まだ子供

クーパーはもう落ち着いていた。ピエールの死で立ち直れないほどの精神的な傷を負う予感も
あったが、そんな素振りは見せていない。強い子供なのだ。
もちろん灰になった男のことを気にしていることもないだろう。クーパーはあの男を死ぬまで明確に敵だと
認識していたはずだから。
そう、あの男が最後まで敵であってくれたことは良かったとも言える。
倒さねばならない恐ろしい敵であると思い込まねば、人を殺したという事実だけが残り、
一生その重荷を背負って生きねばならなくなる。そんな目にあわせたくない。
クーパーはまだ子供なのだ。

「背中見せて。多分傷が残ってるから」
クーパーはそう言って背中と壁の間にもぐり込んできた。バッツは体を動かすのが億劫で
上半身を軽く前にずらすにとどめた。
時間的にそろそろ放送があるはずだ。クーパーの治療の手を感じながら考えていたが、
温かい背中とは逆に冷気が衣服の下に侵入してくるのもあちこちに感じた。
「そういえば年じゅう同じ服着てたな……、随分擦り切れてボロくなってら。
 それでさっき背中を打ったとき、決定的に破いちまった」
クーパーは顔だけ前に出して、へえ、とか、そう、とか頷いている。
バッツも横を向いてクーパーと視線を交わした。
「そんなに気に入ってるんだ。僕もこの服お母さんに繕ってもらってからずっと着てるよ。
 ビリビリに破いて怒られると思ったのに、全然そんなことなかった。優しいんだ、お母さんは。
 バッツ兄ちゃんの服も、きっといい思い出があるんだね」

「いや、金がなかったから……」
クーパーはしゅんとなって口をへの字に曲げた。全然違う言葉が返ってきたらしい。
何だか非難めいた目でこちらを見ていた。
「すまん、そんなこと聞いてるんじゃなかったな」
クーパーは背中の方から出てくると聞いてきた。
「これからどうするの?」

「とりあえずあの男が戻ってくるまでここにいよう。その後で、どこか落ち着ける所で休むか。
 魔力も尽き掛けてるしな」
肩に手をおこうとしたが、クーパーが突然立ち上がったので手の行き場を失った。
「じゃあそれでいいよ」
納得しているようでしていないような曖昧な返事だった。
バッツはやり場のない手を戻し首の辺りに添えた。
「クーパー、さっき仲直りしただろ」
「別に僕怒ってないよ」
「そうかしら。なんだか冷たいぜ」
クーパーはそれには答えずにそっぽを向いた。それから二、三歩歩き出して天を仰いだ
「お母さんのこと思い出したら……僕」
クーパーは足を踏み外したように一瞬体をぐらつかせたが、そのまますぐ走っていってしまった。

バッツは走っていく後姿を見ながら呟いた。
「子供にも満足なこと言えないのかな、俺」
放送が聞こえてきたのはそのすぐ後だった。

【バッツ@魔法剣士(アビリティ:白魔法)(ダメージあり)
 所持品:ブレイブブレイド グレネード五個
 第一行動方針:デッシュを待つ
 第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬらパパスを捜す
 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー(後遺症あり) 所持品:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
 第一行動方針:デッシュを待つ
 第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
(2時間ほど傷の治療に専念すれば、動けるようにはなります)
【現在位置:ハーゴンの自室の前】


←PREV INDEX NEXT→
←PREV バッツ NEXT→
←PREV クーパー NEXT→

最終更新:2011年07月16日 21:47
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。