―――私はどうして生きているのだろう。
ビルのロビーに置かれたソファーに身を預けながら
セリスは虚空を見つめながら思った。
―――私にはもう何も残っていない。
『
ロック』という人の死がもたらした喪失感。以前にも感じたことがあるような気がするソレは、失ってしまった記憶の1ページを浮かび上がらせた。
海に浮かぶ孤島。小さな家。眠ったように死んでいる老人。
床に落ち、痙攣している生気の無い魚。窓から見える海に突き出した崖。
青い布を巻いた一匹の鳥。そこに浮かび上がる『ロック』という名前。
―――生きていく理由なんかもう…。
セリスは音も無く立ち上がると夢遊病者のように歩き出した。
「これは…」
ミレーユは最後に裏返したカードを見て、そう呟いた。
(どういう意味なの…?)
考えられる
可能性を頭の中で並べながらこのカードの意味を模索した。
しかし、どれも的から大きく外れているような気がした。
一旦思考を止め、軽く溜め息を吐く。
そして、この時初めて先程までは無かった違和感に気付いた。
「…セリス?」
振り返ったソコにはあの儚げな女性の姿は無かった。
(しまった…。)
ミレーユは歯噛みした。占いに集中しすぎてセリスの事を忘れてしまうなんて。
足元に置いた荷物を拾い上げ、ミレーユはセリスの姿を探した。
(…いた!!)
視線の先。まるで意識があるかのように開閉するガラスの扉をくぐるセリス。
「待って!!」
声を張り上げてミレーユはセリスを追おうとした。
しかし、最初の一歩を踏み出した時に背後から聞こえた電子音が、
ミレーユを振り向かせた。
【セリス(
記憶喪失・自我薄弱) 所持品:
ロトの剣
行動方針:とりあえず高い所へ】
【現在位置:神羅ビル外】
最終更新:2011年07月17日 12:58