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プロローグ その1

注)以下の内容は世界的に放映されている内容です。

 純白のスクリーンを背景に、一人の男が背筋を伸ばして立っている。
 びっしりとした黒いスーツを着こなし、自信に満ちた表情で画面の先にいるであろう、視聴者達を見据える。
 端正な顔立ちであるため、年の頃はやや若くも見えるが……醸し出す雰囲気は多少の年季が入った、ある程度の中年男性のものである。

「C3ステーションをご覧の皆さん、こんにちは。総合プロデューサーの鷹岡 集一郎です」

 眩しいライトアップの中、自らの名を宣言し、深く頭を下げる男。
 やがて頭を上げると、仰々しく自らを映し出す画面の隅々を歩き回りながら、男は語り始める。

「さて、本日この映像をご覧の皆さんの中に、DSSバトルをご存知の方はどれ程いるでしょうか?」

「DSSバトル……様々な異能の力を持つ、魔人と呼ばれる者達。我がC3ステーションの誇る最新VR空間の中で、彼らがその能力を駆使して命を削り、力の限りを尽くして戦い合う……。このビッグコンテンツは、おかげさまでこれまで多数の名勝負を生み、皆様からの熱狂的な支持を集めてまいりました」

 男の背景に、魔人たちの死闘の様子が大小様々な四角いビジョンを持って映し出された。
 派手な体術を繰り出す魔人、華々しい特殊能力を持ってあり得ざる事象を起こす魔人、火花を散らし、時に血を吹きながら倒れる魔人達の映像も混ざる。

「しかし、私は思うのです……。いや、私だけでは無い。DSSバトルを鑑賞した多くの皆さんの中にも同じことを思っている方が多いはずだ」

 男は突如正面を見据え、そして人差し指を一本立てて、語りかける。

「一つ、最強の魔人とはどんな魔人なのか?」

「この答えを出すのは簡単だ。ただ強い魔人を集め、一人になるまで殺し合わせればいい……。今回私が開催を宣言するDSSバトルの大会も、表向きはこの方法を持って進行いたします」

「しかし……果たして最強、というのはただ強いだけで良いのかどうか? いくつものDSSバトルを開催し、私はここに一つ、疑問を持つようになりました」

 かぶりを振り、視聴者の心に深く問いかける口調に変わって、男は話を続ける。

「DSSバトルがただ強さだけを競うゲームであるならば、果たしてここまで皆様からの支持を集めることになったのかどうか?」

「ある時は己の能力の特性を駆使して絶大な力を誇る魔人を倒す者、ある時は知略、地形、人脈、あらゆる手段を駆使して実力差を覆した者、ある時は、ただ幸運によって本来あり得ざる勝ち方をした者……DSSバトルは力以外のあらゆる余韻によって様々なドラマを生んだからこそ、こうして発展を遂げてきたのです!」

 自分の世界に入り込みながらも、熱く語りかける男。その男から伝わる何かが、数々の視聴者達の目線を奪う。

「魔人同士の戦いは……ただ力だけを持って決まるものではありません。そう、例えば日本の武道には『心技体』という言葉があります」

「『心技体』……武道において最も重要な要素です。これは皆さん、戦いを演じるものに必要な要素を最も端的に表している、と私は思います」

「優れた技……優れた体……そして優れた心。ただ体と技を持って敵を倒すだけのコンテンツでは人々を魅了することはできない。そこにどんな心が込められているのか? どんな心を持って強敵を倒す方法を生むのか? そこにこそ、DSSバトルが人気を生んだ力があると私は考えます」

 そこで男は再び口調を強め、自分を映し出す画面の先を指差して、語りかけた。

「良いですか! 皆さん! ゆえに! 今度のVRバトルにはこの全てを持って、皆さんを魅了できる魔人のみを招集します!」

 そこで男は突如懐に手をやり、1枚の鮮やかな緑色に輝くカードを取り出した。

「これに見覚えのある方も多いでしょう、そう『VRカード』。C3ステーションの作り出すVR空間に魔人が自らの能力を持ってダイブするために必要なカードです」

「我がC3ステーションは既にこのVRカードをあらゆる企業、団体、人脈などのパイプを通じて配布いたしました。『最も今回の大会を盛り上げるだろう魔人』に行き渡ることを条件として」

「どれだけの枚数が行き渡ったかは私も把握しておりません……。しかし『運命』を通じて必ず素晴らしい力を持った魔人達が手にするものと私は信じています」

 カードを高々と掲げながら、確信を深めた表情を持って男は語る。
 その様子には『運命』という曖昧なものではない、何か別の力

「更に大会に参加する資格を得るのはこの『VRカード』を持った魔人から更に厳選された16名のみです。この16人の選抜方法は明かせませんが……しかし、きっと『より多くの皆さんが大会への参加を望むだろう魔人』のみが残ることを私は約束いたします!」

「選りすぐられた皆様を魅了する魔人16人による命の削り合いーー! 皆さん、私はここに最大級のDSSバトルの開催を宣言します!」

 堂々と胸を広げ、力強い声を持って高らかに大会の開催を宣言する男。
 一呼吸、間を置いた後、男は静かに「最後に残った項目」の伝達を始める。

「さて、最後になりますが、このDSSバトルに参加する魔人の皆さんに向けてお話します。VRカードを手にすることによって、おそらく貴方はこの大会において獲得できる真の報酬を知ることになるでしょう」

「その真の報酬は――ただ勝ち残るだけでは得られない……。16人の魔人同士で戦い、最後に勝ち残る人間を決めるまで、4つの戦いを通じて最も支持を得られた魔人にのみ与えられます」

「ゆえにこの戦いでは、一度敗れたものも最後まで戦う機会を得られます。そして一度敗れたからと言って、『真の報酬』を得られるチャンスを失うことは無い」

 そして最後に、最も熱を帯びた口調を持って、最も熱い視線を向けて、男は叫んだ。

「皆さん、良いですか! これは『最強』を決める戦いではない!」

「ゆえに、DSSバトルに参加する魔人の皆さん! どうか最後まで全力を尽くして戦って欲しい! そしてその戦いを持って人々を魅了してほしい! 最も熱く! 最も美しく! 最も人々を酔わせた魔人にのみ、真の栄光は与えられる!」


「そしてその最後の一人を決めるのは――」


「貴方だ!!」
最終更新:2017年09月29日 21:27