彼と重なる笑顔

後ろを何度か振り返り、誰もいないことを確認しながらザックスはレーベに向かって走っていた。
背中には使い慣れたバスターソードがある。
彼はセフィロスから逃げ出した後、急いで初めにいた場所に戻った。
そしてゾーマからの放送を聞き、レーべの旅の扉に向かっているという訳だ。
(・・・・あのオッサンの奥さん。結局死んじゃったんだ・・・・)
ザックスは放送でネネの名が告げられた時のことを思い出した。
(はぁ~・・・オッサン大丈夫かな。自殺とかしてないよな?)
その時、ザックスの目の前の茂みから出ている森の中にはあるはずのない赤い噴水のような草を見つけた。
ザックスは茂みから出ているそれをつかんでみた。
赤い噴水の髪の持ち主、バーバラは悲鳴を上げた。

「いやぁ、はっはっは。悪い悪い。こんな可愛い子の髪の毛掴んじゃうなんてなぁ。」
全身がほんのり焦げたザックスが、ちりちりになった髪の毛に手を突っ込んで頭をかきながら、笑った。
ケアルを使ったので、ダメージは無いも同然だろうが。
その態度を見て、少なくともレナは彼に悪印象は抱かなかった。悪い人では無いと思う。
「バーバラちゃんも機嫌直してさ、おにーさんとデートでもしないかい?」
たわけた事を言うザックスに、バーバラは反応しなかった。膝を抱え、誰かの名前を呟き続ける。
ただひたすらに、ぶつぶつと。顔面を蒼白にして。
「……ひょっとして、凄く怒ってる?」
心配のベクトルが明後日の方向を向いているザックスに、レナはため息を付いた。
悪い人ではないのだろうが…どうやら変わった人ではあるらしい。
「呼ばれたらしいの…この子の仲間の…名前。」
そのレナの言葉に、ザックスのにやけた顔(本人曰く「ナンパ用の顔」)がすっ、と引き締まる。
「それで…か。」
「まだ間があるから…落ち着くまで待ってから扉に行こうって…。」
レナとザックスの会話。それすらもバーバラの耳には届かない。死が、仲間の死が強烈な現実感を持って襲い来る。

「いよっし!このザックス。あなた方を責任を持って扉まで送り届けましょう。」

その、ザックスの突然の提案に、レナはまず驚きを覚えた。
「え…でも、この“ゲーム”は…。」
「ゲームだろうが何だろうが、か弱い女の子を守るのは男の義務…ってね。」
そう言って、ザックスは笑う。どうにも無邪気な笑みを。
レナの瞳に、ザックスとバッツの笑顔がふと重なる。この、子供みたいな笑い方はそっくりだ。
「ありがとう…。ザックス。」
「気にしなくて良いって。助かった時デートしてくれれば♪」
その言葉に、レナは目を白黒させた。だが、すぐに笑顔を作って、
「ごめんなさい。そう言う相手はもう居るの。」と、さらりとかわす。
ザックスは、あらあらと肩をすくめてから、「一回だけ」ともう一度頼んでみる。レナは無邪気な笑みでOKした。
(“相手が居る”って言うのは冗談だしね…半分は。)
そう、半分は。彼女がそう想う相手は、恐らくは…。
行こうぜ、と、バーバラを抱きかかえたザックスが声をかけてくる。
レナはこくりと頷いて、後に続いた。

ゴーストタウン。そう表現するのが相応しいレーベの町の一軒家の中に、旅の扉は淡い光をたたえていた。
その前に、ザックス達は立っていた。

「ザックス…本当に、ありがとう。」
「いいっていいって。向かう所は一緒だったんだしな。正直、君の力がなかったら誰かに気づかれてたかもしれないし。」
そう言って笑いながら、ザックスは旅の扉に向かって歩き出して…途中で、振り返る。真面目な顔で。
「…どうしても残るのか?」
「ええ…バーバラちゃんが落ち着くまでは。」
「そっか…じゃあ、落ち着いたら「かっこいいお兄さんがデートに誘ってた」って言っといてくれよ。」
その言葉に、レナはくすくす笑いながら頷いた。
「ん…じゃあな!」
ザックスは手を振りながら旅の扉に飛び込んで、レナはバーバラと一緒にその場に座り込んだ。
もう、ザックスもレナも笑っていなかった。なんとしてでも生き残るために、際限なく心を研ぎ澄ませていった…。


【ザックス 所持品:バスターソード
 基本行動方針:非好戦的、女性に優しく。】
【現在位置:新フィールドへ】

【レナ@シーフ 所持品:メイジマッシャー
 第一行動方針:姉とバッツの捜索】
【バーバラ 所持品:果物ナイフ
 第一行動方針:仲間の捜索】
【現在位置:レーベ旅の扉前】



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最終更新:2011年07月17日 16:17
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