テノリライオン

06-10-09

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corelli

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茂木 大輔「オーケストラは素敵だ――オーボエ吹きの修行帖」読了。


ピアノ弾きはピアニスト。
ヴァイオリン弾きはヴァイオリニスト。
トランペット吹きはトランペッター。
オーボエ吹きは――オーボイスト。

素人目には一見なんのこっちゃ判らない。 オーケストラ全体のチューニング、奏者が出揃った舞台の上でいの一番にAを吹いてみせる重要な楽器だというのに、不憫なことだ。

人間、自分の至らなかった所や失敗は認めたくないものである。 ましてやそれを率直に人に伝えるには、それなりの思い切りや勇気がいる。
しかしこの筆者はそれをすっぱりと、ユーモア溢れる主観と冷静な客観に乗せて書くことで、音楽の世界、オーケストラの世界の「中身」を私たちに伝えてくれている。
本場ドイツで競うオーディションの厳しさや、短期間で大量の白髪が生えてしまうほどにハードな修行。 難しいソロの手前数秒間で嵐のように乱れる奏者の頭の中など、専門家の深い世界を、しかし「あなたもしかしてお笑いの人ですか」とでも言いたくなるような軽いノリと笑いを交えて語るのである。
楽器が一つもできないどころかおたまじゃくしも読めないうえに致命的な音痴、でもクラシック好き、という私だが、これは非常に面白かった。

ミュンヘン国立音楽大学院に留学し、後にそこの講師を勤める。 シュトゥットガルド・フィルの第一オーボエ奏者、N響の主席オーボエを歴任し、更には日フィルの指揮までしてしまった猛者、でもとびきりのお調子者。
クラシックに興味のある人もそうでない人も――と言いたい所だが、ここはやはりやはりクラシック好きの人にこそ読んでもらいたいと思った一冊だった。


カテゴリ: [読書] - &trackback() - 2006年10月09日 15:30:41
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