土の上に紡ぐ優しい品のある文章が、まるで毛布のような手触りで一枚また一枚と重なっていく。

難解で婉曲な文章に疲れた時や、殺伐とした描写に倦んだ時の為の常備薬として、この「家守綺譚」だけは本棚のどこに挿さっているか、または部屋のどこに埋もれているか、常に把握している。

この著者は「西の魔女が死んだ」「裏庭」「沼地のある森を抜けて」などで色々受賞。
「沼地の~」が「家守綺譚」と似た雰囲気を持っていそうなので、そのうち手を出してみたいと思う。


カテゴリ: [読書] - &trackback() - 2006年10月02日 23:59:22
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