テノリライオン

07-01-07

最終更新:

corelli

- view
管理者のみ編集可
#blognavi
浅田次郎「オー・マイ・ガァッ!」読了。



参った。
これはもう、掛け値なしに「面白い」。

舞台はネオンと賭博のオアシス、ラスベガス。人生の色々なものを失ったり捨てたり奪われたりした男女三人が、ある夜並んでスロットマシンの前に座った――
彼らの一人を迎えたホテルマンは、微笑んでこう言う。
「世界の非常識はベガスの常識。世界の非日常がベガスの日常でございます」

そもそも、カジノという賭博だけで作られたラスベガス、それ自体がすでにエンターテインメントの権化だ。それをまるごと物語にすれば面白くないはずがない――と言いたいところだが。
登場人物3人がここに至る経緯などもさることながら、何よりもラスベガスという世界が実に綿密に、そして魅力的に描き出されており、その(恐らくは取材や調査に基づく)リアリティが物語の面白さをしっかりと支えているのだ。
そしてそのリアリティがまた、独立して天井知らずに面白い。例えば――

  • 空港からは砂漠の中に現れるベガスがすぐそこに見えるが、近いと思って歩き出すとその砂漠でミイラになる。各建物がデカすぎて、遠近感が狂っているのだ。
  • ベガスの従業員は「No」という言葉を禁句としている。年間三千万人の客人は「ブチ切れる」事を目的としてやってきており、そしてこの町の目的は、訪問客全員を「ブチ切る」ことにあるからだ。頭を、そしていくばくかはサイフのヒモを。
  • 飲み食いはタダ同然である。カジノの中はフリードリンク、各ホテルにあるバイキングは1,000円程度で食べ放題だ。
  • カジノの目玉のひとつ、ジャックポットの繰越金は、各店ごととは限らない。ベガス全てをオンラインで網羅した、町全体の「ジャックポット」というものが存在する。

などなど。
真偽の程はともかく、こう聞いてワクワクしない人はよほどの小――いや、堅実で安定した方であろう。
どんなゲームでも金銭を賭け始めたとたんに腰が引ける「堅実」な私ですら、一瞬グラっときたぐらいだ。

そのベガスで、なんと史上最高額5,400万ドルのジャックポットを当ててしまった3人のお話。
たいそう面白いので旦那にも読ませたいが、ある日突然ベガスに飛ばれたら困るので迷っている。


カテゴリ: [読書] - &trackback() - 2007年01月07日 16:04:19
名前: コメント:
#blognavi
記事メニュー
ウィキ募集バナー