エピソード「ルーマニアは燃えているか?」:作戦記録・ストライクス戦隊編その2

「柑橘軍の発表に対しドイツは「遺憾の意」を表明した。その上でニュールーマニア帝国を「EU加盟国すべての敵」とし徹底的に殲滅すると表明した。」- 某日、テレビ報道より


アマヅキ「…さてと、次はこれかね…」
そういうとアマヅキはPCを操作し、別の記録データを呼び出す。

記録データの戦力図には「有志義勇軍」という、さまざまな国から戦術機(※戦術戦闘機ではなく、この場合は戦術歩行戦闘機の略称。)やアーム・スレイブ、レイバー、さらにはMS等の機動兵器とその搭乗者、そして彼らを支援する艦艇とそのクルーを寄せ集めた、臨時の混成部隊だ。
その混成部隊の中には本来、ストライクス戦隊に所属している戦術機とMS、そしてストライクス戦隊所属のラー・カイラム級が参加していた

アマヅキ「まぁ、ウチの中から義勇軍に参加してた奴らがいて、そのバックアップのためにウチからラー・カイラムを寄越したわけさ。で、義勇軍の戦果だけど…」
そういうとアマヅキは、記録データを再生する。



数ヶ月前、ルーマニア

ストライクス戦隊所属ラー・カイラム艦内

李野(…ニュールーマニア帝国の目的…旧予堂軍時代からそうだったけど、あいつ等が目指す「真理」がこの世界の、今ある世界を叩き壊すのは分かっている…それにあいつらの思想はたとえ対話できたとしても「分かり合えない」…いや、「分かり合えても相容れない」…
それ以上に、ニュールーマニア帝国はまるでヨーロッパに戦争を呼び込んでいる。今まさに、目の前で起きている戦争。その原因はあいつら…柑橘軍は止めもせず、むしろ傍観している。これは、自分たちの思い通りに事が動いているから何もしないという意味だろう。
やはり、あいつ等はこの世界を破壊するのが目的なのだろう…つまりは、あいつ等を止めれるのは私達しかいないのかもしれない…)

宮畑涯「…艦長」
李野「…」
宮畑涯「艦長!」
李野「きゃっ、何よ涯」
宮畑涯「久しぶりに艦長が考え込んでたものでな。それと、コーヒーだ」
李野「…あ、ありがとう」ズズズ
宮畑涯「…何年ぶりだろうな、艦長がここまで考え込むなんて」
李野「…高校に居た時の、あの時以来ね…」
宮畑涯「ああ、あの時も世界の危機が目の前で起きていた、そしてソレに立ち向かっていた。」
菫仂カール「で、そんときに李野ったら今のよーにふかーく考え込んでてさ。しかも最終決戦前だってのに」
李野「カールったら…」
菫仂カール「だけどさ、あの時はあの時でやばかった。けどソレに立ち向かったから今の世界があって今の俺たちがいる。そしてまた目の前に世界の危機が迫ってる。」
宮畑涯「結局はうかうか寝てられないってことさ。目を覚まさなきゃ俺たちの世界が侵略されちまうからな」
李野「そうね。」


李野「全艦艇に通達!まもなく作戦ポイントに到達します!コンディションレッド発令!機動兵器パイロットは搭乗機で待機!」

耕田朗「…出撃か…!」
美柚沙汰「そうね…」
耕田朗「どうした?」
美柚沙汰「いや、この戦い、激戦になるよ」
耕田朗「ああ、敵将を討ち取る、作戦自体は単純だけどな。」
美柚沙汰「けど、私のカンがそう告げてる。それに最近、私のカンがさえて来てる。」
耕田朗「……今の機体に乗り換えたころから美柚沙汰のカンがさえてきたりしてるよな。…GNドライブ4個積みしてればそうなるか」
美柚沙汰「…ソレは否定しないわね」
耕田朗「ま、ニュータイプとかイノベイターだって逆立ちしても神様にはなれないんだし、肩の力は多少抜こうぜ」

作戦内容は単純だ。ストライクス戦隊の先行突入チームがあけた穴から艦艇を送り込み、機動兵器部隊を投入、そしてニュールーマニア帝国の幹部がいると思わしきエリアの制圧と幹部の抹殺。
シンプル・イズ・ベスト。なにより、この作戦自体、「ISA戦術(Integrated Synchronizing Attack、空母の役割を果たす機動戦艦と、そこに搭載された人型機動兵器による電撃戦)」と呼ばれる戦術そのものである。


ラー・カイラムやストーク級大気圏内用空中戦闘母艦、ガウ型攻撃空母やミデアやファットアンクルといった輸送機から多数の機動兵器…戦術機やMS、AMにレイバー、アーム・スレイブなどが出撃していく。
出撃する機体の中にはSFS(※サブ・フライト・システム。機動兵器との併用を前提とした航空機。)を用いて飛行するものや飛行形態に変形して飛ぶもの、パラシュートを用いた降下を行うもの等が存在する。

菫仂カール「菫仂カール、フォレニールガンダム、出るぞ!」
宮畑涯「ブルーストライダー、宮畑涯、出撃する!」
耕田朗「ザク改、照島耕田朗、出ます!」
美柚沙汰「美柚沙汰ミッチェル、メタトゥエルガンダム、出撃します!」
由香里「穂美奈隊、00式戦術歩行戦闘機・武御雷、出撃するぞ!」

ラー・カイラムから出撃する、何機かのMSと4機の戦術機。そのうち3機のMSは複数のMSのパーツで構成されている。そのパイロット3名は以前から乗っていた機体からそのMSに乗り換えている。
しかし、それでも慣熟訓練等をつんでおり、以前から乗っていた機体と同等に扱える。
そのうち1機、メタトゥエルガンダムは太陽炉…GNドライブを積んでおり、緑色のGN粒子を放出しながら飛行していく。
GN粒子を放出しながら飛行するMSは他にもいた。ジンクスタイプだ。しかし、メタトゥエルガンダムとは違い、オレンジ色のGN粒子を放出している。

複数の空中戦闘母艦や空母代わりになる爆撃機、さらには輸送機から降下ないし発進する機動兵器の大群はニュールーマニア帝国の雑兵を一掃していく。
しかし、黙ってやられる雑兵ではない。
一部の雑兵が10m級の機動兵器のような姿に変身し、抵抗を仕掛ける。
先のストライクス戦隊の先行突入チームとの交戦が堪えたのか、一部の兵士と幹部に突然備わった変身能力。元々有機的機械生命体という存在であったがためにある種の「トランスフォーム」というべき能力がまるで生物の進化のように備わったのである。
だが、それでもこの世界の機動兵器との差は中々に埋まらない。

物理的な攻撃は避けられるか盾で防がれるか、手にした近接戦用の武器で切り払われるか、射撃武器で撃ち落される。
ならばと特殊な攻撃を行う者もいた。
だが、それも避けられたり、すぐに応急的な物だが対策され、有効ではなくなる。

それだけではなかった。

李野「各艦、支援砲撃初め!」
ビームやミサイル、果てには機関砲に爆撃と母艦からの支援攻撃が始まり、ニュールーマニア帝国軍の雑兵は蹴散らされていく。

義勇兵A「撃てぇ!撃ちまくれぇ!」
MS乗りの義勇兵は「OZ-06MS リーオー」や「OZ-07AMS エアリーズ」、「MMS-01(OZ-17MS) サーペント」、「MSJ-06II-A ティエレン地上型」、「AEU-09 AEUイナクト」といった今となっては旧式当然の機種を扱う者がほとんどだ。
払い下げ品とはいえ、「GNX-609T ジンクスIII」や「GNX-607T ジンクスII」といった「ジンクスタイプ」のMSを運用する義勇兵は少ない。これは擬似太陽炉関係もあいまって払い下げ品としてはかなり高価な機種であり、その上で運用に必要な機材の値段も込みであるために高価である。
また、「MWF-JG73 シビリアンアストレイJGカスタム」を搭乗者自身がさまざまな改修を施した機体も投入されている。
そういった製造メーカーも異なる複数のMSの大群に加えて、「Rk-92 サベージ」と呼ばれるアームスレイブ、「RAM-004F リオン・タイプF」と呼ばれるアーマードモジュール、もはやドイツ軍でも更新作業をやってるかわからないSSE製軍用レイバー「TYPE-7 ブロッケン」、そして「F-16ブロック52/D戦術機」や「JAS-39 グリペン戦術機」といった機動兵器が義勇軍によって投入されている。
義勇兵B「ニュールーマニア帝国の奴らをこの世界から駆逐し、俺たちの世界を守るんだ!!」
F-16ブロック52/D戦術機に乗った義勇兵の部隊が両手に装備した「AMWS-21 戦闘システム」に搭載されている36㎜チェーンガンでニュールーマニア帝国の雑兵を蹴散らしていく。
義勇兵C「すすめぇ!!ニュールーマニア帝国の奴らを駆逐しろぉ!!世界の平和のために!この戦いを教訓に平和な世界を作るために!!」
義勇兵たちは自身を、そして肩を並べて戦う仲間達を鼓舞するべく声高らかに「ニュールーマニア帝国を駆逐しろ」「この戦いを教訓に平和な世界を作るために」と叫ぶ。
事実、ニュールーマニア帝国の出現は英国の離脱問題や難民問題等にゆれるEUにとっては団結しなくてはいけない問題となった。
英国の離脱こそすでに各種交渉やらなんやらで合意なき離脱の危険性は残ってはいるが一応の合意の上での離脱が可能な段階へと進んでいる。
その上でいつニュールーマニア帝国のような柑橘軍勢力による地域侵略の危険性が高まっている以上、その危険から世界を守り、なおかつ平和を維持するのかが問題となっていく。

菫仂カール「ちっ!どんどん化け物の方が多くなってやがる!!」
フォレニールガンダムに装備された多数の火砲が一斉にビームや実弾を発射する。
耕田朗「深迩たち、どんな暴れ方したんだよ!?ハードモードじゃねーか!!」
ザク改がヒートホークを振るい、機動兵器に変身したニュールーマニア帝国の雑兵を切り倒していく。
美柚沙汰「こいつら、機械なのか有機物なのかはっきりしなさい!!」
メタトゥエルガンダムに装備されたGNミサイルがまとめてニュールーマニア帝国の雑兵を吹き飛ばしていく
菫仂カール「ただ言える事は…有機物にしろ機械にしろ…敵ってことだけだ!!」
宮畑涯「そうだ、カールの言うとおりだ。こいつらは敵だ!!」
ブルーストライダーに装備された大型の対物ライフルが機動兵器に変身したニュールーマニア帝国の雑兵に風穴を開けていく
由香里「これだけ雑兵が多いと進軍速度に問題が出るな…」
朱音「そうは言っても、あたし達がいるから問題ないでしょ?」
由香里「…それはそれ、これはこれだ!!」
朱音「あっ、話から逃げた」
青が2機、赤が2機づつ、合計4機の「00式戦術歩行戦闘機・武御雷」が立ちふさがる雑兵を時にチェーンガンで蜂の巣にし、時に手にした74式近接戦闘長刀で切り裂きながら進路を確保していく。
他のストライクス戦隊の機体や友軍、特に戦術機以上に血なのかオイルなのか判らない液体が機体の全身に付着しており、その戦いぶりはまさに「悪鬼羅刹」ともいえる。

敵の防衛線は義勇軍の猛攻により食い破られ、義勇軍の部隊の進軍速度は落ちることなくニュールーマニア帝国の幹部がいると思わしきエリアへと到達した。

だが、該当エリアにいたのは…

義勇兵A「な、なんだアレは…」
ソレはまるで
義勇兵B「い、今まで蹴散らしてきた雑魚よりもでかい…!!」
山のように巨大で
義勇兵C「こいつは…」
要塞のように堅牢かつ鈍重で、大火力を有する
菫仂カール「マジかよ…雑魚ですら化け物に変身できるんだ…幹部クラスだったらさらにヤベーのになるって予想できるけどよぉ…」
…「怪物」…

菫仂カール「………これ、なくね?」

彼らの目の前には要塞のような巨体の怪物が鎮座していた………!!!


続く



次回予告


進撃する義勇軍の前に現れた要塞のような巨体の怪物!
その正体はニュールーマニア帝国幹部「インガ・シュタイネル」が変身した「巨大有機機械生体要塞」であった!!
この巨大有機機械生体要塞を破壊すべく、義勇軍がとった作戦とは!?
次回もみてください!!



あとがき
はい、Mr・Hです。鈍筆もここまでくれば打ち切りを疑うかもしれません。ストックは作ってるんですけどね…OTZ スマヌ…
さて、この話で唐突に柑橘軍が機動兵器みたいな形態に変身し始めましたが、これは作中でも前の話で深迩たちが大暴れした結果、あのような能力を会得したということになっています。ある種の外的要因による進化といえるかもしれませんが。
さて、次回予告にもあるように次回はついにニュールーマニア帝国幹部が登場します。
それと、雑兵の変身後の姿は『真ゲッターロボ 世界最後の日』に登場するメタルビースト(『チェンゲ』公式サイトでは「早乙女のメタルビースト」と明記されている個体)をイメージしていただけると。だって柑橘軍のやつらも見方を変えればインベーダーだし。
最終更新:2019年04月21日 02:50