テノリライオン

07-06-14

最終更新:

corelli

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村上龍「空港にて」読了。

村上龍自身が「今まで書いた中で最高の短編」とする「空港にて」を含む短編集。
全部読み終わるまで、共通したテーマは「音」だと思っていた。
効果音を録る仕事をしている男がコンビニで聞いた笑い声の事や、居酒屋で渦巻く雑音に抱く思い、空港に溢れるアナウンスなどの描写が印象深かったからだ。

ところが筆者のあとがきを読めば、
「前3作品は留学情報誌に寄稿した作品で留学がテーマ、残りは『希望』をモチーフにしたもの」とあって、愕然とした。
慌てて見返せばその通り、主人公達は留学を目指していたし、閉塞した状況から抜け出る道を見つけかけていた。

自分と同じ物質でつくられ同じ仕組みで動く人間が書いた文章を読んでいるのに、どうして的外れな感想を抱くのだろうと、聞くまでもなく当たり前の事に強烈な疑問を抱いてしまうのはこういう時だ。
そうでないから面白いと人は言うが、そうであればいっそ楽だろうにとも思ってしまう。
京極夏彦のインタビューで
小説なんてたかが文字の連なりにすぎないわけで、その文字の連なりから何を読み取るのか、それは読者の勝手なんです。作者の意図なんて、読者には毛一筋ほども伝わりませんよ。でも読み手は勝手にテーマをみつけ、物語を紡ぐわけです。いい作品というのは、たくさんの読者が、それぞれに面白がれる糸口を見つけられる作品なんだと思います
という言葉を聞いて納得していたばかりだからなおさら混乱する。

解法も答えも理解できているのに何故か納得できない。
書かれた通りに動かないなんて、プログラムならただの欠陥品だ。
意図があるならそれが伝わらなきゃ意味がないのではないか。
頑固に煮詰まる思考は鏡を見つめすぎて起きたゲシュタルト崩壊の不安にも似ていて、堂々巡りに飽いて通りすぎてくれるのを待つしかない。

ま、人と同じでないと不安だと思ってしまう思考回路は、他人ならいいけど自分にあるのはあまり嬉しくないなぁと思うある雨の日。
つーか読書感想文じゃないなこれ。


カテゴリ: [読書] - &trackback() - 2007年06月14日 21:33:08
  • 長くなったので記事で。ちなみにトラックバックは飛ばしたのですが、失敗したみたいです( ̄▽ ̄; http://sash.blog7.fc2.com/blog-entry-631.html -- さしゅ (2007-06-14 23:27:46)
  • すみません、ここのWikiの仕様がややアレのようで、一般のブログのように上手くはいかない機能が多く難儀しています。という訳でそちらのコメントに失礼します。 -- 管理人 (2007-06-15 00:35:30)
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