テノリライオン

07-11-21

最終更新:

corelli

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海堂 尊「チーム・バチスタの栄光」読了。


なんかもっそい久し振りに本の話だけど気にしない。

第4回「このミステリーがすごい」大賞を受賞、週間文春ミステリーベスト10でも京極夏彦や東野圭吾ら常連を押さえての3位に輝いた、新進気鋭の医療ミステリー。
大病院にありながら権力欲やポスト争いに無関心な神経内科講師田口が、外科における心臓の拡張型心筋症手術――通称バチスタ手術――で三十回以上に渡る奇跡の成功を収め続ける7人からなる「チーム・バチスタ」で起きた、不可解な連続術死の謎に挑む。


以前から気になっていた一冊を、この度ようやく文庫化されたので購入してみた。
病院モノというと真っ先に浮かぶのは山崎豊子の「白い巨塔」であり、いくらかそのイメージを引きずって読み始めたのだがさにあらず。
この本の目玉は実に鮮やかなキャラクター造形と、そしてユーモラスかつ大胆な描写力にあった。
原因究明に向けて腹の底を探り合うような、または剥き出しでぶつかりあうような人と人とのコミュニケーションを、そして物語が進むにつれ変容していく登場人物たちの印象を、遊び心の見え隠れするアクロバティックな比喩で語っていく書き口には、ともすれば失速と紙一重の奇妙な爽快感を覚える。

 なるほど、これなら外科の優秀な人材に任務を振ることができない理由もうなずける。あえて外科オンチの俺が
選ばれた必然性がはっきりした。
 だが、事情を把握したからといって、事態が好転したわけではない。ハイリスク・ロウリターンのてんこもり。
こんな依頼、無理難題などという生やさしい表現ではとてもじゃないが追いつかない。
 こういうのを、貧乏くじ、と言うのだ。

この、一歩間違えばラノベにでも転びそうな描写のノリにはアレルギー反応を起こす人もいるのではないかと思ったものだが、上でも述べたランキングがそれを否定しているのだろう。


更に驚いた事にこの著者、現役の勤務医なのだそうである。
今は引退しているが、デビューから長いこと工科大学の助教授と二足のわらじを履いた森博嗣を彷彿とさせるプロフィールだ。
その森博嗣の処女作「すべてがFになる」を読んだ時の衝撃には及ばなかったが、いわゆる「ブンガク」の背後霊に囚われていない、良く言えば自由、悪く言っても奔放な、畑違いの専門家が漂わせる茶目っ気にも似た香りは確かに彼らに共通している。
「プロフェッショナル」は無条件に面白い。久々に寸暇を惜しんで読みたい作家と作品に出会えたと思う。


まぁそんなことよりも今は踊り子なわけだが!w


カテゴリ: [読書] - &trackback() - 2007年11月21日 21:29:11
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