1st エピソード 女祇(めぎ) 哀生(あいみ)



 彼女がしたことが正しかったのかどうか。
 それは、誰にも分らない。
 けれど、彼女がそこに至るまでの道筋は、きっと正しかったのだと私は信じたい。


 告白します。
 私は人を殺しました。
 大切な人の最愛の人を殺しました。

 私は人殺しです。
 それも一人や二人ではありません。
 覚えきれないくらいの人を殺してしましました。

 最初の殺人。
 それは10歳の頃です。

 あの頃の私は、今とは比べ物にならないほど、自信に溢れていました。
 自然に人と目を合わせられたし。声を出すのに周りを意識することもなかった。
 人との間に距離を感じることがなかった。

 夏休みは、5つ上の幼馴染の男の子の家で勉強を教わりながら課題を終わらせるのが、毎年の恒例だった。
 だから、彼が私に覆いかぶさってきたとき、何の知識もなかった私の頭の中は疑問符で溢れかえった。
 そして、彼が不作法に触れてきたとき、なぜだか自分はここで殺されるんだと思った。

 恐ろしかった。
 殺されると思って泣いて許しを乞うた。
 でも、やめてくれなくて、必死で抗った。

 彼にとって、その行為は別の意味を持っていたのだと教わったのは、しばらく経ってからのことだった。

 気づけば、彼が脱ぎ捨てたシャツで、私は彼の背後からその首元を両手で絞めあげていた。
「ああ、そういえば、自由研究の課題まだ考えてない」
 そんなことを考えているうちに、日が暮れていた。

 そこから先は、途切れ途切れにしか覚えていない。
 女性の悲鳴と罵声の印象だけが強く残っている。

 そして思春期を迎え、体が大人になるにつれて、私の中で変化が起きた。抑えきれない衝動が沸々と、時には波のように押し寄せることが、日に日に多くなっていった。
 その衝動が何か、理解する過程で、私は二度目の殺人を犯す必要があった。



(続く)










最終更新:2018年06月29日 00:22