朝、か。
とんぬらは雨に濡れた体をゆっくり起こした。
先程の放送の中に、子供たち…
パパスの名前はなかった。まだ、助ける機会はあるのだ。
とんぬらは森を抜けると、街に入る。念の為正面からではなく東の森を抜けて入ったのだが、街の中は静まり返り、人っ子一人いない。
「…誰もいないのか。争いがあったような形跡もない…」
これならわざわざ野宿をする必要もなかったかもしれない。
そんなことを考えながら、とんぬらは民家に忍び込んだ。
何しろ、ずっと雨に打たれていたのだ、少し寒い。マントがあれば少しは違っただろうが、あいにく前のフィールドで使い捨てている。
結局、とんぬらは毛皮のコートを頂戴する事にした。暖炉に火をくべ、服についた水を絞って乾かす。ついでに、食事をとっておく事にした。
制限時間はわずか2時間。子供たちの事は心配だが、時間内に別の
旅の扉の地までいく事は不可能だろう。
だから、今、探しに街を出ることは出来ない。今出来るのは、次のフィールドで動き回れるよう、体力を回復させることだ。
食事を終え、服を乾かすと、とんぬらは旅の扉を探すために民家を出た。
暫く歩くと、向こうに大きな屋敷が見えた。遠目からはよくわからないが、扉が開いている…
誰か、いる…いや、いた、ってことだろうか。
とんぬらは周囲を警戒しながら、屋敷の中に入った。
屋敷の中は静まり返っていた。警戒するまでもなく物音一つしない屋敷の中を歩いていく。
と、階段のある広間で、とんぬらはそれを見つけた。
「…剣?何でこんな所に」
無造作に捨てられている剣を拾い上げる。念の為調べてみたが呪いの類いは、ないようだ。
ちょうど丸腰で頼りなかったところである。いただいておくことにしよう…
カラ…
とんぬらは咄嗟に剣を構えた。物音がしたほうに剣を向ける。
かさ…かさ…何か、擦るような音。
慎重に、音のするほうに足を踏み出す。そこで見たものは。
「…腐った死体?」
いや、腐っていないからリビングデッドというべきか。
体の半分が調度品に埋もれた、動く女性の死体だった。上手く除けれないのか、もがいている様は少し滑稽である。
近寄ってみる。すぐ側まで来ると、首があらぬ方向に曲がっているのが確認できた。これでまだ動くのだから大した者である。
「大丈夫かい?」
声をかけると、ぎょろり、と視線がとんぬらに向いた。
死体の凝視である。並みの人間なら悲鳴を上げるか驚いて腰を抜かすだろう。
だが、とんぬらは普通ではなかった。色々な意味で。
「なるほど、首が折れて平衡感覚が狂ってるのか。よし…」
とんぬらは死体の首に手を添える。正しい方向に矯正するとベホイミを唱えた。
「これでいい。もう出られるはずだ」
「………?」
女性(
ゾンビ)は、するっと調度品の合間を抜けた。そして、じっととんぬらを見ている。
「えっと、聞きたいことがあるんだけど、いいかな?まず、ここには誰かいるのかい?」
「………」
女性は微かに口元を動かす。
「いないのか。旅の扉の事は…わからないよね。なら、君は何故あんな所にいたんだい?」
「………」
女性は微かに首を傾げる。
「わからない?何でここにいるのかも?目的も?」
「………………」
女性は微かに俯く。
「名前は?」
女性は少し間を置いた後、微かに口を動かした。
「ア…イ…ラ。
アイラさん。それが君の名前かい?」
「………」
女性、アイラはこくこくとうなずく。
「そっか。……じゃあ、僕は行くけど」
アイラはなかまになりたそうにじっととんぬらをみている!
「わかった。一緒に行こうか」
アイラが仲間に加わった!アイラは微妙に嬉しそうにうなずいた。
最終更新:2011年07月18日 07:28