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男女反転13話

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datui

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反転しろよお前ら……え、してる?


「何だよそれ……」

山中――E-6エリアの茂みの中で、少年は呆然と呟いた。
何も知らなければボーイッシュな服装の美少女とも思えてしまうほどに整った顔立ちと、線の細い体つき。
彼の名は菊地誠。
弱小アイドル事務所765プロに所属する男性アイドルである。
個性的なアイドルが集う765プロにおいて、彼は一際異色を放つアイドルだった。
白く透き通るような肌。
二次性徴を忘れてしまったかのように女性的な美声。
そう、彼は服装さえ変えれば美少女アイドルとして明日にでも売り出せてしまいそうなスペックの持ち主なのだ。

――名前が紛らわしい?
ほっとけ。

――反転前と外見的には変わってない?
それは合ってる。

――むしろ完全にそのまんまじゃね?
ちょっと屋上行こうぜ……

……ともあれ誠は茂みに隠れて一人頭を抱えていた。
無理もないだろう。
レッスン帰りに突然意識が遠のいたかと思ったら、こんな殺し合いの場に引っ張り込まれてしまったのだから。
一応、彼も思春期真っ盛りの青少年である。
眼前で繰り広げられた女同士のあれやこれやに反応しなかったわけではない。
しかし、そんなものは直後の惨劇で一気に吹き飛んでしまっていた。

「殺し合いなんて、僕……」

どこぞで盛大に勘違いしている同僚とは違い、彼は自分の置かれている状況を正しく把握しているようだった。
ちなみに、彼は同僚が同じ場所にいたことまでは気付いていない。
夢中だったからね。

「……やらないといけないのかな」

しばらく迷い続け、誠はデイパックから一振りの剣を抜き取った。
紫がかった暗黒色で刀身に不思議な文字が刻まれた、ファンタジー成分の結晶のような武器だ。
分類としては両手で扱う西洋剣。
空手で鍛えた誠でも剣としてまともに扱うのは到底不可能なサイズである。
1メートル前後はある鋼鉄の塊を振り回すようなものだ。
それでも、この強度なら鈍器として使っても充分強力だろう。
誠は切っ先を地面に引きずりながら、道行く人影に近付いていった。
無防備にも独りきりで山道を歩く少女――
あれでは襲ってくださいと言っているようなものだ。
誠はごくりと唾を飲み込んだ。

やるしかない。
しかたがないんだ。
プロデューサーのところに帰るためには――

「わあああああああっ!」

背を向けて歩く少女に向かって走り出し、剣を振り被る。
決死の気迫を込めた一撃は、驚くほどあっさりと回避された。
そして素早く回転する少女の身体。
誠の意識は、世界を狙えるレベルの後ろ回し蹴りによって見事に刈り取られてしまった。



  ○  ○  ○



目を覚ますと、なんとなく見知った天井がそこにあった。

「あれ、僕……」

朦朧とする意識の中、誠は上体を起こす。
額から濡れたタオルが落ちた。
天井から吊り下げられた蛍光灯。
やたらと大きなガラス窓。
窓際に並んだ手洗い場。
ベッド代わりになっている、二~三畳分はありそうな天板の木の机。
部屋の隅に押し込められた雑多な物品。
どうやらここは学校、それも美術室のようだ。
現役高校生の誠にとって見覚えがある場所のはずである。

「……」

段々記憶が蘇ってくる。
確か、森の中で少女に襲い掛かって、そこで返り討ちに……。

「気が付きましたか」

振り向くと、そこには金髪碧眼の美少女が立っていた。
芸能界で女性アイドルなど見慣れている誠でも目を奪われるほどの美しさだ。
芸術的な彫像のようであり、研ぎ澄まされた剣のような怜悧さも兼ね備えている。
背丈はそう高くなく、誠と大差ないくらいだろう。
少女は誠が落とした濡れタオルを拾うと、手洗い場に持っていって洗い始めた。

「私を攻撃したことを咎めるつもりはありません。何せ、あのようなことがあった直後ですから」

少女は後片付けを終えるなり、椅子を引いて誠の傍に腰を下ろした。
誠も釣られて机から降り、少女と向かい合う形で椅子に座る。

「まずは互いの呼称を教えあいませんか。
 あくまで会話を円滑に進めるためですので、本当の名でなくても構いません。
 協力するにせよ反目するにせよ、呼び名が分からないのでは不便だ」

少女はひたすら生真面目に事を進めていく。
その牽引力に呑まれて、誠は言われるがままに自分の名前を口にした。

「僕は、誠……菊地誠です」
「……僕、ですか。いいでしょう。私のことはセイバーと呼んでください」



   ○  ○  ○



賢明なる――というか、メタ知識を持ってる読者の皆様はもうお気付きだろう。
『彼ら』二人の『美少年』は、互いのことを『美少女』であると誤解しているのである。
セイバーの真名はアーサー・ペンドラゴン。
伝説に名高きアーサー王その人である。

かつて幼き頃の彼は女王となるべき人間を選定する剣カリバーンを引き抜き、老化と成長から解き放たれた。
そうして不老となった彼はとある魔女の助力を得て性別を偽り、戦場に散るまでの十年間、女王として君臨したのである。

ちなみに彼の部下たる円卓の騎士は、
  • 気高き戦姫アルトリア女王燃え派
  • 女装ショタっ子アーサーたん萌え派
に分かれており、これが後に国家を二つに分ける騒乱の火種となったとかならなかったとか。
エリートのくせに性癖的にはダメ人間って昔からいたんだね。
なお、本人は部下がそんな目で自分を見ていたことには 一 切 気付いていない。
正体ばれてるだろとか禁句。




   ○  ○  ○

「では、マコト――」

セイバーは暗がりから一振りの剣を取り出した。
誠はびくりと身体を震わせ、身を守るように手をかざす。
襲い掛かった引け目からかセイバーに仕返しされると思ってしまったのだ。
だが、セイバーはそんなことなど毛頭考えていないようだった。

「貴女が持っていたこの剣と、私のバッグに入っていたこの武装を交換してはもらえないか?」

交渉を持ちかけるセイバーの顔は、どこか懐かしそうで、どこか哀しそうだった。
その表情に負けて、誠はこくこくと頷いた。
元より自分では扱いきれない代物である。
何と交換して貰っても損はないだろう。
誠に掌大の金属塊を渡し、セイバーは微笑んだ。

「ありがとう、無理を言ってしまった」

セイバーは誠が両腕でも四苦八苦した剣を片手で軽々と振るって、傍らの机に立てかけた。
改めて、セイバーから受け取った六角形の金属板に目をやる。
本当に綺麗な銀色の六角形だ。
表面には何やらアルファベットらしき文字が刻印されている。

「エックス、エル、アイ、ブイ……何て読むのかな」
「それを握って"武装錬金"と叫べば武器に変形するようです」

小さな紙片を見ながら解説するセイバー。
親切なことに取扱説明書付きらしい。
誠は呼吸を整えた。
イメージは特撮ヒーローの変身シーン。
大丈夫、その手の仕事は経験がある。

「いくよ、武装錬金!」

六角形の金属板が瞬時に分解され、瞬く間に新たな形状を構成する。
板状の鋭いブレード。
複雑な関節のロボットアーム。
そして、布が破ける音。

「……へ?」

誠の叫びと共に、武装錬金『バルキリースカート』がその姿を現した。
ただし、ズボンの太股辺りを引き裂いて。

「どうやら素肌に直接装着される仕組みのようですね」
「それを先に言ってよー!」

誠の穿いていたジーンズはものの見事に引き裂かれ、股下数センチの半ズボンと化していたという。
男の生脚なんて誰が得をするんだ、誰が。



ここにいるぞ!とか思った奴、後で屋上な。





【一日目深夜/D-6 鎌石小中学校 美術室】

【セイバー@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:アロンダイト@Fate/Zero
[所持品]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考]:
1.誰がこんな酷いことを……

※外見は通常のセイバーと大差ありません。
※鎧は魔力で生み出すため任意で脱着可能です(現在は未装備)
※菊地誠のことを女性だと思っています。



【菊地誠@THE IDOLM@STER】
[状態]:健康、半ズボン
[装備]:バルキリースカート@武装錬金
[所持品]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考]:
1.なんで僕がこんなことに……

※外見は通常の菊地真と大差ありません。
※セイバーのことを女性だと思っています。


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