テノリライオン
The Way Home 第12話 満ち行く時
最終更新:
匿名ユーザー
-
view
そろそろ日が傾き始める。
ウィンダス、水の区の宿屋。
2階の窓から赤毛のタルタルの少女の顔が覗いていた。
窓枠に両手で頬杖をついた街着のドリーが、彼女には高い椅子の上で足をぶらぶらさせながら、遠い星の大樹の影をぼんやりと眺めている。
その背後のテーブルにはイーゴリとヴォルフ。
遅れて到着したヴォルフに、イーゴリが事の次第を説明している。
長く遠大な話を、そして彼らに課せられた使命をじっと黙って聞いていた長身の赤魔道士は、最後に一言、いつもどおりの声と表情で「判りました」とだけ言った。
フォーレは寄宿舎に出かけている。
まだ姿を見せず連絡もつかないルードが、そちらにいないかと様子を伺いに行っていた。
「んーーー・・・っ」
今日一日で起きたあまりに色々な事、そしてあの星の大樹の中で魔力の伝達方法を教わっているであろうルカとバルトの二人。
それらに思いを馳せるのに半分疲れて半分飽いて、窓辺のドリーは大きく伸びをする。
と、部屋のドアがぱたんと開いて、ただいまという声がした。
集まる視線の中を入ってきたのは、フォーレが一人きり。
「あれ、ルード宿舎にいなかった?」
ドリーの問いに、しおれた顔で頷く彼女。
「なーにしてるのかしらねぇ・・・夕飯までには来てほしいなぁ」
「何だ、もうメシの心配か」
「えー、いやほら一緒に食べたいじゃない、やっぱ・・・あ、ねぇ師匠」
「ん?」
「ご飯の後、ちょっと外に出ない? お手合わせ願いますよ」
「ああ、そうだな・・・お」
「うぃーっす」
タルタルの少女とガルカの師弟会話の中、威勢よくドアを開けて姿を見せたのはルードだった。
既に街着に着替えている。
「どうしたのー、遅かったじゃないよー」
安堵の笑顔で文句を言うドリー。 フォーレがほっとした表情で彼に駆け寄ると、その手の荷物を取った。
「いやーすいません、バストゥークで一応図書館に行ってたら、時間喰っちゃって」
「・・・何やらずいぶん疲れてるみたいだが。 大丈夫か?」
イーゴリが気遣わしげに言う。 確かにタルタルの少年の顔色は、お世辞にもいいとは言い難かった。
「ははは、図書館で調べ物なんかめったにしないですからねー。 ちょっと、消耗しました」
「ふむ、ならいいが・・・」
「あ、それでねルード、結構大変な事になったのよ。 説明が長くなるから・・・」
「いや、大丈夫です。 さっき星の神子の所に挨拶に上がったんで、話は聞きました」
「あら早いこと」
「バルトさん達の事も聞きましたよ、面白いじゃないすか。 で、今日は二人は泊まりがけになるそうです」
仲間とのやりとりの切れ目に、ルードはこっそり息をつく。
―――妖魔の鎌は、無事に運び終わった。
メアに飛んでチョコボを駆り、サルタバルタの隅の岩陰に隠してから神子の元に赴き、報告した。
何か判ったら教えてほしいと頼んで、神官魔道士をそこに案内し安全を確認して後を任せる。
が、そんなこんなの説明も億劫と、結局は図書館に行っていたなどと言って適当に誤魔化してしまうルードだった。
「なら俺も一度顔を出してきた方がいいな」
ヴォルフが立ち上がり、椅子の背にかけていた赤と黒を基調とする魔道士の正装を手に取った。
「あ、そうね。 それじゃヴォルフが戻ったらご飯にしましょうか」
「何がどうあってもメシだな、お前は」
「いいじゃない、健全と言ってちょうだい」
* * *
「―――でですね。 俺らからも、呼びかけてみませんか」
ヴォルフが星の大樹から戻り、ルカとバルトが欠けた5人での夕食の席。
自然と今後の戦いの話題になる中、ルードが言った。
「ん? 呼びかけるって?」
兎の照り焼きを頬張るドリーが問い返す。
「クエストが発表されれば人は集まるでしょうけど、出足が遅かったらしょうがない。 それに、俺らが代表として先頭張るんなら、顔が知れてた方がいいでしょう」
「うん、それはそうだな」
グラスになみなみと発泡酒を注ぎながら、イーゴリが頷く。
「クエストが出てバルトさん達とも合流したら、ジュノに戻りましょう。 当然拠点になるのはあそこでしょうから。 んで、一発演説でもかましましょうや」
にやりと嗤うルード。 どうもこのタルタルは、状況を楽しんでいる節がある。
「え、演説って、誰がするのよ」
「んーまぁ年功序列でイーゴリさんにお願いしたいですけど、俺もやりますよ俺も」
「むしろ自分がやりたいんでしょう、さては」
「んっふっふ」
「なるほど、きっと俺は演台になるんだな」
「あ、そういう事ね」
「またまたそんな、とんでもないっすよ」
食堂の暖かい喧騒の中を、吟遊詩人の陽気な唄と料理の匂いが縫うように流れていく。
短くも厳しい砂漠を抜けてきた後のオアシスのような、かりそめでも穏やかな夕食の席だった。
「よっし、ごちそうさま! さぁ師匠、行くわよ!」
「あーまぁ待て待て、ちょっと一服してからな」
「もう、年寄りはこれだからー。 先に剣取って来るからね!」
「お、何ですか特訓ですか。 俺も混ぜてくださいよ」
「いいわよー、じゃ三人でやろう、出口に集合ね」
「よしきた」
やんちゃな二人のタルタルが、もつれるように先を争って宿に戻っていく。
その光景を髭面の奥で笑いながら見送るイーゴリ。
「ま、ちょいとあいつらを転がしてくるから、留守番を頼んだよ」
「はい」
ちびちびと果実酒を飲むヴォルフと、デザートを前に嬉しそうな顔のフォーレが頷く。
食堂の外を、何事かをやいやいと騒ぎ立てながら走っていく二人の声が通り過ぎていった。
* * *
明けて翌日、大樹の頂を包む朝靄もすっかり晴れた頃。
クエストの交付が終わったという報告が、宿屋に居る彼らにもたらされた。
そしてその使いのタルタルと一緒に、訓練を終えた二人が神子のもとから戻ってくる。
「おかえりー!! どうだった? できるようになった?」
飛び跳ねるように二人を迎えたドリーが、目を輝かせて二人に聞いた。
「あー、うん、とりあえずできるようにはなったよ」
ルカとバルト、二人とも笑顔ではあるが、何やらルカの方に少々疲労の色が濃い。
「本当に!? 見せて見せてー!」
すっかり興奮してしまってそんな事には気付かないドリーが、実演をせがむ。
「ほい」
ルカが左の掌を上に向け、ひょいと隣に立つバルトに差し出した。
よく見ればその両手首には、細かな細工が施されたバングルがはまっている。
それを受けたバルトが、以前と変わらぬ手順で宙に小さく印を切る。
彼の周囲に見慣れた白い光が浮かぶ。 そしてその手を、ぽんとルカの手に載せた。彼女の口が開く。
「・・・東の空の癒し風よ、我が掌より舞い集え」
するとその言葉と同時に、バルトが纏っていた白い輝きが吸い込まれるようにルカに移ったかと思うと、一瞬で左から右へと彼女を通り抜けた。
そしてその右手から目の前のドリーへと向け、文言通りの回復の魔法が流れる。
「うわー、本当だ! すごいすごい!!」
手品を見た子供のように大はしゃぎのドリー。 他の面々からも感嘆の声が上がる。
フォーレがルカの腕に目を留めて聞いた。
「ルカさん、そのバングルが仲立ちをしてるんですか?」
「うん、何か特別に用意してくれたやつ。 これつけてると、貰った魔法が何だかがよく判るんだよね。 これで最初の感覚を掴んだ」
両手首をひらひらと振りながら答えるルカ。 貴石か魔法の光点か、繊細な模様の間で小さな光が瞬いている。
今度はルードが訊いた。
「へー・・・。 あ、もしかしてそれは、結構体力使うんすか?」
「ん、体力は特に使わないかな」
「ほう? いや、何かお疲れぎみに見えるんで。 それでかなーと」
「あー・・・うーん、疲れるって言うか、疲れたって言うか」
「え、何か問題あったの?」
ドリーが心配そうに訊くと、横でバルトがくつくつと笑っている。
「いや・・・まぁ、当然っちゃ当然だったんだけどさ・・・使う呪文をね、全部覚えなきゃいけなくて・・・」
「・・・あー・・・」
皆が、笑っているような困っているような、それはもう何とも言えない表情になる。
「や、ちょっとなら知ってるし、あと基本のよく使うのは大体覚えたのよ? 一応いつも傍で聞いてたから。 でもほら、特に移動呪文とか古代魔法とか・・・長くて難しいあいつらがなかなか一発で唱えられなくて・・・バルトはとっとと自分の分のコツを掴んで、いつのまにか出題する方に回ってるし・・・」
「それで一晩かかってた、と・・・」
「ま、そういうことです・・・」
ルカを含めたその場の全員に、暖かいながらも乾いた笑い声が広がった。
* * *
鮮やかな緑に三方を囲まれたウィンダス港。 穏やかな海面にきらきらと映える、暖かい太陽。
まばゆく踊る飛沫を切り裂き、そのかけらを降らせながら、巨大な飛空挺が滑るように空へと舞い上がった。
それは、この世界の中心に向かう船。
三日月の形を成す、冷たい白に覆われる大地だ。
今、その奥深くに、無数の眠れる脅威を抱えている。
その脅威に再戦を挑む七人の冒険者を、白き島へと運ぶのが、この船の仕事だった―――
to be continued
ウィンダス、水の区の宿屋。
2階の窓から赤毛のタルタルの少女の顔が覗いていた。
窓枠に両手で頬杖をついた街着のドリーが、彼女には高い椅子の上で足をぶらぶらさせながら、遠い星の大樹の影をぼんやりと眺めている。
その背後のテーブルにはイーゴリとヴォルフ。
遅れて到着したヴォルフに、イーゴリが事の次第を説明している。
長く遠大な話を、そして彼らに課せられた使命をじっと黙って聞いていた長身の赤魔道士は、最後に一言、いつもどおりの声と表情で「判りました」とだけ言った。
フォーレは寄宿舎に出かけている。
まだ姿を見せず連絡もつかないルードが、そちらにいないかと様子を伺いに行っていた。
「んーーー・・・っ」
今日一日で起きたあまりに色々な事、そしてあの星の大樹の中で魔力の伝達方法を教わっているであろうルカとバルトの二人。
それらに思いを馳せるのに半分疲れて半分飽いて、窓辺のドリーは大きく伸びをする。
と、部屋のドアがぱたんと開いて、ただいまという声がした。
集まる視線の中を入ってきたのは、フォーレが一人きり。
「あれ、ルード宿舎にいなかった?」
ドリーの問いに、しおれた顔で頷く彼女。
「なーにしてるのかしらねぇ・・・夕飯までには来てほしいなぁ」
「何だ、もうメシの心配か」
「えー、いやほら一緒に食べたいじゃない、やっぱ・・・あ、ねぇ師匠」
「ん?」
「ご飯の後、ちょっと外に出ない? お手合わせ願いますよ」
「ああ、そうだな・・・お」
「うぃーっす」
タルタルの少女とガルカの師弟会話の中、威勢よくドアを開けて姿を見せたのはルードだった。
既に街着に着替えている。
「どうしたのー、遅かったじゃないよー」
安堵の笑顔で文句を言うドリー。 フォーレがほっとした表情で彼に駆け寄ると、その手の荷物を取った。
「いやーすいません、バストゥークで一応図書館に行ってたら、時間喰っちゃって」
「・・・何やらずいぶん疲れてるみたいだが。 大丈夫か?」
イーゴリが気遣わしげに言う。 確かにタルタルの少年の顔色は、お世辞にもいいとは言い難かった。
「ははは、図書館で調べ物なんかめったにしないですからねー。 ちょっと、消耗しました」
「ふむ、ならいいが・・・」
「あ、それでねルード、結構大変な事になったのよ。 説明が長くなるから・・・」
「いや、大丈夫です。 さっき星の神子の所に挨拶に上がったんで、話は聞きました」
「あら早いこと」
「バルトさん達の事も聞きましたよ、面白いじゃないすか。 で、今日は二人は泊まりがけになるそうです」
仲間とのやりとりの切れ目に、ルードはこっそり息をつく。
―――妖魔の鎌は、無事に運び終わった。
メアに飛んでチョコボを駆り、サルタバルタの隅の岩陰に隠してから神子の元に赴き、報告した。
何か判ったら教えてほしいと頼んで、神官魔道士をそこに案内し安全を確認して後を任せる。
が、そんなこんなの説明も億劫と、結局は図書館に行っていたなどと言って適当に誤魔化してしまうルードだった。
「なら俺も一度顔を出してきた方がいいな」
ヴォルフが立ち上がり、椅子の背にかけていた赤と黒を基調とする魔道士の正装を手に取った。
「あ、そうね。 それじゃヴォルフが戻ったらご飯にしましょうか」
「何がどうあってもメシだな、お前は」
「いいじゃない、健全と言ってちょうだい」
* * *
「―――でですね。 俺らからも、呼びかけてみませんか」
ヴォルフが星の大樹から戻り、ルカとバルトが欠けた5人での夕食の席。
自然と今後の戦いの話題になる中、ルードが言った。
「ん? 呼びかけるって?」
兎の照り焼きを頬張るドリーが問い返す。
「クエストが発表されれば人は集まるでしょうけど、出足が遅かったらしょうがない。 それに、俺らが代表として先頭張るんなら、顔が知れてた方がいいでしょう」
「うん、それはそうだな」
グラスになみなみと発泡酒を注ぎながら、イーゴリが頷く。
「クエストが出てバルトさん達とも合流したら、ジュノに戻りましょう。 当然拠点になるのはあそこでしょうから。 んで、一発演説でもかましましょうや」
にやりと嗤うルード。 どうもこのタルタルは、状況を楽しんでいる節がある。
「え、演説って、誰がするのよ」
「んーまぁ年功序列でイーゴリさんにお願いしたいですけど、俺もやりますよ俺も」
「むしろ自分がやりたいんでしょう、さては」
「んっふっふ」
「なるほど、きっと俺は演台になるんだな」
「あ、そういう事ね」
「またまたそんな、とんでもないっすよ」
食堂の暖かい喧騒の中を、吟遊詩人の陽気な唄と料理の匂いが縫うように流れていく。
短くも厳しい砂漠を抜けてきた後のオアシスのような、かりそめでも穏やかな夕食の席だった。
「よっし、ごちそうさま! さぁ師匠、行くわよ!」
「あーまぁ待て待て、ちょっと一服してからな」
「もう、年寄りはこれだからー。 先に剣取って来るからね!」
「お、何ですか特訓ですか。 俺も混ぜてくださいよ」
「いいわよー、じゃ三人でやろう、出口に集合ね」
「よしきた」
やんちゃな二人のタルタルが、もつれるように先を争って宿に戻っていく。
その光景を髭面の奥で笑いながら見送るイーゴリ。
「ま、ちょいとあいつらを転がしてくるから、留守番を頼んだよ」
「はい」
ちびちびと果実酒を飲むヴォルフと、デザートを前に嬉しそうな顔のフォーレが頷く。
食堂の外を、何事かをやいやいと騒ぎ立てながら走っていく二人の声が通り過ぎていった。
* * *
明けて翌日、大樹の頂を包む朝靄もすっかり晴れた頃。
クエストの交付が終わったという報告が、宿屋に居る彼らにもたらされた。
そしてその使いのタルタルと一緒に、訓練を終えた二人が神子のもとから戻ってくる。
「おかえりー!! どうだった? できるようになった?」
飛び跳ねるように二人を迎えたドリーが、目を輝かせて二人に聞いた。
「あー、うん、とりあえずできるようにはなったよ」
ルカとバルト、二人とも笑顔ではあるが、何やらルカの方に少々疲労の色が濃い。
「本当に!? 見せて見せてー!」
すっかり興奮してしまってそんな事には気付かないドリーが、実演をせがむ。
「ほい」
ルカが左の掌を上に向け、ひょいと隣に立つバルトに差し出した。
よく見ればその両手首には、細かな細工が施されたバングルがはまっている。
それを受けたバルトが、以前と変わらぬ手順で宙に小さく印を切る。
彼の周囲に見慣れた白い光が浮かぶ。 そしてその手を、ぽんとルカの手に載せた。彼女の口が開く。
「・・・東の空の癒し風よ、我が掌より舞い集え」
するとその言葉と同時に、バルトが纏っていた白い輝きが吸い込まれるようにルカに移ったかと思うと、一瞬で左から右へと彼女を通り抜けた。
そしてその右手から目の前のドリーへと向け、文言通りの回復の魔法が流れる。
「うわー、本当だ! すごいすごい!!」
手品を見た子供のように大はしゃぎのドリー。 他の面々からも感嘆の声が上がる。
フォーレがルカの腕に目を留めて聞いた。
「ルカさん、そのバングルが仲立ちをしてるんですか?」
「うん、何か特別に用意してくれたやつ。 これつけてると、貰った魔法が何だかがよく判るんだよね。 これで最初の感覚を掴んだ」
両手首をひらひらと振りながら答えるルカ。 貴石か魔法の光点か、繊細な模様の間で小さな光が瞬いている。
今度はルードが訊いた。
「へー・・・。 あ、もしかしてそれは、結構体力使うんすか?」
「ん、体力は特に使わないかな」
「ほう? いや、何かお疲れぎみに見えるんで。 それでかなーと」
「あー・・・うーん、疲れるって言うか、疲れたって言うか」
「え、何か問題あったの?」
ドリーが心配そうに訊くと、横でバルトがくつくつと笑っている。
「いや・・・まぁ、当然っちゃ当然だったんだけどさ・・・使う呪文をね、全部覚えなきゃいけなくて・・・」
「・・・あー・・・」
皆が、笑っているような困っているような、それはもう何とも言えない表情になる。
「や、ちょっとなら知ってるし、あと基本のよく使うのは大体覚えたのよ? 一応いつも傍で聞いてたから。 でもほら、特に移動呪文とか古代魔法とか・・・長くて難しいあいつらがなかなか一発で唱えられなくて・・・バルトはとっとと自分の分のコツを掴んで、いつのまにか出題する方に回ってるし・・・」
「それで一晩かかってた、と・・・」
「ま、そういうことです・・・」
ルカを含めたその場の全員に、暖かいながらも乾いた笑い声が広がった。
* * *
鮮やかな緑に三方を囲まれたウィンダス港。 穏やかな海面にきらきらと映える、暖かい太陽。
まばゆく踊る飛沫を切り裂き、そのかけらを降らせながら、巨大な飛空挺が滑るように空へと舞い上がった。
それは、この世界の中心に向かう船。
三日月の形を成す、冷たい白に覆われる大地だ。
今、その奥深くに、無数の眠れる脅威を抱えている。
その脅威に再戦を挑む七人の冒険者を、白き島へと運ぶのが、この船の仕事だった―――
to be continued