考えろ

エビルマージバラモスゾンビと別行動をとっていた。
水晶で移動を始めた集団の位置を確認しながら、研究所へと向かう。

敵が戦力を分けたからといって、こちらも合わせて分散させるのは愚の骨頂だ。
1対1では勝てない相手でも、1対0.5を2回なら勝つ可能性はでてくる。各個撃破のチャンスだ。
そんな戦術の初歩はエビルマージも承知している。

では、何故基本をないがしろにするのか?
理由は単純である、バラモスゾンビを始末してもらうためだ。
ゾーマは自分の叛意を知りながらあえて放置している、それは余裕の現われだろう。
自分のような羽虫がざわめいたところで、何も出来はしまい、そうたかをくくっている。
自分を虚仮にしている。よろしい、ならばその報いを受けてもらおうではないか。
このゲームを管理しているのは自分なのだ――――

バラモスゾンビに、勇者アルスとその一味が待ち構えている、自分が残りを始末するからアルスを始末して欲しい、と伝えたら喜んで賛同した。
力があるが故の傲慢である。ゾーマ付のブロスならば魂胆を見抜いただろうが、アルスに倒され骨に成り下がったバラモスにそんな知恵は無かった。
バラモスゾンビを上手く誘導できたことに満足しながら、研究室に入ったエビルマージだったが……
そこで、信じられない光景を見た。

「な……なんだ、コレは!」
究極生物生成のためのポッド、その中に被検体であるリュックがいる。
彼女は、鈍い光を抱えていた。当然、先刻研究室から出た時は、このような物は無かった。
計器が、ポッドの中の魔力が異常な値である事を示していた。
ヘタに空ければ、逆流した魔力によって周囲は無に帰るだろう。

「ピエロ、コレはどうしたことか!」
姿の見えない配下のピエロを呼び出す。
ピエロは何もない虚空から染み出すように現われると、出し抜けに言った。
「ゾーマさまの命令で、仮想世界形成機の動力源制御システムをここに移しました」

「…馬鹿な、そんなことをすればポッドが空けられなくなる!」
制御システムを止めれば、仮想世界が消滅してしまう。
当然中の参加者たちも世界もろとも事象地平の彼方に行くだろう。
それ自体はどうでも良い。ただ、ゲームの続行は不可能になる。
それだけはゾーマも許さないだろう。ゲームが終わるまで、ポッドに手出しできない。

おのれ、余裕の理由はそういうことか。
エビルマージは歯がみした。さすがは大魔王、あの死に損ないのようにはいかないらしい。
どうする。ゲームに関心が向けているから、その隙をついてここまで進めたのだ。
終わってからでは遅い。追求されて、身の破滅を待つだけになってしまう。

考えろ。考えろ。
制御システムを止めてもよいだけの理由を。

そして、エビルマージはニヤリと笑った。
簡単なことだった。止められない理由は、仮想世界で殺し合いをさせるためだ。

ならば、全ての参加者を仮想世界から出してしまえば、
システムを動かしておく意味は無いではないか。

参加者は打倒ゾーマを目指すだろう。この城は戦場になるだろうが、知ったことか。
むしろ、究極生物を完成するための絶好の隙になる。共倒れなら万々歳だ。

「そうと決まれば」
エビルマージはゾーマの『洗礼』を受けた一つ目ピエロに視線を向けた。
「お前には重大な欠陥がある故に抹消する。と、ゾーマさまに伝えよ」
「しかと」
次の瞬間、ピエロの体は四散した。塵も残さず、消滅する。
見届けたエビルマージは邪悪な笑みを浮かべて部屋から出て行く。
その間もリュックはただポッドの中をたゆたっていた……


【リュック 所持品:なし
 行動方針:なし】
【現在位置:エビマジの研究室】

※リュックのポッドに制御システムが設置されました。
  • システムを止めると、仮想世界にいるキャラ全員死亡。
  • システムを止めずにポッドを空けると研究室周辺にいるキャラ全員死亡。


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最終更新:2011年07月18日 08:11
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