テノリライオン

07-03-25

最終更新:

corelli

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マーク・ハッドン「夜中に犬に起こった奇妙な事件」読了。


真夜中過ぎ。近所に住むミセス・シアーズの飼い犬ウエリントンが、庭仕事に使う大きなフォークに刺されて死んでいるのを、自閉症の少年クリストファーは発見する。
(我々にしてみれば)不用意にウエリントンに近づいたクリストファー。一時周囲から疑惑の目で見られる中、彼はこの事件の犯人を見つけようと決意する。彼が好きな小説の、探偵ホームズならそうするだろうと思ったからだ。
その顛末を彼自身が書き記したノートがこの小説である。

知らない土地に行く、交通機関を利用する。健常者には何の苦もなく出来る事が、彼にはどうしてもうまく出来ない。
√を含めた二次方程式を頭の中で解く、一度歩いただけで家の間取りを完璧に覚えていつでも描ける。逆に一般的な人々にはまず出来ない事が、彼の脳の中では容易くクリアされてしまう。
周囲とは大きく異なる世界で暮らすクリストファーは、彼なりの「捜査方法」でウエリントン殺害事件を追求していく。しかしその行程で明るみに出るのは、数年前に死んだ母親の意外な事実、そして揺らいでいく彼自信の居場所だった――

著者自身が自閉症者と共に働いた経験を元に書かれているそうで、「自閉症者の一人称」という難しい手法でありながら、見事なまでにそれを逆手に取った独自の世界を展開させている。
まさに「今まで読んだことのない小説」。数々の文学賞を受賞し、全世界で一千万部を越えるベストセラーとなったのもうなずける話であった。


カテゴリ: [読書] - &trackback() - 2007年03月26日 03:58:56
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