「お待たせしました。」
「…ん。」
着替えを終えた
エリアが
アモスの横に座る。
「…なんだ?それ。」
「酒場の奥に落ちていたんですけど…誰かの落し物でしょうか。」
エリアが持ってきたのは
加速装置。持ち主を失ったそれは持ち主の場所と全く異なる場所に飛ばされていたのだ。
「…なるほど。」
えーと、こういうときはどうしたらいいのかな。
「…えっへん。」
とりあえず胸を張ってみた。
「…」
「…」
アモスの肩が小刻みに震える。
「…あ、笑いましたね?」
アモスが横を向く。エリアが回りこむ。
「…なぜ隠すんですか?」
悪戯めいた表情を浮かべた。この人、結構恥ずかしがり屋なのかな。
「…と、とりあえず。それは持っておいてくれ。」
「わかりました。…結構恥ずかしがり屋なんですね。」
「ほっといてくれ。」
そしてしばらく時が過ぎる。
二人は何を話すでもなく静かに座っていた。
なんとなくだけど。この沈黙は悪くはないわ。エリアはそう思っていた。
暖炉には赤々と薪が燃えていた。目立つかもしれないが体が冷えるだろう。ということでアモスがつけたのだ。
ふと、外を眺める。
「雷が光ってますね…」
「…あれは…」
窓の外に稲妻が見える。…そうなのか。アモスは悟った。
「…勇者の資格を持つものだけが使える呪文…
ライデイン…」
「…え?」
「誰かが稲妻の呪文を使ったんだ。」
誰が使ったんだろうか。…
ミレーユ?
バーバラ?
できれば全く違う人であればいいのだが。
「勇者…」
「このゲームに乗ってしまった“勇者”がいるのだろうな…」
「あなたは勇者ではないのですか?」
「…どうだろう?」
「…意地悪。」
「お互い様…」
明日の命があるかもわからない。このゲームから抜けれる当てなんかあるはずない。
明日はあの雷使いの勇者と戦うのかもしれない。
明日じゃない。今日かもしれない。
または他の人と戦うのかもしれない。
だけど…この人と、少しでも長くいたい。
我侭かもしれない。でも、私のできることをしていけばいいと思う。
エリアはふとそんなことを思った。
最終更新:2011年07月18日 07:01