「いいかい、形は大体これこれこう…」
エドガーは洋紙にさらさらと首輪の形状を書いていく。
その隣りに首輪の内側に通った管や機械の塊の配線を示した図も添えた。
「エドガーって絵も上手いのね」
ティナの言葉にエドガーはウィンクしたが、ティナはまったく顔色を変えなかった。
まあ、ティナはそういう少女だから、極めて残念な反応だったが、仕方ないと思う。
「これは首輪の回路図だよ。
直接除いたわけじゃなくて触診やら打診から想定したものだから間違っているところもあると思う。
ただ、大体のことは想像がつくな」
エドガーは回路図のある塊に矢印を入れる。
「各配線は巡り巡って最後にここに来る。つまりこれがコア、それに準ずるものだと言える。これを潰してしまえば、あるいは…」
「この首輪は壊れる?」
期待を秘めた
アルスの言葉に、エドガーは肩を竦めて見せる。
「あるいは、その逆。こいつが止まるとドカン…と言う
可能性もある」
がっかりするアルス。そんなアルスを横目に、
「でも、どちらかがわかれば」
「そう言う事さ、ティナ。
こいつが止まると爆発するのなら、回線を切ってもこいつが動き続けていればいい。
逆にこいつが動くと爆発するのなら、動かないうちに機能を殺してしまえばいい」
「確かめる方法は?」
「実際に試すのが一番だな。試してみたい事は幾らでもある」
「なるほど…でも、
ゾーマの呪いはどうするんですか?」
「そこだ。そこを君たちに聞きたい。私の専門は機械で、あまり詳しくないのでね」
エドガーの言葉にティナとアルスはなんとも言えない表情になる。
「私…魔導使うときに、あまりそういうこと考えた事ないから」
ティナにとっての魔導はごく自然に備わっているもので、理論ではなく感覚で唱えるものだ。
幻獣とのハーフであるティナは強大な魔力を持っているが、
ハーゴンの問題を見ても答えられないだろう。
それはティナが劣っているというわけではなく、
魔法というものに対して、ハーゴン達のような術者とは在り方が違うだけである。
「僕は、どちらかと言うと…」
アルスは攻撃魔法も回復魔法も一通り使えるが、やはり本職に比べると劣る。
サマンサか
マゴットがいれば…そう思ってアルスは頭を振った。
サマンサは妙な輩に同行しているし、マゴットはもうない。頼る事はできないのだ。
アルスは腕組みをして少し考える。
「呪い…呪いか。そう言えば、呪いを解く呪文があったな」
『本当に!?』
ハモった二人にアルスは言う。
「確か、【シャナク】って魔法だと思う。サマンサが使えたはずだけど…」
「その子がまだ生きているなら、試してみる価値はあるな。
後はこの首輪にかかってるアンチ・マジックを説く方法だが」
「ディスペルは?」
ティナの答えに、もう試したとばかりにエドガーは首を横に振る。
ティナは肩を落として隣のアルスを見る。
…何かが、アルスの脳裏にひっかかった。
魔法の効果を一切合財剥ぎ取る技。それを、自分は知っている…?
「…ごめん、わからない」
アルスは結局そう答えた。ただ、脳裏には何故か、ゾーマの姿が残った。
「そうか。結局はそこだな」
エドガーはやや気落ちした呟きをもらすと、すぐににやりと笑みを浮かべる。
「何にしても解呪の魔法の情報がわかったから、今は良しとしよう。
というわけで、二人はもう寝ておくんだ。体力はちゃんと回復させないとな」
「エドガーは?」
「休むさ。機械部分の解除方法について、少しまとめてからね」
最終更新:2011年07月17日 01:12