テノリライオン

06-12-29

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corelli

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連鎖。



NHKスペシャル「プラネットアース」、第2シリーズのアンコール放送を観た。
NHKとイギリスBBCが、5年をかけて撮り尽くした「地球」と、そこに暮らす生命を追った映像の集大成である。

空・大地・海、それぞれで生きる生命を、美しく記録する。青い空でVを描く渡り鳥や、草原を横切る草食動物の群れ、珊瑚礁に集う星の数ほどの魚たち――。 ひとところに暮らしていては出会うことのできない、地球に暮らす様々な生き物の姿だ。
しかし。 私たち人間も含め、それらは、「何故、そこで、そうして」いるのだろうか?

渡り鳥は何故渡るのか? 草食動物は何故草原を横切るのか? 魚たちは何故珊瑚礁に集うのか?
答えは、「食べる」ためである。

果てしなく美しい地球の営み、それを記録するだけでも充分に意味はある。
そんな映像群を、この作品は「食べる」というテーマで貫いた。

夏、子育ての季節。
長い旅の末に北の大地に辿りついた水鳥に、子供が生まれた。 灰色の羽毛はふさふさで、まだ水に入れない彼らはよちよちと歩き、わずかに生える草むらに兄弟でたわむれる。 思わず声の上がるかわいらしさである。
そこに、キツネが襲いかかる。 為す術のないひな鳥たちに鋭い牙で容赦なく噛みつき弱らせて、何羽も一気にくわえていこうとする。
気付いた親鳥が駆け寄って必死に威嚇した。 キツネはややひるむが、隙を見て一羽をしっかりくわえると矢のように走り去ってしまった。
走るキツネの口から垂れ下がるひな鳥の足は、まだ宙を掻いている。 広い大地を走って走って、ようやくキツネが立ち止まった。
その足元には、幼くむくむくとしたの毛皮の、小さな子ギツネたち。
これからまた訪れる冬に備え、彼らは育ち、脂肪を蓄えねばならない。 親ギツネがとってきてくれたエサを見て、うれしそうにぴょんぴょんととびはねる。
思わず声の上がるかわいらしさである――

生きることは、他者を食べること。
この地球という惑星に生まれると同時に課せられる「仕組み」を、この番組は見事に描き出している。

更に着目すべきは、その映像技術である。
速いものを遅く。 遅いものを速く、撮る。
冬から春にかけての衛星映像では、極地近くを覆う氷がみるみると引いていき、そこに植物プランクトンを現す緑色がふわりとわきあがるように広がる。
サメがオットセイを襲う。 遙か水面下から、獲物めがけロケットのように一直線。 数メートルもある全身が水面から完全に跳ね上がるくらいに激しい、その一瞬のジャンプを、まるで一枚の絵のようにゆっくりと見せる。

狙ったストーリーはどこにもない。
ただの事実しか映していない。
なのに、勝手に涙が出てくる瞬間がある――

久々に「DVDを買わねば」と思った番組だ。

次回、第8集に始まる第3シリーズは、1月7日から。
観なかったら駿河問い


カテゴリ: [雑記] - &trackback() - 2006年12月29日 21:32:54
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