セシルを探す

放送を聞いたあと、カインは脱力してしばらく立ち上がれなかった。
エッジが死んだ。そして、セシルはまだ生きている。
「お前なのか……セシル、お前が殺したのか…!?」
もちろん、違う可能性もある。
だが、ゲームに乗ってしまったセシルと、
忍者の能力がありながら逃げる間も無くやられてしまったエッジ、
二つの事実が絡み合ってカインの心に染みを作っていく。

早く、セシルを探し出さなくては。そんな焦りがカインの心を満たす。
だが、身も守れない負傷者を放っておけない。それもわかっている。
どちらを選択することも出来ず、カインはただ、座り込んでいた。

日が暮れていき、肌寒くなってきたので、カインは地下通路へと戻った。
結局、セシルを探しにはいけなかった。
正確には迷っているうちにタイムリミットを迎えてしまった。
ここに来てからというもの、行く道を失っている自分が、情けなかった。

そんなカインにも転機が訪れる。
それは、とぼとぼと地下通路を歩き、クラウドアリーナの元へ戻る、その途中だった。


「誰だ!?」
暗闇に向けて怒鳴る
相手は自分の存在に気付いて足音を殺したようだが、ほんの少し、遅かったのだ。
もう一度、カインは問い掛ける。

「こちらは敵対する意志はない…そちらは姿を現すか、このまま消えるか、どちらだ!?」
「こちらも戦うつもりはない、先を急ぐんだ、見逃して欲しい」
壁の向こうから声が返ってくる。若い男のようだ。
「わかった。俺は西に行く、30数えて俺の足音が消えたら、どこなりとも行ってくれ」
「西かあ、そっちは通り道かもしれない」
カインは溜息をついた。危険もあるから姿を晒したくはなかったが、仕方ない。
「ならば出てきてくれ。その先には俺の連れがいる、
 見ず知らずに近寄ってほしくないんだ。悪いが見張らせて欲しい」
「…わかったよ」
現われたのは、金髪の男だった。やや小柄だが顔立ちに愛嬌がある。
その男は少女を背負っていた。ぐったりとしていて身動き一つしないが、
エメラルドの髪に愛らしい顔立ちをしている…

「…!?リディアか!?」
「え?まさかあんた、この子のこと知ってんの!?」

こうして出会ったカインとジタンはこれまでの経緯を話し合った。
と言っても、ジタンは突然降ってきたリディアを保護しただけで、それ以上の事は知らない。
当然、カインが一番知りたいことも、わからない。
「何で、子供の姿なんだ…?俺が最後に見たのは最初のゾーマの城だが、大人だったぞ」
「別人ってことか?」
「いや、この子は間違いなくリディアだ」
「姉妹とか」
カインはやや表情を落とすと、
「身よりは、ない」
「…そっか」

ジタンは追及しなかった。つまり、少女は自分と似たような境遇であるということだ。
もっとも自分には、兄妹ができたのだけれど…

「それじゃ、この子はあんたに預けた方が安心するかな?」
「いや…この頃のリディアにとって俺は安心できる存在じゃない…むしろ逆効果だ」
彼女にどこまで記憶を持っているのかは知らないが、自分が共に戦ったのは成長して分別ある大人になったリディアである。
もしも記憶まであの頃に戻っていたら…自分は仇以外の何者でもないのだ。
「そうか…ならやっぱり一度、神殿に戻るしかないか」
ジタンはややオーバーアクションに肩を竦める。
カインはジタンの話を聞いているうちに、ある一つの決意をしていた。

「実は俺は人を探している。セシルという男で、俺と同世代の奴だ」
「その人なら、この子を預けられるかな?」
「いや、そいつはゲームに乗っている。おまけにリディアはセシルを信頼しているから」
ジタンは溜息をついた。
「つまり、あわせるなってことか」
「ああ。俺は奴を止めなくてはならん。そこでだ、お前に同行させてくれないか。
 この地下通路はこの地方に満遍なく敷かれているのだろう?」
「それは……」
「頼む。その子の為にも、セシルを一刻も早く止めたい」
ジタンはあまり気乗りしなかったようだが、その一言でカインの同行を認めた。
止めるというのがどういう意味かは考えないようにしている、
ただ、この子が信頼していたという青年が、ゲームを止めてくれることを祈るのみである。

その後、カインの先導でクラウド、アリーナの元へ向かった。
クラウドはいまだ気付かず、アリーナは捨てられる子猫のような瞳をカインに向けたが、
カインはエッジが何者かに殺られたこと、その相手が自分の親友かもしれない事を告げ、
「俺は親友として、奴を止めなくてはいけない。その方法がある以上、留まってはいられない。許して欲しいとは言わない、見送ってくれとも言わん。それだけだ」
そう言って、踵を返す。
ジタンは気遣う視線をアリーナに向けたが、アリーナは何も言わずに俯いていた。

結局、アリーナはリディアに気付かないままだった。
無理もない、リディアは幼児化しているし、アリーナの精神状態もそれどころではない。
カインがリディアの名を出せば話は別だっただろうが、そうはならなかった。

このゲームで最初に知り合った少女たちはアクシデントで別れ、
そしてお互いが思いもよらぬ姿と状況で再会し、
お互い気付く事もなく、また別れたのである。

カインとジタンが立ち去った後、アリーナはぽつりと呟いた。
「ちょっと、前まで…私もあんなこと言ってたんだよね」
隣を見る。クラウドは何も答えない。身動きすらしない。
「何で、こうなっているのかなぁ。私、もう…言えなくなっちゃった」

【ジタン 所持品:仕込み杖グロック17、ギザールの笛、グレネード複数
         試験問題・解答用紙複数(模範解答も含む)、時計
 第一行動方針:神殿に一旦戻る
 第二行動方針:魔法使いを探す
 第三行動方針:エーコを探す
 最終行動方針:ゲームから脱出】
【リディア(気絶中) 所持品:なし
 第一行動方針:?
 第二行動方針:エーコ、バッツたちと合流
 第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【カイン 所持品:ビーナスゴスペルマテリア(回復) 天空の兜
 第一行動方針:ジタンに同行
 第二行動方針:セシルを止める
 基本行動方針:戦闘は避けたいが、自衛なら戦う】
【現在位置:地下通路(大陸中央付近)】

【アリーナ(重傷、戦闘不能・片目失明)
 所持品:イオの書×3 リフレクトリング ピンクのレオタード
 第一行動方針:?
 最終行動方針:ゲームを抜ける】
【クラウド(睡眠中、重傷、戦闘不能)
 所持品:ガンブレード
 第一行動方針:エアリスorティファを探す
 最終行動方針:不明】
【現在位置:地下通路(大陸中央付近)】


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最終更新:2011年07月17日 18:25
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