いったか。遠ざかっていく気配にとんぬらは安堵の息を漏らすと、剣の柄に伸ばしていた手をゆっくり降ろした。
すぐ南側の島で何者かが抗争していたことは早い段階に気付いていた。
娘の
アニーがいまだ目を覚まさない以上、やってきたら戦うしかない。
しかし、何故かはわからないが彼等は南へと移動していった。
戻ってくるにしても、すぐではないだろう。
長い緊張状態がようやく解け、一つ伸びをすると、隣で眠っている娘を看た。
いまだ目覚める様子はないが、体温脈拍は正常だし、特に外傷も見当たらない。
大事はないだろう、そう判断して、とんぬらは祠から出た。
勿論、それには理由がある。竜巻に落雷という大異変が立て続いたこのあたりの安全を確かめるためだ。
深夜になればいよいよ動けなくなる、その前に出来る限りの情報収集はしておきたかった。
外は太陽が落ち、暗がりが支配していた。
以前のフィールドで頂戴したマントをしっかりと着込みながらとんぬらは思う。
寒いとはいえ太陽が出ているうちはよかったのだが、これでは防寒対策のない者達はひとたまりもないだろう。野垂れ死ぬ者も出てくるかもしれない。
雪の中を歩き回る。
とりあえずグルリと島を周回して、この島に繋がる南と西の橋、両方が落ちていたことを知った。
実質閉じ込められてしまったのと同意義である。
「参った、朝になったらイカダを作るなりしないと…」
このままでは、このフィールドを出るどころか島を出ることすら不可能である。
とんぬらは白い溜息を吐き出して…ふと、視界のすみの動くものに気付いた。
「………?」
こちらを窺っているらしい、モノ。
大きさは…子供、よりはっきりと小さい。小動物だろうか?
とんぬらはその小動物の顔と自分の顔の位置が同じくらいの高さになるように屈む。
動物を慣らすテクニックの一つだ。もっとも、とんぬらは意識などしていないけれど。
「出ておいで」
優しく問いかける。
そのまましばらく待っていると、白い小動物が、木陰からちらちらと姿を覗かせるようになった。
「大丈夫だよ。恐くないから」
「クポー…」
そして、その小動物は姿を現した。
ずんぐりとした白い体に、似つかわしくないピンクの羽根。頭の上には先に玉のついた触覚のようなもの。
「見たことがない動物だな…まぁ、いいけどね。何か用事があるんじゃないかい?」
まるで人に話し掛けるように優しく言うと、その小動物は言葉がわかるのか、何度もうなずいた。
「クポークポクポー、クポポクッポッポー」
「………うーん」
何を言っているのかは勿論わからなかった。
魔物使いといっても、魔物の使う言葉全てがわかるわけではないのだ。
「クポポ、クポー、クポポ、クポッポポー!」
なにやらエキサイトして身振り手振りしている小動物。
一見暴れているだけのような気がしないでもないが、
「つまり、困っていて助けて欲しいわけだね」
「クポッ!」
それでもなんとなく意志の疎通ができるあたりが魔物使いの所以である。
小動物はクルリと身を返すと、森の奥へと走っていく。
その後をとんぬらも追っていく。
程なくして小動物はある木の前で止まり、じたばたと暴れだした。
「クポ、クポー!クポクポ、クポポ…クポ、クッポー!!」
やっぱり何を言っているのかはわからなかったが、
とんぬらは小動物がしきりに指をさす木を見上げる。
なにもない………いや?
「ああ、そういうことか。待ってて、今助けてあげるから」
とんぬらは小動物にそう言うと、木を登り始めた。
心配そうに見上げる小動物をよそにスイスイと登っていくと、それを回収する。
少女だった。どうやら枝に服を引っ掛けた状態で気絶してしまったらしい。
何でこんな事になったかは当人に聴いてみないとわからないが、とりあえず小動物は大喜びだ。
「よかったね。とはいえ、このままじゃ、この子は辛い事になるな。一緒に来るかい?」
「クポッ!」
こうして、とんぬらは少女と小動物を連れて、祠に戻ったのだった。
のちほど、意識を取り戻した娘が何を思ったかは、また別の話…
【
とんぬら 所持品:
さざなみの剣
第一行動方針:
夜明けを待って、島から出る方法を探す
第二行動方針:
クーパー、
パパスとの合流
第三行動方針:
アイラの呪いを解ける人を探す】
【アニー(気絶中) 所持品:
マインゴーシュ
第一行動方針:クーパーをみつける
基本行動方針:とんぬらについていく】
【現在位置:湖の祠】
【
エーコ(気絶)&モーグリ 所持品:なし
第一行動方針:
バッツたちと合流
第二行動方針:
ジタンを捜す】
【現在位置:湖の祠】
最終更新:2011年07月18日 02:17