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下っ端吏族の食糧増産レポート

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匿名ユーザー

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当然ながら、歩兵は糧食を必要とする。
当然歩兵を要するような大規模な作戦に応じて後方にある土場藩国でも食糧増産に関する命令が下っていた。

下っ端吏族の食糧増産レポート

実りの季節には盆地を囲む山々を背景に差し込む夕陽に照らされた黄金の海原を見ることができる。これを支えるのは南部山嶺より出ずる川の流れであり、土場藩国の食を担う優秀な生産者たちであろう。
 振り返ってみれば彼らが土場の地を改良しはじめてからこの国の穀倉地帯は土場の食糧庫と呼ばれるようになったのであろう。帝國に誇れるものの一つであることは間違いない。

 実のところこの増産命令で土場藩国公認農業試験場ではかねてからの懸案であった新たな品種改良への着手が始まったのは必然であると言える。
季節ごとに収穫できるよう品種改良された3種、それぞれをベースに更なる味の追求を行い、収穫高までも増やしてしまおうという試みである。収穫高を上げるだけならそれほど、困難ではないだろうが、味を犠牲にしてまで収穫高を上げたとしてもそのために不満が出るようでは国を代表する食べ物の名が泣いてしまう。それなら飽きない味で大量の小麦を収穫できる種を作り上げよう、そんな気概で計画はスタートしたのであった。
 初めのうちはとても順調に進んでいた。当然ながら後方にありながら支援できる。しかもそれがこれまで資金面の問題で大々的にはできなかった新規品種改良である。士気が上がらないわけがなかった。
 実際にシミュレーションするための施設で生産者達は心を踊らせている状況ではあったが、その内容を知るにつれ次第にその表情は曇っていった。

そこには大きな問題が立ち塞がっていたのである。

それは、克服したはずの季節の壁であった。
これまでの土場藩国の持つ種では確かに十分な味と収穫を見込めたのではあるが、これをより収穫高も、味も向上させるとなれば季節を問わず全ての種で同じように結果を出したいと思うのが人情である。
実際その時できた春小麦では想像以上のものができる反面、冬小麦ではゴーサインが出せる状況まで辿り着かなかったのである。どうしたものであろうかと頭を悩ませる人々。しばらく悩んだ後、生産者たちは一度はそこで挫折しかけた。春小麦での成功だけでもいいじゃないか、みんな認めてくれるさ、とそう口々に言い出しはじめたのである。

だがしかし、

「それでも私は挑み続ける」

そう公言し続けた男がいる。それはかつて単独で農業試験を開始しはじめ、ついにはその成功ゆえに公認施設に認定されるまでになった土場藩国公認農業試験場の所長のクゥーキ・ヨメ氏である。
他の誰があきらめようと自分だけはあきらめるまい、まるで自分に言い聞かせるように彼は挑み続けたのである。

既存の種とのあらゆる組み合わせを洗い出す作業を黙々と続けた彼の姿に始めのうちは冷ややかな視線と皮肉しか飛ばなかった。過去の功労者である彼ですらそのような扱いになってしまうぐらい、事態は硬直していたともいえる。

しかし、その涙ぐましい努力を見続け、ひとり、またひとりと生産者たちは帰ってきたのである。個々では微々たる力かもしれないが、皆が力を合わせれば可能かもしれない。
すでに彼らの頭の中には功にあせる姿は微塵も見られなかった。

所長は大多数の組み合わせを確認した後、大きな決断を下すことになる。

冬小麦がうまくいかない。ならばそのベースから組み直せばいいのではないか?
そこで再度原点に立ち戻ることを決断したのである。

想像以上に最適な組み合わせを試す作業は難航した。土場藩国内以外にも輸入品にすら手を出して掛け合わせて行ったからである。だが、その苦労に見合うだけのものができたと今は胸を張って言えるとは所長の談である。

最後に所長に一言をいただいて、お別れとしよう。

「ええ、わたしどもの試験場から出た品種が国中に広まることは願ってもないことですね。ええ、まだ増産は開始したばかりですが、近いうちにもっと街中にも見られるようになると見ています。あの時にあきらめなくて本当によかったと思っていますよ」

下っ端吏族の食糧増産レポート了

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