気合一閃。
天空の剣が空間もろとも魔物を切り伏せる。
それで、今回襲ってきた魔物の群は全滅した。
アルスは周囲に敵の気配がないことを確認してから、大きく息を吐いた。
ちょっとやそっとでへたるほどヤワではないが、さすがに連戦で疲労が溜まり始めている。
また、天空の剣が思うほど使いこなせない事も疲労の原因の一つだった。切れ味こそ凄まじいものの、重くてバランスが悪い。
元々天空の血筋だけが使える(と
ライアンは語る)剣である。今は『妥協』してアルスの使用を認めているが、本来の使い手ではない分でメリットはどうしてもある。
せめて、あの剣があれば……とは思うが、今はそんな贅沢も言えない。
「アルス殿、大丈夫で
ござるか?」
「何とか。みんなは?」
廊下の向こうから皆がやってくる。特に怪我をした者はいないようだ。
それもアルスとライアンが前線に出て敵の猛攻を一手に引き受けているおかげである。
前衛でアルスとライアンが直接攻撃を行い、
中に
エドガーと
ティナが後衛の守りと前衛のフォローし、
後衛に
デスピサロ、
サマンサ、
バーバラがバックアップと非戦闘員の守る、
自然と、そんな形になっていた。
アルスとライアンはティナとバーバラの癒しの魔法で傷を回復させると、再び先頭をきって歩き出した。
広大な城内は敵だらけである。後衛に下がって休む事など、できるわけがなかった。
城の中を彷徨い、部屋を見つけては中に入り、何かないか調べる。
そしてある部屋に入った時、
デッシュは部屋の中央にあるソレに目を見つけた。
それに備え付けられた端末やパネルを弄りながら、しばらく考えて、そして言う。
「みんな、コレを見てくれ」
ソレは、半球のカプセルで覆われた、どこかの島のミニチュアだった。
横長の島で、北側は山脈で南側は砂浜。西には町があり、東には洞窟がある。
そして中央には、巻貝を思わせる不思議で巨大な建造物があった。
「コレがどうかしたのか?動力は入っていないようだが」
エドガーはデッシュの隣りにあるパネルに手を伸ばし、二度三度、叩いてみる。
反応は……ない。
「ああ。多分コレは未使用なんだろう」
「どういうことですか?」
首を傾げるサマンサ。さすがの彼女もこの手の知識はない。
エドガーも知識はあるが、専門は機械そのものである。制御系はデッシュの独壇場だ。
「以前は行った部屋の中央に、バラバラに破壊されたオブジェがあったんだよ。
その時はサッパリだったが、計器等を見る限り、このミニチュアと同じようなものだったんだろう」
「なるほどな……つまりそれは使用後だった、という事か」
デスピサロの言葉にデッシュは頷く。疑問符を浮かべているものもいたので、デッシュは補足をした。
「あのゲームの世界は作り物だった。誰かが実際にいた世界を元にした箱庭だ。
そして、3つのミニチュアが破壊され、他の連中は4つ目に移動している……」
一部…ライアンと
ゼニス…を除いて、ハッとそのミニチュアを見る。
「つまり、私たちはこういったミニチュアの中にいた、と?」
サマンサの問いに首を横に振るデッシュ。
「いや……多分コレはモデルなんだろう。別世界を具現化させるための媒体、設計書。
こいつに何らかの力を加えて、仮想世界を実体化させたんじゃないかな」
「つまり、実体化している最中にコレを破壊すれば、仮想世界を構成する力も途絶える。
そうなれば仮想世界は自壊する……という仕組みなんだな?」
そういうこと、とデッシュはエドガーに頷く。
最初から話しに付いていけないライアンは、降参とばかりに軽く手を上げた。
「つまり、どういうことでござるか?」
「つまり、今稼動しているミニチュアから作られた世界に他の
参加者がいて、
そのミニチュアを通してこちらから干渉する事が出来るかもしれない、ということだ」
デッシュの発言に全員が沈黙した。
エドガー、デスピサロを除く者たちは、いまいちピンとこないからであるが。
誰かが口を開こうとした、その時。
「………!」
アルスの表情が変わった。サマンサも憶えのあるその気配に顔を顰める。
「何だ……この禍々しい妖気は」
ドアの向こうを睨みつけるデスピサロ。ティナは不安げにアルスを見る。
「この気配。そんな……まさか」
アルスは口元を震えさせながら呟く。そして一度目を閉じ……
気合を入れて、見開いた。
「みんな、聞いてくれ。僕はこの気配を知っている。
……僕等の世界で魔王と呼ばれたモノが放つ妖気だ」
「………!」
サマンサの表情が厳しくなる。そんな二人の様子に、他の者たちも緊張を深めた。
「完全に僕等を察知したらしい。逃げても追いつかれるだけだ。
だから……僕がもう一度、アイツを倒す」
「で、でも」
戸惑うティナに、アルスは笑ってみせた。幾分引きつってはいたけれど。
「大丈夫さ。一度は倒したんだから……それよりもみんなは探索を続けて、一刻も早くとり残された人たちを助けるんだ」
「しかし、一人では無理でござるよ」
「……それは」
口篭もるアルスの肩を、ライアンは軽く叩く。
「一人では無理でも、二人なら勝てるでござるよ。助力するでござる」
「……ありがとう、でも」
「私も戦うわ、アルス君。機械のことはわからないけれど、戦うことはできるから」
「ティナさん……」
「そうそう。頭のいい人は頭のいい人が出来ることを。私たちは私たちに出来ることをしようよ」
バーバラはウィンクすると、デスピサロ、サマンサ、エドガー、デッシュに向き直った。
「そういうことだから。私たちでアイツらの相手をしてるから、早く皆を助けて」
そんなバーバラに、デッシュは慌てて言う。
「お、おい。ちょっと待ってくれ。そんなに強い相手なら皆で戦った方が…」
だが、話はエドガーが途中で遮った。
「わかった。死ぬなよ、お嬢ちゃん」
「エドガー!?」
「当然。そっちこそ、しくじらないでよ」
「ああ。……少年、ティナを頼む」
エドガーはアルスが頷くのを確認すると、デッシュの服を引っ張って部屋の外へと歩いていく。
その後にデスピサロとサマンサ、ついでにゼニスも続いた。
「ちょ、ちょっと!おい!」
「うるさいぞ」
「待てって言ってるだろ!何でわざわざ強い相手がいるってのに分かれるんだ!?
まるで……」
エドガーは仰々しく溜息を付くと、強く押し殺した口調でデッシュの耳元に囁く。
「それ以上は言うんじゃない。思っても絶対に口にするな」
「し、しかし……」
「幾ら城内が広いといっても固まっていたら身動きが取れなくなるかもしれないし、
……戦闘になったら非戦闘員を守らなきゃいけないだろう?」
「………」
非戦闘員、つまり自分のことだ。自分がいると思うように戦えない、エドガーはそう言っているのだ。
デッシュは後頭部を鈍器で殴られた気がした。それはじわりじわりと熱を帯びてくる。
「お嬢ちゃんが言っただろう。お前にはお前しかできない事があると。
だから、これからそれをやりにいく。そういうことだ、いいな!?」
「………ああ、わかった。すまない………」
【デスピサロ 所持品:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【エドガー 所持品:
エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧
スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【デッシュ 所持品:アサシンダガー
加速装置 裁きの杖 首輪×5】
【サマンサ 所持品:勲章 星降る腕輪 手榴弾×1】
以上
【第一行動方針:参加者との連絡方法を探す
最終行動方針:
ゾーマ打倒】
【現在位置:ゾーマの城】
【ゼニス 所持品:
アンブレラ 羽帽子?
基本行動方針:最後まで物見遊山?】
【現在位置:ゾーマの城】
最終更新:2011年07月17日 01:40